囁く言葉
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
サナギ ハル
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今私はエースさんに連れられ、麦わらの一味の船に乗せてもらっている。
何故こんなことになっているかというと、私が記憶を失ってしまったから。
今から一週間前、エースさんとある街に来ていた私は一人街を見て回っていた。
だがその途中、海賊に絡まれている女の人を見かけた私は助けた。
そのとき、海賊に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけ記憶をなくしてしまったらしい。
この話はエースさんから聞いただけで、私は全く覚えていない。
そんな状況のとき、偶然その街に来ていた麦わらの一味の皆さんと会い、私の様子が可笑しいことに気づいた麦わらの一味の人達にエースさんが事情を説明した。
すると、麦わらの一味のチョッパーさんが、何か思い出すかもしれないから一緒に船で航海をしたらどうかと言ってくれ、船に乗せてもらうことになり今に至る。
「ハルちゃん、記憶の方はどう?」
「ごめんなさい。まだ……」
自分のことなのに、思い出せないことが申し訳ない。
ナミさんが言うには、私は皆と何度か会ったことがあるらしく「一緒にいればなにか思い出すかもしれないから、今は焦らずゆっくりで良いのよ」と言ってくれる。
その言葉が嬉しいのと同じくらい、私には辛かった。
エースさんのことも、麦わらの一味の人達のことも思い出せない。
皆優しい人達なのはわかる。
でも、今の私には初対面の人でしかなくて、皆が仲良く話す姿を見ていると孤独を感じてしまう。
「ナミすわぁん、ハルちゅわぁん、お昼ができましたよ~」
サンジくんの声が聞こえ、私とナミさんはダイニングへと向かう。
皆と食事をしている間もなんだか落ち着かず、私は周りをキョロキョロと見回しエースさんを探していた。
そんな私の様子に気づいたサンジさんに声をかけられ、エースさんの姿が見当たらないことを話す。
「そういや来てねェな。おれが探して来るからハルちゃんは待っててくれるかい」
「あ、なら私が呼んできます」
そう言い立ち上がると、私はダイニングを出る。
何故だかわからないが、早くエースさんに会いたいという気持ちでじっとしていられなかった。
ダイニングを出たはいいが、エースさんが何処にいるのかわからないためどこから探せばいいのか考えていると、海を眺め真剣な顔をしているエースさんの姿があった。
なんだか声をかけにくい雰囲気ではあるが、ゆっくりと近づいていき声をかける。
「お昼ご飯ができたから呼びに来たんですけど、どうかされたんですか?」
「いや、何でもねェんだ。それより飯だろ、食いにいこうぜ」
急かすように私の背中を押してダイニングへと向かうエースさんの様子が可笑しい気がして横顔を見詰めていると、視線が重なりニカッと笑みを向けられた。
その後食事を済ませると、私は女部屋へと案内され、ナミさん、ロビンさんが私との今までの出来事を話し聞かせてくれた。
「で、その時エースったらハルちゃんのこと凄い心配して大変だったんだから」
「ふふ。あの時の彼を見ていると、ハルちゃんが大切にされてるのがわかるわね」
仲間だから大切にしてくれているのだとわかってはいるが、特別な存在になれたら、なんて考えている自分がいる。
もしかしたら、記憶を無くす前の私も同じことを思っていたのかもしれないと思うと、つい口許が緩んでしまう。
「ハルちゃんがエースを大好きなのは記憶を無くした今でも変わらないみたいね」
「そうね、彼のことを話しているときのハルちゃんはいつも楽しそうだもの」
どうやら私は記憶を無くす前からわかりやすい性格だったみたい。
何だか恥ずかしさを感じながら、脳裏に先程のエースさんの顔が浮かび心配になる。
暗くなった私に気付いたナミさんが「どうかした?」と声をかけてくれて、エースさんの元気がない気がしたことを話す。
二人は気付かなかったみたいで、私も一瞬そう見えただけで確信なんてないけど、何か悩みごとがあるなら話だけでも聞きたいと思い、エースさんの元へと向かう。
甲板に出ると思った通り、先程と同じく海を眺めながら真剣な表情を浮かべているエースさんの姿があり声をかけた。
「私じゃお役にたてないかもしれませんが、悩みがあるなら聞かせてください」
「……お前が記憶を無くしたのは、俺のせいだ」
「え? それってどういう――」
言葉の意味がわからず尋ねようとするが、私の言葉が言い終わるより先にエースさんは私の横を通り過ぎて行く。
擦れ違う寸前に「わりィ」と声が聞こえ、今エースさんにあんな顔をさせているのは自分なのだとわかると、胸をギュッと締め付けられるような痛みが私を襲う。
「待ってください!」
私は振り返るとその背に声をかけていた。
エースさんは立ち止まりこちらへと向き直るが、その表情は暗く、私は自分の手にギュッと力を入れると口を開く。
「もし私のせいでエースさんにそんな顔をさせてしまっているなら話してください。私は貴方にそんな顔をしてほしく、ッ!」
その時、激しい頭痛が私を襲い意識を手放してしまった。
頭の中で声が聞こえてくる、その声は私の声で、目の前にはエースさんがいる。
「私はエースが好き」
「お前な、そういう冗談は――」
「冗談じゃないよ」
これは私の記憶。
そう、私が記憶を無くしたあの日の――。
私はあの日、立ち寄った街でエースに自分の想いを伝えた。
だがエースは私の言葉を冗談だと言って聞いてはくれず、気持ちに嘘はないことを伝えると、エースが口にした言葉は私にとって辛い一言だった。
「お前は仲間だ」
「っ……わかった」
「ハルッ!!」
耐えられなくてその場から逃げ出した。
私はエースの仲間でしかなくて、それ以上にはなれない。