次会う日には
名前変更
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【デフォルト名】
サナギ ハル
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ハルは今、麦わらの一味で剣士なんて呼ばれている男、ロロノア・ゾロに勝負を挑んでいた。
というのも、ハルは今まで麦わらの一味が向かった場所を目指していたのだが、着いたときはすでに出航した後だったりでなかなか追い付けずにいた。
だが、ようやく今日、見つけることができたのだ。
「ロロノア・ゾロ!!私と勝負しなさい」
「わりィが、女とやりあうつもりはねェ」
背を向け、再び歩き出してしまうゾロの前にハルは回り込むと、動きを制止する。
「待ちなさいよ。貴方、世界一の剣豪を目指してるんでしょ?」
「だったらなんだ」
「それは無理よ。私が世界一の剣豪になるんだから」
「そうか、じゃあ頑張れよ」
まるでハルなど眼中に無いといったように、ゾロは手をヒラヒラと振り横を通り過ぎていく。
甘く見られたままにはできず刀を抜くと、ハルはその背に斬りかかるが、あっさりとかわされてしまう。
「くッ……!」
「その程度なら刀を抜くまでもねェ」
またも甘く見られた発言に悔しさを感じるが、再び歩みを進めるゾロの背を見つめ、刀を握る手にグッと力を込めると、ハルは刀を鞘へと戻し後を追う。
一回かわされたくらいで、あの男が強いなんて認めたくはない。
「おい、何時までついてくるきだ?」
「勝負してくれるまでよ。それより、さっきから同じところぐるぐる回ってるみたいだけど、何処に向かってるわけ?」
「船だ」
どうやら自分達の乗ってきた船の場所に向かっているらしいが、この街で船を止める場所といえば逆方向にある場所しかない。
「もしかして貴方、方向音痴なの?」
どうやら図星らしく、ハルは溜息を一つ吐くと、ゾロの腕を掴み歩き出す。
「おいッ!」
「船がある場所まで連れてってあげるんだから、大人しくついてきなさいよね」
腕を強引にも引っ張りながら目的の場所まで来ると、そこには麦わらの一味の船があり、ハルはゾロの腕から手を放す。
「おーーい!!ゾロー!!」
その時、大声で叫ぶ男の声が聞こえたかと思うと、突然頭上に影が差し、麦わら帽子を被った男が目の前に降ってきた。
「キャッ!!な、何!?」
船から飛び降りてきたその男は、驚いているハルへと視線を向けると首を傾げる。
「なんだこの女、ゾロの知り合いか?」
「まァ色々あってな」
麦わら帽子を被ったこの男、間違いなくこの船の船長、モンキー・D・ルフィだ。
「ルフィ何してるのよ!ゾロも早く船に乗って」
オレンジ色の髪をした女の人が船の上から呼び掛けると、二人は船に乗ろうとしたため、ハルはそれを引き留める。
「私も船に乗せて!!」
「ああ、いいぞ!」
「即決!?」
まさかの反応に驚いていると、ルフィはゴムとなっている手を伸ばし、先に船の上へと行ってしまった。
あまりにあっさりと同行が許されたため拍子抜けしていると、何ボケッとしてんだとゾロに声をかけられ、船へと乗り込むゾロの後を追う。
こうして麦わらの一味の船に乗せてもらうこととなったわけだが、あくまでハルの目的はゾロとの勝負だということを忘れてはならない。
船が出航し、麦わらの一味の人達と自己紹介をし終えると、いつの間にかゾロの姿がないことに気づき周りをキョロキョロと探す。
すると、離れた場所に寝転がって空を仰いでいるゾロを発見し近付いていく。
顔を覗き込んでみると眠っており、口の端しからはよだれを垂らしている。
そんなゾロの姿を眺めていると、突然誰かに肩を叩かれ振り返る。
するとそこにはルフィの姿があった。
「お前の腰に差してんのって刀だろ!やっぱりゾロの友達ならお前も強いのか?」
「友達なんかじゃないわ。ただ私はゾロと勝負をしたいだけ」
「そうなのか?でも、ゾロは強いぞ~」
ゾロは強い、その言葉でハルは早く勝負をしてみたいという気持ちがより一層強くなっていく。
「そんなに勝負したいなら、次の島についたらゾロと勝負してみろよ。いいだろ、ゾロ?」
ルフィが横へと視線を向け問いかけると、いつの間にか起きていたゾロが欠伸をしている。
「めんどくせェが、このままついてこられるよりましだな」
「よし!じゃあ決まりだな」
こうして次の島で勝負をすることが決まったのはよかったのだが、次の島につくのは明日になるらしく、今日はこの船で寝泊まりをすることになった。
ロビンやナミが一緒の部屋で寝ないかと誘うが、眠る前にいつも刀で素振りをしているハルは勿論今日も素振りは欠かせないため、毛布だけを借りると甲板に出る。
もし一緒の部屋で眠ってしまったら二人を起こしてしまうかもしれないため、ハルは気兼ねなくできる甲板を選んだのだ。
そして今夜もハルは刀を抜き、潮風を浴びながら刀を振るう。
夜の静けさに風を切る音だけが聞こえて心地いい。
「手入れされたいい刀だ」
素振りをしていると、突然声をかけられ手を止めた。
視線を向けると、いつの間にか横にゾロの姿がある。
「剣士として刀は命、手入れなんて当たり前よ」
毅然と答え素振りを再開しようと刀を握り直したそのとき、ゾロの一言で再び動きが止まる。
「なんでお前はおれと勝負をしたがってんだ」
そのゾロの一言で、ハルは夜空を見上げあの日の出来事を思い出す。
あれは、偶然街に来ていた海賊に目をつけられ、捕まってしまった時のことだ。
「放して!」
「それは無理だな」
「お前みたいな綺麗な女は金になるからなァ」
ハルの抵抗などこいつらには何の意味もなく、村の人達も海賊が怖くて見て見ぬふりだ。
どれだけ助けてと叫ぼうが、自分を助けてくれる者などこの街にはいない。
「おらッ!来い」
「嫌ッ、放して!!あんた達なんかのところになんて行くものか」
無意味だとわかっていながらも必死に抵抗していたそのときだった。
ハルの腕を掴んでいた手が放れると、突然男達は地面に倒れていく。
一体何が起こったのかわからず、地面に倒れた海賊へと視線を向けると、海賊達が倒れている前に一人の男が立っているのが見える。
「道の邪魔だ」
そう言い手にした刀を鞘へとしまうと、男は何事もなかったかのようにその場を去ろうとする。
そんな男の背を見つめ、ようやくハルの頭は働きだし、あの一瞬の出来事を理解した。
自分はあの男に助けられたのだと気づき、慌ててその背を追う。
「ま、待ってっ!」
「なんかようか?」
振り返った男にお礼を伝えるが、助けたつもりはねェ、道の邪魔だっただけだとしか言わず、その人は再び歩きだしてしまう。
男の言葉が事実だとしても、自分が助けられた事実は変わらない。
「私はハル、貴方の名前を教えて!!」
離れていく背に声をかけると、男はゾロ、とだけ短く答えその場を去ってしまう。
あの日、助けられた瞬間から、ハルはゾロに恋心を抱いてしまった。
だが、わかるのは名前だけで、その日以降会えることもなく。
勿論のことながら、手がかりは名前しかないまま時だけが過ぎた。
「また麦わらの一味が載ってるぜ」
そんなある日、麦わらの一味という海賊の名を耳にすることが増え、その中にロロノア・ゾロという男がいることを知った。
手配書の中には、あの日、自分を助けてくれた人物、ゾロがいた。
この時のハルは、あの男が海賊だったことに驚いたが、それ以上に、遠い存在のように感じ胸が痛んだ。
だが、それなら自分がゾロと並べるくらいの剣士になればいいのだと思い、その日から、ハルは剣士になるための特訓を始めた。
好きな人に追い付きたい、その気持ちから剣士を目指し今に至る。
ハルがゾロと勝負したいのは、少しでも自分を見てほしいから。
少しでもゾロに近付きたいからだ。
だがゾロは、ハルのことなど覚えていないに違いない。
「覚えてるわけ、ないよね……」
「何か言ったか?」
「何でもないわ」
思い出してもらえなくてもいい、ただハルは、ゾロの隣に立てる存在になりたい。
そのために剣士になったのだから。
そして翌日島に着くと、皆の視線が注がれる中勝負は始まった。
ハルが刀を構えると、ゾロも刀を一刀抜き構える。
ハルはゾロに近づくために、何もわからない刀を一から覚え鍛練をし鍛えてきた。
それも全て今日という日のためだ。
ハルは一度瞼を閉じ深く深呼吸をすると、足を一歩前に出し、刀を振り上げゾロへと向かっていく、が、その一太刀はゾロの刀により簡単に受け止められてしまう。
ぶつかり合う金属音の音が響くと、ハルはそのまま押しきろうとするが、弾かれて体制を崩しそうになるりすぐに体制を立て直すと、再び斬りかかろうとした。
だが、そんな一瞬の隙を見逃すことなくゾロは、ハルの懐へと入り込むと刀を弾き、ハルの喉元へと刀の刃を向けた。
「勝負、あったみてェだな」
「そう、みたいね」
やっぱり自分では、ゾロには近付けないのだと実感し、自然と顔を伏せてしまう。
「変わったな、ハル」
「ッ!?今、私の名前!」
麦わらの一味の皆と自己紹介をしていたとき、ゾロはその場にいなかったためハルの名を知るわけがない。
だとしたら、知っている理由など一つしかない。
「お前は、剣士には向かねェ。だが、お前の頑張り、努力は認めてやらなくもねェ」
口角を上げ、ハルの頭をくしゃっとすると、ゾロは背を向け皆のところへと行ってしまう。
その背を見つめ、ゾロが自分を覚えていてくれたことの嬉しさと、やっぱり自分はゾロに近付くことはできないのだという悲しみを感じていた。
だが、いつか絶対にその背に追い付き近づくのだと、心に強く誓う。
「ゾロ!!私、世界一の剣豪になるからーッ!!」
遠ざかる背に叫ぶと、ゾロは振り向かないまま片手を上げた。
麦わらの一味が見えなくなってしまった後、ハルは涙が溢れてしまう前に手で拭う。
いつか絶対に強くなり、世界一の剣豪になることを胸に誓い、ゾロ達とは逆方向に歩みを進めていく。
その頃、麦わらの一味はお腹を空かせた男達と街の料理店に向かっていた。
「腹すいたァ~」
「船にも食材がないしな。この街で食材を買う必要もあるな」
ルフィはお腹を空かせ、その後ろでは食材を買おうとしているサンジの姿がある。
「ゾロ、そう言えばお前何でさっき刀3本使わなかったんだ?」
「女相手に3本何て必要ねぇ。それに、昔がそうだったからな」
「どういうことだ?」
ゾロの言葉はここにいる誰にもわかるはずもなく、皆首を傾げている。
そう、それはゾロとハルにしかわからないこと。
同じ世界一の剣豪を目指すなら、きっとまたいつか二人が会う日は来るだろう。
その時には、今回のように簡単に負けないくらい強い自分になり、ゾロの隣に並べるようになりたい。
あの日出逢った頃と何も変わらないゾロを見たら、ハルは安心することができた。
次に会う日もきっと、ゾロは変わらないだろう。
そしてその時こそ、自分はゾロに近づけるだろうか。
《完》