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サナギ ハル
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自室へと戻ると、私はドフィに言われた言葉を思い出していた。
自分の気持ちに気づいていないと言ったあの言葉は一体どういう意味だったのかを改めて考えてみるために、ドフィのことを一つずつ思い出していく。
私がファミリーに入った頃、ドフィの瞳はどこか冷たくて、見ているだけで悲しくなってしまう、そんな目をしていた。
そもそも、私がドンキホーテファミリーに入った理由がそれだ。
私はこの国、ドレスローザで生まれ育った。
オモチャと人間が暮らし、平和で笑顔が絶えないそんな場所。
そのはずなのに、家族がいない私はこの国の笑顔が嫌いで、まるで私だけが不幸な気がして辛くなる日々に涙していた。
そんなある日、私はある場所を訪れる。
国の中でも人気があまりなく、人の笑顔を見なくてもすむ私のお気に入りの場所。
いつものように寝そべり空を見上げていると、何かがこっちへと近づいてくるのが見える。
空を飛んでいたため最初は鳥だと思っていたが、こちらへと向かってくると次第にその姿がハッキリと見えてきて、人だということがわかる。
「ピンクの羽……」
ピンクの羽のような物を羽織った男性は城へと消えていき、その数日後に私はその人物がこの国の王だと知ることとなった。
「私だ!! 何故気づかない!?」
「このオモチャ何なのよ」
今日も壊れたオモチャが連れていかれるが、本当にあのオモチャは可笑しくなってしまったのだろうかと思う自分がいた。
だからといってどうにかできるわけもなく、私はただ見ているだけ。
そしてまたいつもの場所へと向かうのだが、最近の私は少し違っていた。
「あの人、また通らないかな……」
私はあの男性がまた空から現れないかとあの日から毎日空を見上げて待っている、何故こんなにあの人が気になるのかはわからない、でも、あの人はこの国の人達とは何かが違う、そんな気がしたのだ。
それから数日後、やっぱり今日も現れないらしくその場を去ろうとしたそのとき、遠くの方からこちらへと来る黒い影が見えてくる。
もしかして……!
近づいてくると、それは確信に代わり、あの男性であるとわかる。
だからといって声をかける訳でもなく、ただ上を通りすぎていくのを見ているだけだ。
一瞬こちらを見た気がしたが、男性は私の頭上を通りすぎ行ってしまう。
〈行ってしまった……〉
やっぱり声をかけた方がよかっただろうかと一人考えてしまうが、ようもないのに声なんて気軽にかけられるわけもない。
〈おれにようでもあったのか?〉
〈ッ……!!〉
顔を伏せていると、誰もいないはずなのに背後から声が聞こえ、バッと振り返ると私は驚きで目を見開いた。
そこには、先程頭上を通り過ぎたはずの男性、王の姿があった。
〈女、前にもここで空を見上げていただろう〉
〈ッ……!気づいていたのですか!?〉
〈フッフッフッ、あれだけ熱い視線を送られればなァ〉
そんなに私は見つめてしまっていたのだろうかと顔から火がでるくらい恥ずかしくなり、頬を色付かせ顔を伏せてしまう。
〈貴方は……この国の人達とは違う気がしたんです。正直、私はこの国が嫌いです、いつも笑顔が絶えないこの国が……まるで私だけが不幸になったように感じさせるこの国が……〉
〈フッフッフッ、おもしれェ。お前は、この世界をブッ壊してェとは思わねェか?〉
〈この世界を壊す……?〉
この世界を壊すことができたら、私が見ている世界は変わるのだろうかという期待が胸を膨らませる。
私も、こんな世界を壊したいとどこかで思っていたのかもしれない。
〈壊したい、私はこの世界を!!〉
これが私とドフィとの出会いであり、私がファミリーに入った理由だ。
これを切っ掛けに裏の世界のことを耳にすることもあったが、ドフィは私に裏の世界のことを教えてはくれなかった。
幹部として迎え入れられ、入った当初はよく城の中で迷子になっていた私は、あの日も迷子になり城の中を歩き回っていた。
自室がどこだったかわからなくなり城の中をあちこち歩き回っていると、少しだけ扉が開いている部屋があることに気づきそっと中を覗いてみると、そこにはいつもかけているサングラスを外しソファに座るドフィの姿がある。
ッ……あれ……?
どこか冷たく暗いその瞳を見ていたら、自然と私の頬には涙が伝う。
何故ドフィの瞳がこんなにも冷たく悲しい目をしているのかはわからない、でも、少しでもその瞳に光を映せたなら、それが私にできたなら、そんなことを考えるようになっていった。
最初の頃のドフィは、私や皆とは何か違う物を見ているような気がして、その瞳は怖くもあり苦しくもあったけど、最近では私をその瞳にしっかり映してくれる。
たまに部屋を覗くと、どこか遠くを見ているようで苦しそうな表情を浮かべてはいるけど、少しずつドフィの中の何かが変わってきているように感じた。
何故だろうか、ドフィのことを考えると私の中でいろんな感情が混ざり合い、私はこんなにもドフィのことを想っていたのだと気付く。
そしてわかった、ドフィの言っていた、自分の気持ちに気づいていないという言葉の意味を。
その夜、私はある部屋の前にいくと扉をノックする。
「入れ」
私が訪れた部屋、それはドフィの部屋だ。
部屋の中へと入ると、ドフィはソファに座り私へと視線を向けていた。
「遅かったじゃねェか」
「まるで私が来ることがわかっていたような口振りですね」
不適な笑みを浮かべるドフィは、私が来るとわかっていたのだろう。
だからこそドフィはあんなことを言ったのだ、私に自分の気持ちを気づかせるために。
「フッフッフッ、ここへ来たんだ、もう自分の気持ちわかってるんだろ」
「はい」
「ならお前の口から聞こうじゃねェか、ハルちゃんの気持ちをよォ」
答えは簡単だ、あれだけドフィのことを考えていた自分がいたんだと気づいた今、この言葉が私の頭に浮かんだのだ。
「私は、ドフィのことが好きです」
自分の気持ちに気づいた私がドフィを目の前にしてハッキリわかった、空を飛ぶ貴方を見たあの日から、私の心は貴方に奪われていたのだと。