涙の後の幸せ 前編
名前変更
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【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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最近、音根の目の下には、まるで[[rb:潮江 > しおえ]] [[rb:文次郎 > もんじろう]]のような隈ができていた。
その様子を心配する周りだが、音根はただ苦笑いを浮かべながら、大丈夫大丈夫と言うだけだ。
そしてその数刻後、音根は倒れて医務室に運び込まれていた。
「音根ちゃん、今日は午後の授業は休んで医務室で眠った方がいいよ」
目を覚ました音根に保健委員である[[rb:善法寺 > ぜんぽうじ]] [[rb:伊作 > いさく]]が、周りが散々音根に言ってきたことを口にするが、何時ものことながら、本人は大丈夫大丈夫と立ち上がり医務室を出ようとする。
だが、それで引き留めなかった結果、今日音根は倒れてしまったのだ。
同じことを繰り返さないために、伊作は音根の腕を掴むと、そのまま布団に無理矢理寝かせる。
「大丈夫なわけないでしょ!!今日は絶対に安静にすること、わかった?」
「は、はい」
何時も優しい伊作に初めて強い口調で叱られ、音根は驚きで頷いてしまう。
そんな音根の反応を見た伊作は、ニコリと何時もの優しい笑みを浮かべる。
「僕は午後の授業に行くけど、終わったら直ぐに来るから、それまではここで休んでいてね」
それだけ言い残すと伊作は医務室を出ていってしまい、久しぶりの静かな空間に音根は瞼を閉じる。
それからどれくらい経ったのだろうか。
いつの間にか眠ってしまっていた音根は、ドタバタという足音で目を覚ます。
「小平太、ダメだよ!!音根ちゃんは眠ってるんだから」
「それなら大丈夫だ。恋仲である私が来たのだから、直ぐにいけいけどんどーんで元気になるぞ!!」
「だから、それがいけないんだってば!!」
廊下から聞こえてくる声は、伊作と、七松 小平太だと気づく。
小平太は、最近音根が付き合い始めた恋仲の相手なのだが、どうやら同じクラスである小平太は音根がいないことを心配し医務室を訪ねに来たようだ。
「伊作、何故私と音根の邪魔をする。まさか、伊作は音根を狙って」
「ち、違うよ!そうじゃなくて。小平太が毎日音根ちゃんを連れ回すから、音根ちゃんは疲れて倒れちゃったんだよ」
そう、音根の目の下の隈も、今日倒れた原因も、全ては小平太が原因だった。
人間離れしていると周りから言われており、そんな有り余る体力についていけるものなどこの忍術学園にはいないだろう。
そんな人物に普通の女忍たまである音根がついていけるはずもなく、毎日塹壕掘ざんごうほりやランニングなどさまざまな鍛練に付き合わされている。
ちなみに塹壕掘りとは、戦で歩兵が砲撃や銃撃から身を守るために使う穴または溝であり、簡単に言ってしまうと、野戦の時、敵の攻撃から身を隠す防御施設の溝のことだ。
それを何故小平太は掘っているのかだが、特に何の意味もなく、ただの趣味といったところだ。
こんなことに毎日付き合わされている上に、教室まで一緒となると、ほとんど休まる時間などない。
廊下で言い合う二人を止めなければと思うものの、今までの疲れが溜まっていたのか、体が鉛のように重く動かない。
「そうなのか?私はなんともないが」
「小平太にとっては毎日のことでも、音根ちゃんは女の子なんだから、あまり無理をさせちゃダメだよ」
「そうか、音根は私のせいで……」
遠ざかる足音が聞こえると、医務室の戸が開かれ伊作が現れた。
横になったままだが目を覚ましている音根に、今の聞いてたかなと伊作は苦笑いを浮かべる。
はいと返事をする音根に、余計なこと言っちゃったかなと申し訳なさそうに言う。
「いえ、そんなことないです。心配してくださってありがとうございます」
「よかった。でも、少し言い過ぎちゃったかもしれないな。小平太、何だか考えながら行っちゃったから」
元々こんなことを続けることができないことは音根もわかっていたことであり、何時かは小平太に言わなければいけない言葉だった。
だが、もしそれで嫌われたら、誘ってもらえなくなったらと考えると怖くて言えなかったのは自分だ。
本当なら、自分が言わなければいけない言葉を伊作が代わりに言ってくれたのだ。
音根は伊作に気にしないでくださいと言い、休ませてくれたことへの礼を伝えると自室へと戻る。
「小平太ならいつもの、いけいけどんどーんッ!!で、大丈夫、だよね」
いつも小平太がするように、拳を上に思い切り上げ叫ぶと、小平太なら気にしていないと自分に言い聞かせた。
だがその翌日の朝、何時もなら、早朝ランニングをするぞと言いながら戸が思い切り開かれるのだが、朝食の時間になっても小平太が現れることはなかった。
しばらく待ってみたが来る気配はなく、音根は食堂へと向かう。
「あ!」
食堂には小平太の姿があり、音根は食堂のおばちゃんから朝食を受け取ると、近づいていき声をかけた。
「おはよう」
「ああ、音根か!」
いつも通りの小平太の様子にほっとすると、目の前の席へと座る。
「今日は早朝ランニングはしなかったの?」
「勿論したぞ!」
「え……」
なら何で誘いに来てくれなかったんだろうと思うものの、その言葉が口から出ない。
なかなか箸が進まず、頭の中がモヤモヤしていると、その間に小平太は朝食を済ませてしまい行ってしまおうとする。
「今から塹壕掘り?」
「ああ」
今日は授業がないため、何時もなら小平太はこれから塹壕掘りに出掛ける。
背に声をかけ尋ねれば、やはり今日もこれから向かうらしい。
「待ってて、私も直ぐ食べちゃうから」
「いや、いい。今日は私一人ですることにする」
小平太は食堂から飛び出して行ってしまい、音根は一人端を進める。
何時もなら、返事も聞かずに無理矢理付き合わせるというのに、やはり可笑しい。
朝食を食べ終わると、音根は伊作の部屋へと向かう。
先程から嫌な考えばかりが頭に浮かび、誰かに相談したかったのだ。
昨日迷惑をかけたばかりで申し訳ない気持ちはあるものの、こんな相談ができるのは伊作くらいなものだ。
「伊作」
開けっ広げられていた戸から部屋の中を覗くが、そこに伊作の姿はなく、同室である[[rb:食満 > けま]] [[rb:留三郎 > とめさぶろう]]の姿もない。
「何してるんだ?」
「あ、文次郎くん。うん、伊作にちょっと相談事があって。でも、留守みたいだから部屋に戻ろうかなって」
部屋に戻ろうかと考えていたとき、声をかけられ振り向くと、そこには同じ六年の文次郎の姿があった。
文次郎とは組が違うものの、小平太や伊作、留三郎とよく一緒にいる人物のため面識がないわけではない。
会計委員会の委員長ということもあり、委員会の予算などのことで話すことはあるものの、音根には少し苦手なタイプだ。
何故苦手かというと、音根にとって文次郎は怖いというイメージが強いからだ。