自惚れあなたの言う通り
名前変更
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【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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それは突然のことで、音根は勿論、他の忍たまやくの一、先生達も驚いていた。
何をそんなに驚いているのかだが、それは、食堂で皆が朝食を食べていると、タソガレドキ忍軍の忍び組頭、雑渡 昆奈門が堂々と食堂に入ってきたからだ。
「雑渡 昆奈門さん」
「やぁ、伏木蔵くん」
昆奈門は、保健委員の鶴町 伏木蔵と善法寺 伊作とは面識があり、とくに伏木蔵は昆奈門になついており、昆奈門もそんな伏木蔵を可愛がっている。
今日は一体何の用で現れたのか、食堂内の空気が重くなり、先生達や上級生は警戒をしているようだ。
「雑渡さん、今日はどうされたんですか?」
「うん、今日は用事があってね。その前に言っておくけど、ここの学園長の許可は貰ってるから」
嘘をつくような人物ではないが、忍従学園内の人達は昆奈門のことを詳しくは知らない。
元々、タソガレドキは忍術学園にとって敵対する相手ではあるのだが、ある共通点があることから協力することもある。
その共通点というのが、タソガレドキも忍術学園も、ドクタケを敵対しているということだけだ。
そのため今のこの状況では、昆奈門の言葉が信用できるものかどうかは判断ができず、警戒は解けそうにない。
「そんな話、信用できるはず」
「ワシが許可した!」
一年は組の教科担当である土井 半助が口を開くと、突然現れた学園長が半助の言葉に被せるように言う。
すると、その場にいた昆奈門と音根以外の皆が派手にズッこけてしまい、音根は苦笑いを浮かべ、昆奈門は変わらぬ表情で立っている。
「学園長!!何故そんな許可を!?」
「まぁそう警戒するでない。用事があって来ただけなのだからな」
笑いながら食堂を去る学園長は一体何を考えているのか。
半助は痛む胃を押さえながら座ると、それ以上は何も言わない。
学園長が許可したのなら、他の誰にも何かを言うことはできないからだ。
「それで雑渡さんは、何方にご用があって来られたんですか?」
「私の用というのはね」
皆の視線が昆奈門へと注がれ、一体タソガレドキの忍び組頭がわざわざ忍術学園まで来て誰に用事なのか、皆興味があるようだ。
昆奈門は、いつの間にか肩に乗っていた伏木蔵を下へと下ろすと、歩みを進める。
そしてその足がある人物の前で止まると、周りが少しどよめき出したが、昆奈門が口を開くと再び静まり返る。
「風明 音根さん、君に用があって今日は来たんだ」
「え?」
先程から全く会話に参加していなかったというのに、まさかの自分に用と聞き首を傾げる。
面識はあるものの、わざわざ昆奈門が自分を訪ねに来るほどの理由など思いつかない。
「これを君に渡そうと思ってね」
そう言い音根の目の前に差し出されたのは、この辺りでは見たことのない美しい華一輪だった。
「とても素敵なお花ですけど、本当に私がいただいてもよろしいんですか?」
「勿論。そのために持ってきたんだからね」
音根は昆奈門の手から花を受け取るとお礼を伝え、部屋に飾りますねと笑みを浮かべる。
そんな音根の姿を見た昆奈門の目が一瞬細められ笑ったように見えたのだが、直ぐに背を向けてしまい、用は済んだから失礼するよと言い残し、食堂を出ていってしまった。
「雑渡さん、風明さんに会いに来たんですね。すごいスリルとサスペンスー」
結局、昆奈門の目的はさっぱりわからないまま翌日の朝を迎えると、またも食堂に昆奈門が現れ、今度は音根に小さな木箱を差し出した。
戸惑いながらも受け取ると、中を見るように促され蓋を開ける。
すると中には、如何にも高価そうな簪が入っており、流石にこんな高価な物は受け取れないと断る。
「気にすることはない」
「気にしますよ!こんな高価な物をいただく理由、私にはないんですから」
音根は木箱に蓋をすると、昆奈門にその木箱を返す。
受け取ってもらえないことがわかると、昆奈門は意外にもあっさりと帰ってくれたため、安堵したのも束の間。
部屋に戻ると何故か返したはずの木箱が文机の上に置かれていた。
「返したはずなのに……」
木箱と一緒に、やっぱり君につけてほしいとだけ書かれた手紙が置かれており、音根はどうしたらいいのか困ってしまう。
きっとこの様子では、明日も来るに違いない。
何故昆奈門がこんなことを音根にするのかはわからないが、きっと何かしらの理由があるのだろう。
普段マイペースなように見えるが、昆奈門はプロの忍者。
実力の凄さは音根もわかっている。
そんな人物がわざわざ忍術学園に来て、ただ音根に渡し物をするだけとは思えない。
「でも、折角くれた物をつけないのは失礼だよね」
翌日、音根は昆奈門から貰った簪で髪を飾り、今日も来るであろう人物を待つ。
「風明さん、おはようございます」
朝食を食べていると、同じく朝食を食べにやって来た伏木蔵が音根に挨拶をする。
音根もおはようと挨拶をすると、今日も雑渡さん来るんでしょうかと伏木蔵に尋ねられ、どうだろうねと返事を返す。
「あ!それって、雑渡さんからいただいた簪ですよね?」
「うん。返したはずなのに部屋に置いてあって。つけないのも失礼かなって」
凄く似合ってますよと、頬をほんのり染めながら言う伏木蔵に、音根はありがとうと笑みを浮かべる。
それから伏木蔵と並んで座り朝食を食べていたのだが、結局食べ終わっても昆奈門が現れることはなく長屋へと戻る。
「雑渡さん、どうしたんだろう……」
廊下で一人ポツリと口から溢れてしまった言葉に自分で驚く。
毎日来ると言ったわけでも約束したわけでもないというのに、いつの間にか、昆奈門と会えることを楽しみにしていた自分がいたのだ。
「私、何考えてるんだろう」
自室の前で立ち止まり戸に手をかけ中に入ろうとしたとき、開いた戸から手が伸ばされ、その手は音根の腕を掴むとそのまま中へと引っ張り込む。
音根の体は部屋の中に引っ張られると、直ぐに何かにぶつかる。
「何を考えていたんだい?」
聞き覚えのある声に顔を上げると、瞳に昆奈門が映る。
自分の体は昆奈門の腕の中にあることに気づくと、昆奈門の顔が耳元へと近づけられた。
「何を考えていたの?」
囁くような甘い声音に音根の鼓動は高鳴り、頬はみるみる熱を持つ。
「今日は来られないのかと思っていました」
「それはつまり、私のことを考えていた。そういうことだね?」
返事の代わりに頷くと、音根を抱き締める腕に力が込められ、肩に顔が埋められる。
すると、昆奈門は音根の肩に顔を埋めたまま静かに話し出した。
「迷惑だとわかっていたのに簪を置いていってしまったから、食堂に行こうか迷ってたんだ。でも足は忍術学園に向いていた」
気づけば忍術学園まで来てしまった昆奈門だが、昨日のことがあり、もし嫌われていたらと思うと食堂には行けず、音根の部屋に向かった。
女の部屋に勝手に入るのはよくないとわかっていながらも、音根と会えないのならせめて部屋に今日渡すはずだった物を置いていこうと思い、部屋の中へと入る。
文机に持ってきた花束を置き帰ろうとしたその時、花瓶に一輪飾られていた花が目に留まる。
それは、最初に昆奈門が音根に渡した花であり、昨日簪を置きに来たときにも目についた花だった。