得られる者と失う者 前編
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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現在、音根はある場所に向かい走っていた。
全力で走ったため、目的地に着いたときには呼吸が乱れ肩で息をしていた。
「遅いぞ音根!」
「はぁはぁはぁ……こ、これでも、早く走って……ッ、来たんだからね」
インターホンを押して出てきたのは、同じ高校、同じクラスの鉢屋 三郎。
三郎は高校に入ってから知り合った友達なのだが、今では相談事も話せる仲にまでなっていた。
「まぁ、取り敢えず入りなよ」
「はぁはぁ……う、うん。お邪魔します」
呼吸を落ち着かせ部屋に入った音根は正座をするが、何やら顔を伏せており元気がない。
理由はなんとなくわかっているため、三郎は早速音根から話を聞く。
「で、今日はどうしたわけ?雷蔵のことでまた悩んでるんじゃないの」
「うん、それがね。雷蔵が最近他の女の子と話してることが多くて」
話によると、どうやら音根はその光景に妬きもちを妬いているようだ。
不破 雷蔵というのは、二人と同じクラスであり三郎の一番の親友だ。
雷蔵と三郎は小さい頃からの付き合いであり、今音根がいるこの家は雷蔵と三郎が二人で暮らしている家だ。
元々仲がよかった三郎と雷蔵は同じ高校に入学し、学校が近いマンションを二人で借り住むことになった。
そして、その高校で出会った音根と仲良くなり、今では3人で遊んだりすることがほとんどだ。
そんな時、何時からか音根の様子が可笑しいことに気づいた三郎がどうしたのか尋ねると、音根は雷蔵が好きだということ打ち明けた。
その日から、三郎は音根からの相談を聞くようになり、今日も相談したいことがあると言われ家に招いていた。
丁度今日は雷蔵が出掛けているため夕方まで帰ってくることはない。
そんな二人きりの空間で男と女が二人きりだというのに、目の前に座る音根は雷蔵の事で頭を一杯にしている。
「そんなに辛いなら、告白しちゃえば?」
「こ、こここ告白なんてできないよ!!」
「でもさ、彼女になっちゃえば、他の子と仲良くしないで、って我が儘だって聞いてくれるかもよ?」
「それはそうかもしれないけど……」
顔を伏せてしまう音根が何を考えているかなど、三郎にはわかっている。
自分なんて、と思ってフラれるのが怖くて、告白をする勇気がでないことを。
本当は、ここで背中を押してあげるのが、友達としての三郎の役目なのかもしれないが、口から出た言葉は、更に音根を困らせる。
「雷蔵が誰かに取られてもいいんだ?」
「ッ……」
音根の手にぐっと力が込められ、目には涙か滲む。
そんな姿を目にすると、やっぱり三郎は自分の感情を圧し殺すしかなく、音根の頭をポンポンと撫でる。
「そんな顔すんなって。そうならないために、私がいるんだろう」
「三郎……ありがとう」
ありがとうという言葉が、三郎の胸に突き刺さる。
目の前にいる想い人を、本当は誰にも渡したくなくて意地悪をしてしまう。
上手くいかなければいいんだと思ってしまう。
そんな三郎の心情など知るはずもない音根は、笑みを浮かべ礼を言うのだから、ますます胸は痛むばかりだ。
それから時間は経ち、そろそろ雷蔵が帰ってくるであろう時間が近づいてくる。
「なんか、三郎に話聞いてもらったら少しスッキリしたよ」
「そりゃよかった。そろそろ雷蔵が戻ってくるといけないから、音根は帰」
「ただいま~って、あれ?お客さん?」
予定より早く帰ってきてしまった雷蔵は、玄関にある音根の靴に気づいたようだが、まだその靴が音根だとは気づいていないようだ。
雷蔵がリビングに入ると、そこには、三郎と音根の姿がある。
「音根ちゃん、来てたんだね」
「う、うん。お邪魔してます」
頬が熱くなっていることに気づき音根は、顔を伏せてしまう。
そんな音根の心情を知る三郎は、ほんのり染まる音根の頬を見て胸が痛んだ。
「そろそろ暗くなるし、家まで送ってくよ」
三郎は音根の腕を掴むと立ち上がり、そのまま外へと連れ出した。
音根は、助かったよと三郎に感謝したが、三郎は苦笑いを浮かべる。
本当は、音根を雷蔵から遠ざけるためにしたことであり、音根の為ではなく自分の為だったからだ。
「送ってくれてありがとう。それと、相談にも乗ってくれてありがとう。またね」
家の前まで着くと、音根は手を振り中へと入ってしまう。
三郎は踵を返し元来た道を戻っていくが、その表情には影が差していた。
相談に乗ることで、雷蔵より音根と一緒にいられる時間は多くなっているものの、音根の心は雷蔵に向けられたまま三郎に向くことはない。
そして翌日の朝。
日曜日がやって来た訳だが、折角の休みだというのに三郎は、インターホンの音で目を覚ました。
枕元にある時計を見ると、時間はお昼を過ぎている。
何時もなら雷蔵に頼むところだが、日曜日だというのにバイトで、今日も夕方まで帰ってこないだろう。
仕方なく眠い目を擦りながら、相手を確認することなく扉を開ける。