先ずは胃袋から
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サナギ ハル
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私には好きな人がいるのだが、その人は女にも、恋愛にも興味がない人で、そんな相手に好かれるために私がとった行動は料理を作ることだった。
「サンジくん、今日もよろしくお願いします!」
「ああ。レディの為なら喜んで」
何時ものようにお昼になると、私はサンジくんに料理を習う。
まだまだサンジくんみたいに上手くは作れないけど、少しずつ料理も覚えてきて夕食を任されることも増えてきていた。
「よし、今日はルフィが好きな肉料理のレシピを教えるとしようか」
「はい!」
今までもお肉料理は色々教えてもらったけど、サンジくんはまだまだ私の知らないお肉料理を知っている。
私が上達する度にレベルを上げた料理を教えてくれるためとても覚えやすく、最初は全然できなかった料理も今では、簡単なものなら作れるようにまでなった。
「これで完成だ!」
「わぁ~!本当にサンジくんはいろんな料理を知ってるね」
今日もサンジくんに料理を教わり終ると、私は一人夕食の準備に取りかかる。
夕食だけは誰の手も借りず、今までにサンジくんに習った料理を一人で作り、それを皆に食べてもらう。
そして、私の作る料理を食べたルフィの反応が私の楽しみとなっている。
しばらくして夕食が出来上がった頃、鼻のいいルフィやゾロは皆より早くダイニングへとやって来る。
そのあとに他の皆が集まると夕食を食べ始めるのだが、私はルフィの反応が気になり目の前の料理には手もつけず、ルフィへと視線を向けていた。
「うめェッ!!またハル料理上手くなったんじゃねェか」
ルフィはそのあと何回もおかわりをしてくれて、私が作った料理のほとんどはルフィの胃袋の中だ。
夕食を食べ終わった皆がダイニングを出ていったあとは、私とサンジくんで食器洗いをするのだが、私の口はつい緩んでしまう。
「ルフィに褒めてもらえてよかったね」
「うん!サンジくんのお陰だよ、ありがとう」
二人で洗えばあっという間に9人の食器は洗い終わり、サンジくんは明日の朝食の準備、私は女部屋へと戻る。
「綺麗……!」
ダイニングを出て月の明るさに夜空を見上げると、今日は雲一つなく満月が顔を出していた。
たまには夜空を眺めるのもいいかなと甲板から月を眺めていると、頭上から声が聞こえてくる。
「ハルーッ!!」
その声に上を見上げれば、見張り台から顔を出し、手を振っているルフィの姿が見える。
「こっち来てみろよー!」
何だろうと思いながら見張り台へと登ってみると、ルフィは私の腕を掴み自分へと引き寄せた。
ルフィの胸が顔にあたり、頬が熱くなるのを感じていると、見てみろよとルフィは指を指す。
「……!!」
指の先へと視線を向けると、月明かりだけで薄暗かった目の前が、月の明かりや無数の星で眩しいくらいに光輝いていた。
「綺麗だろ!」
「うん!」
こんな風に寄り添いながら星を眺められるなんてロマンチック、なんて考えていたら、ルフィのお腹の音でそんな空気は一気に消え去ってしまう。
「ふふッ……お腹空いたの?」
「ハルの料理美味かったからな、足りなかったみてェだな」
「しょうがないなァ、簡単な物なら作ってあげるよ」
「ほんとか!?」
うんと返事をすれば、飯だ飯だとルフィは嬉しそうにはしゃぎだし、二人下へと降りていく。
ダイニングには丁度誰の姿もなく、私はある食材で簡単な物を作りルフィの前へと差し出す。
「召し上がれ」
「おー!!うまそー!!いっただきまーす!!」
パクリと一口食べれば、ルフィの手は止まることなく全部を平らげてしまう。
「ふー、くったくった!ん……?何か嬉しそうだな」
「ルフィが美味しそうに食べてくれるからだよ」
そう、私がサンジくんに習い料理を作る理由はルフィのこの笑顔を見たいからだ。
ルフィにとって私はただの仲間だとしても、少しでも私はルフィにとって特別な存在となりたい、だからこそ、ルフィと近づくために料理を選んだのだから。
「ししし!おれは、お前の笑った顔を見ると嬉しいけどな!」
「ッ……!」
「んじゃ、おれはそろそろ寝るかな!飯ありがとな」
そう言い行ってしまうルフィはずるいと思った。
ルフィの何気ない一言でも、私はこんなにも胸を高鳴らせてしまうのに、言った本人はそれを何の意味もなく言っているのだから。
「ずるいよ……」
私の言葉にも、ルフィみたいに胸を高鳴らせる魔法がかけられていたらいいのに、なんて思ってしまう。
でも、そんなことできないのはわかってる、だって、こんな気持ちにさせてしまうのは恋なのだから。
そして翌日のお昼頃、私はいつものようにサンジくんに料理を習っていた。
今日教えてもらうのは食後のデザートなのだが、お菓子作りはまだしたことがなく上手くできるか不安になる。
「大丈夫だよ、おれと一緒に作るんだから」
「うん……!」
「じゃあ、初めてだと少し難しいかもしれないけど、カップケーキを作ってみようか!」
サンジくんが言うには、カップケーキの作り方を覚えておくだけでも色々作れるらしく、難易度が上がるが覚えた方のがいいレシピらしい。
早速生地作りを始め、サンジくんの教えてくれる通りに分量を計りながら丁寧に作っていく。
オーブンで焼けば、生地の香りが部屋一杯に広がりだす。
「うん、初めてなのに上手だよ!」
「よかったァ……」
生地が上手く焼けあがり、あとは生地が冷めたら生クリームなどでデコレーションをしていくのだが、生地が冷めるまでには時間がかかるため、その間二人で休憩をとる。
「ハルちゃん、ルフィとは上手くいってるのかい?」
「う~ん……どうなんだろう。でも、今はこのままでも十分幸せかな」
サンジくんの淹れてくれた紅茶を飲みながら話すのはルフィのことだ。
私がルフィを好きなことは、私とサンジくんだけしか知らないことであり、こんな話ができるのもサンジくんしかいない。
「でも、好きな相手を想い続けるのは辛くはないかい?」
「正直辛いかな……。でも、ルフィには少しずつ私を見てもらえたらそれでいいかなって思えるから」
ぎこちない笑みを浮かべながら答えると、サンジくんの手が私の頭へと乗せられた。
「辛いなら、おれの前で無理に笑う必要なんてねェ。ハルちゃんにそんな笑顔は似合わねェからな」
「サンジくん………」
サンジくんは本当に優しくて、私がルフィを好きだって知ったときも協力すると言ってくれたり、今だって私を心配してくれている。
そんな優しさに甘えてしまうことしかできないけど、いつか私もサンジくんの為に何かできたらいいなと思っている。
「何か甘い匂いがするけど食いもんか!?」
突然扉が開かれたかと思うと、甘い香りに釣られて来たのはルフィだった。
「今カップケーキを作ってるんだけど、今日初めて作ったから、もっと練習してからルフィにあげるね!」
「いや、今日作ったのでいいぞ」
「えッ……でも……」
「お前が作ったんだろ?ならおれは食べる!」
また私の胸を高鳴らせることをルフィはさらっと言ってしまい、そんな風に言われたらあげるしかなくなってしまう。
まだデコレーションができていないため、ルフィには椅子に座り待ってもらい、私とサンジくんは冷めた生地に生クリームなどの飾りつけをしていく。
「あれ?何でサンジくんみたいに上手くできないんだろう……」
綺麗に生クリームを絞ることができずにいると、背後から腕が回されサンジくんの手が私の手に重ねられた。
「こうすれば綺麗にできるよ」
「ッ……!」
近い距離に鼓動が高鳴り、触れられている手が震えそうになる。
サンジくんは教えてくれてるのに、緊張で全くサンジくんの言葉が耳に入ってこず、鼓動が大きく音を立てていたその時、突然横から伸ばされた手に掴まれ引っ張られると、気づいたときにはルフィの胸の中にいた。
「何すんだルフィ」
「わかんねェけど何かムカついた」
その言葉にどんな意味があるのかはわからないが、サンジくんが近くにいたときよりも、今こうしてルフィの胸の中にいる方のが私の鼓動は煩くなる。
「ルフィ、そろそろ放してもらってもいいかな?」
このままでいたい気持ちもあるが、カップケーキのデコレーションもまだ途中のため、少し残念ではあるが声をかけると、ルフィは嫌だと一言言うと、私を姫抱きにしダイニングから飛び出した。
「ルフィ!?」
ルフィは見張り台へと手を伸ばすと、私を片手で抱き、そのままゴムを縮めて見張り台へと飛ぶ。
「ここなら安全だ!」
「いや、船の中なら安全だからね!」
「おれが安心できねェんだ。お前が他の奴といると」
それってもしかして妬きもちなんじゃと期待してしまうが、相手はルフィ、そんなことあるわけないと自分に言い聞かせる。
「お前がサンジとくっついてんの見たらなんかイラついたんだよなァ~……」
「あれはくっついてたんじゃなくて生クリームのデコレーションの仕方を教わってただけで」
「でもくっついてただろ」
「そうだけど……」
何だかルフィが怒っているように見えて、その表情が何だか可愛くて口許が緩んでしまう。
少し、自惚れてもいいのかな……。
ルフィが私に妬いてくれてる、そんな風に思ってもいいのだろうか。
「ルフィ、大好き!!」
ほんのり頬を染めながら、ニッと笑みを浮かべながら言うと、ルフィは一瞬驚いた表情をしたあと帽子を深く被った。
帽子で隠れたルフィの顔は見えなかったけど、少しでもルフィが私に感じてくれた新しい感情が嬉しくて、今はこうしてルフィと二人の時間をもう少し過ごしていたい。
少しずつだけど、彼の心の中で何かが変わっていってる、そんな気がする。
いつか私の想いが届く日が来るのかはわからないけど、それでも、彼を好きになってしまったのだから気長に待とう。
《完》