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サナギ ハル
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部屋へと戻った私は、先程クロコダイルさんに言われたことを思い出していた。
私が気づいていないだけ、その言葉の意味を考えてみるが答えは出ず、クロコダイルさんはこうも言っていたことを思い出す。
あの時、突然クロコダイルさんは私の顎を掴んで、近づく距離に私は目をぎゅっと閉じたが拒もうとはせず、そんな私にクロコダイルさんは、今の自分がどんな顔をしているかわかるかと聞き、それが答えだと言っていた。
あの時の私は拒まなかった理由を聞かれ、自分でもわからず答えられなかった。
聞き返そうとしたが、時間だ、部屋に戻れと言われ、聞くことができないまま私は自室へと戻ることになってしまい結局答えはわからない。
あの時の私、どんな顔をしていたんだろう……。
近づいた距離に胸が高鳴りだして、息づかいさえもわかってしまいそうな距離にクロコダイルさんがいたのを思い出す。
「ぁ…………」
私の口からは小さな声が漏れた。
横にある鏡に映る自分の顔が、まるで果実のように色づいている。
さっきのことを思い出しただけでこんなにも鼓動は騒ぎだし頬は色づいてしまうのに、現実でおきたのなら、私はどんな表情でクロコダイルさんを見ていたのだろう。
考えただけで恥ずかしくなってしまうが、それがクロコダイルさんが私を好きな理由だと言った意味はまだ理解できていない。
あの時のクロコダイルさんは平然とあんなことができていたのに、私は平然となんてしていられなかった。
「まるで私のがクロコダイルさんを好きみたい……」
ふと思った言葉を口に出してしまうと、私はハッとした。
好きみたいではなく本当にクロコダイルさんを好きだとすれば、こんなにも胸が騒ぎ出す理由にも頷ける。
私は自分の気持ちを確かめるため、そして先程聞くことができなかった質問の答えを聞くために、夜クロコダイルさんの部屋へと訪れた。
まだわからない自分の気持ち、クロコダイルさんと会うことで確かめたいと思ったのだ。
「クハハ、まさか本当におれの元へ来るとはな」
「質問の答えを聞きに来ました。何故クロコダイルさんが私みたいな何処にでもいるような女を好きになったのか」
「いいだろう、話してやる」
そしてクロコダイルさんの口から話された、初めて出会ったあの日のことを。
あの日、おれは鳥野郎の城へと来ていたが、あいつの話にも飽きた頃、部屋を抜け出し城の中を見て回っていた。
通路を歩いていると、キョロキョロと不安げな様子の女の姿があり声をかけると、おれに驚いた女は怯えた表情でおれを見る。
〈こんなところで何してやがる〉
〈……部屋が……わからなくなってしまって〉
どうやら女は迷子になったらしいが、こんな見るからに弱そうな女をあの鳥野郎が置いてることにおれは興味が湧いた。
〈女、お前はあの鳥野郎の仲間か?〉
〈鳥野郎…………あッ!ドフィのことですね!はい、でも、私はまだ最近入ったばかりなので、まだ城の中を把握できていなくて……〉
鳥野郎の名を口にした瞬間、さっきまで怯えていた女は笑みを浮かべてやがる。
おれが鳥野郎と知り合いだとわかって安心したってとこだろう。
〈お前は能力者か?〉
〈いえ、私はドフィや皆みたいな力はなにもないので、普段はお城の自室にいます〉
〈で、そんな女が何故こんな場所でうろついてんだ〉
〈それが……ドフィから今日はお客様が来るときいていたのでお茶でもお運びしようと思ったのですが、キッチンの場所がわからなくなってしまって……〉
使えなさそうな女に見えるが、何故かその瞳から目が逸らせずほおっておくことができねェ。
〈仕方ねェ、お前の部屋は知らねェが、あの野郎のところまでなら連れてってやる〉
〈いいんですか?ありがとうございます!〉
〈ッ……!!〉
おれに向けた女の笑みに、今まで感じたことのねェくれェに胸が騒ぎやがる。
たった女の笑顔一つでこんな感情になるとは思わなかったが、不思議と不快だとは思わなかった。
〈鰐野郎、こんなとこで何してやがる〉
そんなことを思っていると、いつの間にか鳥野郎が現れおれの前に立った。
眉間にシワを寄せているところを見ると、この女はこいつにとって余程の気に入りらしい。
〈城の中を見て回っていただけだ〉
〈なら何故この女と一緒にいた〉
〈私が迷子になってしまって困っているところに、この方が声をかけてくれたんです〉
おれが答えるよりも早く、鳥野郎の背にいた女はおれの前に立ち説明をするが、今の鳥野郎には逆効果のようだ。
大方、女がおれを庇うようにしたことに腹立ったんだろう。
〈そうか、ならもういいな。おれが部屋まで連れていく、鰐野郎は最初の部屋で待っていろ〉
そう言い女の腕を掴んで歩きだす鳥野郎の背に、おれは気づくと声をかけ引き留めていた。
〈まだ何かようか〉
〈ああ、どうやらその女はお前の気に入りみたいだからなァ〉
〈だったらどうした、お前には関係ねェことだ〉
〈クハハ、関係はある。おれもその女を気に入ったからなァ〉
この日から、ハルをかけての奪い合いが始まったわけだが、おれは何故あんなことを言ったのか最初はわからなかった。
日を重ねていく度に見せる女の色んな表情がおれの心を乱し、この感情がなんなのか気づかねェほどおれはそっちの面に疎い方じゃねェ。
気づいたときにはもう好きだった、自分の腕の中に閉じ込めておきたいなんて考えちまう自分もいた。
「答えは簡単だ、お前の全てにおれは惹かれた」
「ッ……!」
ハッキリと言われたその言葉に、私の鼓動は音をたて頬に熱が宿るのを感じる。
真っ直ぐな想いに何て返事を返したらいいのかわからず口を閉ざしてしまうと、クロコダイルさんは私へと近づき先程のように私の顎を掴み上へと向けた。
「今度はやめねェからな、嫌なら拒め」
「嫌……なんて思うわけありません」
もう自分の気持ちがわかってしまう、想いを伝えられ、そしてこんなにも強引なのに、私は貴方を拒もうとは思わない。
「私も、気づいたときにはもう、クロコダイルさんのことが好きでした……!」
二人の唇は重なり合い、微かに葉巻の香りがする。
通じた二人の想いを確かめ合うように、今宵は貴方の甘く苦い口づけを感じていたい。
《完》