何から話そうか 前編
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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「これでよし。風明さん、顔が赤いですけどどうかされましたか?」
「な、何でもないです……。あの、ありがとうございました」
顔が見れず顔を伏せながら礼を伝えると「同じ忍でペアを組んだ仲間なんですから気にしないでください」と言う。
仲間なんて必要ないと思っていた音根だが、このとき初めて、音根は仲間の大切さを知った。
「では、私はこれで失礼します。またお会いすることがあったら、その時はよろしくお願いします」
笑みを浮かべ言うと半助は姿を消し、一人残された音根は包帯が巻かれた足へと視線を向け、半助に触れられたことを思い出し再び顔が熱くなる。
高鳴る鼓動は恋だと教え、音根を先生になる道へと進ませた。
半助と同じ先生として忍者のたまごである生徒達を育てる毎日。
恋をして先生となり大切な生徒達の成長を見られるのも、全ては恋をしたから。
今では音根の半助への想いは次第に抑えきれないほどに溢れている。
「山田先生、ありがとうございました」
伝蔵と別れ自室へと向かう音根だが、その顔には先程のような暗い影は差していない。
この恋がたとえ叶わなかったとしても、半助に恋をしたことに後悔はない。
だからといって諦めるつもりなど勿論なく、今自分に出来ることは半助に振り向いてもらえる女になること。
改めて今自分ができる事を再確認したとき、前から歩いてきた五年い組の久々知 兵助に呼び止められ、何故かその手には豆腐の入った器が持たれていた。
その光景に一体何をしているのだろうかと首を傾げると、兵助はニコリと笑みを浮かべ音根の目の前に豆腐の入った器を差し出す。
「へ?」
「これ、今作ったばかりの豆腐なんです。よければ食べてください」
突然の事に戸惑う音根だが受け取らないわけにもいかず、礼を伝え器を手に取る。
兵助は学園でも殆どの人が知っているほどの豆腐好きではあり、こうして自分で豆腐を作ったりもしているのだが、中には迷惑をしている忍たまもいるとか。
豆腐を渡すとその場を去ってしまう兵助。
一体何をしていたんだろうと謎は深まり、音根は手の中にある豆腐を見詰め取り敢えず部屋で食べようと再び歩き出す。
「風明先生」
またも前から歩いてきた人物に声をかけられ足を止めると、五年ろ組の不破 雷蔵の姿があった。
「雷蔵くん? それとも、不破 雷蔵くんに変装している鉢屋 三郎くん?」
「不破 雷蔵ですよ」
三郎は変装の名人であり、音根でさえ見分けがつかないほどの腕前だが、どうやら今日は雷蔵本人のようだ。
「その豆腐、兵助から貰ったんですか」
「うん。そうだけど、なんでわかるの?」
「僕も同じものを貰ったからですよ」
雷蔵の話によると、どうやら兵助は豆腐を作り過ぎてしまったらしく、忍術学園の皆に豆腐を配っているらしい。
さっきの兵助の行動が理解できたところで、音根は雷蔵と別れようやく自室に戻ることができた。
文机に置いた豆腐をどうしようかと考えていると、戸の向こうから声がかけられた。
その声は間違いなく半助のものであり、一体何の用事なのだろうかと思いながら返事をする。
あまり話さないようにしなくてはならないが、仕事のことなら別だ。
「私に用事とは何でしょうか?」
「え、私に用があったのは土井先生なのでは?」
半助はきり丸に「風明先生が探してましたよ」と聞いたらしく部屋を訪れたようだが、音根本人は全く覚えがないことだ。
「きり丸くんの勘違いだと思います。わざわざ来ていただいたのにすみません」
これで半助の用事はなくなったはずなのだが、何故か半助は動く気配がなく、座ったまま何かを考えている。
きり丸には、半助としばらく話さないようにと言われているためこのままというわけにもいかない。
声をかけた方がいいのだろうかと考えていると、半助が真剣な表情を浮かべ音根を真っ直ぐに見る。
自分の姿を映すその瞳に、音根の鼓動は音をたて、部屋の空気が張り詰めていくのがわかる。
「あの、風明先生は、私のことをどう思っていますか?」
「え!?あ、あの、どうとは一体どういう……」
突然の言葉に動揺が隠せない音根は、一体何の質問をされているのかわからず質問を返す。
「私のことを、その……好き、なんでしょうか?」
「えッ!?あ、え!?す、好きって、あの、一体何故そんなことを」
どうやら半助が知りたいのは、音根が半助のことを恋愛として好きなのかということで間違いないようだ。
勿論音根の答えは決まっているが、今まで一緒に出掛けようと誘ったりはしていたものの、想いを伝えたことはないため、返事に困ってしまう。
「すみません。困らせてしまって。私はこれで失礼します」
そんな音根の様子に半助は苦笑いを浮かべ言うと、部屋から出ていこうと立ち上がる。
行ってしまおうとする半助の背を見つめ、音根の手にはぐっと力が込められた。
今を逃したら、もう半助に自分の想いは伝えられない。
そう感じた音根はバッと立ち上がると、背の背に声をかける。
「ッ……好きです!!土井先生と出会ったあの任務の日からずっと、私はあなたが好きです!!」
「私はあなたの傍にいたくて忍術学園に来ました。そして土井さんは、一度しか会ったことのない私を覚えていてくれました」
再会したとき、今度は忍びとしてではなくても、同じ教師という仲間として出会うことができた。
一度ペアを組んだだけだというのに、半助は直ぐに音根に気づき声をかけた。
「あなたは私にこう言ってくれました。また、一緒に組めますねと」
その時のことを思い出し、音根が柔らかな笑みを浮かべると、半助は音根を腕の中に閉じ込めた。
腕には力が込められているが、痛くないようにその力は優しく音根の体を包み込む。
そして今度は音根が半助に尋ねる番だ。
一体何から聞けばいいのか、聞きたいことや話したいことは沢山あるが、この温もりに包まれている間は何も考えられそうにない。
二人の時間はまだまだこの先も続くのだから、先ずはこの温もりが放れたら、半助に尋ねようと心で呟く。
《完》