俺が笑えば君は咲く 後編
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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「本気だと思ったけど、私の勘違いだったかな?」
ポツリと呟いた三郎は気づいていない、去っていく勘衛右門の顔が歪んでいることに。
初恋の相手、そんな簡単に諦められるような想いではない。
だが、あんな顔を音根にさせてしまった自分が、音根を好きでい続けていいのかわからなくなっていた。
勘衛右門が部屋に戻ると、同室である兵助の姿がそこにはあり、お帰りと声をかけてくる。
「勘衛右門、音根と出掛けてたんだろ?」
「何で知ってるんだ?」
「昨日、音根が楽しそうに話してたからさ」
その言葉で、伏せていた勘衛右門の顔が上げられ、床を見ていた視線が兵助に向けられた。
音根が自分と出掛けるのを楽しそうに話していたなんてあるはずないのに、確かに兵助はそう言った。
「音根が俺以外と出掛けるなんて初めてだからさ、誰かと思ったら勘衛右門で尚更驚いたよ」
「兵助以外で初めて……?」
「そうなんだ。音根って誘われることはよくあるんだけどさ、全部断ってんだよ」
全く知らなかったことに、少しの期待と不安が募る。
もしその話が本当だとしたら、何故音根は兵助の事ばかりを話していたのか、いくら考えたとしても、答えはでないだろう。
「あ!そういえば豆腐どうだった?」
「豆腐?何のことだ?」
「音根に教えたんだよ、オススメの豆腐屋!そしたら、尾浜くんと食べに行くねって言ってたからさぁ、って、勘衛右門?」
自分は、どれだけ自分のことで頭が一杯だったんだと腹が立つ。
記憶を辿り思い出してみると、音根は最後に寄った豆腐屋で言っていたんだ。
「ここのお豆腐は兵助が凄く美味しいって話しててね、勘衛右門くんと一緒に食べたいなって思ったの!」
音根は最初から、ちゃんと勘衛右門のことを見ていた。
兵助のことを話していたのも、勘衛右門が思い付かなかったように、音根も話題が思い付かなくて兵助のことを話していただけだったんだと気づく。
兵助は音根だけじゃなく勘衛右門にとっても大切な友達であり、二人の共通の友達だ。
勘衛右門は部屋を飛び出すと音根の元に向かった。
もしかしたら、今頃はくの一の長屋に戻っているのかもしれないが、何故かあの場所にいると思い勘衛右門は走った。
豆腐屋で音根が言っていた言葉はまだあったんだ。
「忍術学園に帰ったら一緒に食べよ」
食堂に着くと、そこにはやはり音根の姿があり、豆腐が二丁お皿に乗せられ用意されていた。
あんな事をしたというのに、もしかしたら来なかったかもしれないというのに、音根は待っていてくれたのだ。
「やっぱり、来てくれたんだね」
笑みを浮かべ言う音根に近づいていくと、勘衛右門は音根を腕の中に抱き締めた。
突然のことに驚く音根だが、離れようと思えば離れられるのにそれをしない。
「好きだ。俺は、音根が好きだ。音根に好きな人がいても関係ない。俺はこれから音根を知っていく、だから、音根もこれから俺の事を知って好きになってほしい」
初めて恋をした相手。
少しでも可能性があるのなら、その可能性を諦めたくはない。
好きな人がいたとしても、その相手よりももっと音根が好きになる男になってみせるという気持ちでの初めての告白だった。
だったそのはずなのだが、小さな声で聞こえた言葉は予想外のもので、体を放し音根の顔を覗き込めば、それは事実なのだとわかる。
「ごめん、もう一度聞きたいんだけど」
「え!?う、うん。私も、勘衛右門くんのことが好き。だから私も、これからもっと勘衛右門くんのことを知って好きになりたい」
三郎から音根に気になる人ができたと聞いた時、勘衛右門は兵助だと思っていた。
なのに、今目の前にいる想い人は自分を好きだと言ってくれている。
こんな幸せなことが現実なんて直ぐには信じられず、本当にと尋ねてしまうと、そんな勘衛右門の言葉に音根は、うんと恥ずかしそうに頷く。
「でも、音根には気になる人がいるって聞いたんだけど」
「え!?雷蔵くんったら話しちゃったんだね……。気になる人っていうのが、勘衛右門くんだったんだ」
「一体何時から!?」
二人で話したのは昨日が初めて、名前呼びになったのは今日から。
こんな短い間に自分は何か興味を持たれることをしたのだろうかと不思議に思う。
音根は恥ずかしそうに躊躇っていたが、小さな声が勘衛右門の耳に届く。
「兵助の紹介で出会ったあの日から、お日様みたいに笑う勘衛右門くんのことが気になってて」
そんな前からだったとは思わず、自分は鈍いのだろうかと苦笑いを浮かべてしまう。
勘衛右門がこの気持ちに気づいたのは、食堂で二人、初めて話したあの日だったというのに、それよりも前から音根は勘衛右門に興味を持っていた。
それも、自分の笑顔をお日様のようだと言われ、少し照れてしまう。
「勘衛右門くんは、何時から私のことを?」
「あー……つい最近」
軽い男と思われてしまっただろうかとヒヤヒヤしていると、音根は花が咲いたような笑顔を勘衛右門に向けた。
「嬉しい」
人を好きになるのに、時間なんて関係ないんだと言われたような気がした。
音根は勘衛右門の笑顔をお日様のようだ言う。
それなら、音根の笑顔はお日様である自分が咲かせていきたいと思った。
君という花が隣でずっと咲いていられるように、勘衛右門は音根を照らし続ける。
《完》