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サナギ ハル
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「コイツは今おれと話してんだ。邪魔すんじゃねェ」
「人の城に来といて大きな口叩くんじゃねェ」
私を挟む形で言い合いを始めるクロコダイルさんとドフィ。
睨みあった二人は近くで見るとかなりの迫力だ。
ことの始まりは数週間前。
ドフラミンゴファミリーに入ったばかりだった私は、城で迷子になってしまい、どうしようかと困っていると、城に来ていたクロコダイルさんとバッタリ会い、丁度ドフィのところへ行くところだったクロコダイルさんにドフィの元へと連れて行ってもらえた。
それから何故か気に入られてしまい、今では毎日のようにクロコダイルさんは城を訪れるようになった。
そして現在。
いつものようにクロコダイルさんが城へとやってきたのだが、ドフィな何故か気に入らないらしく、言い合いが始まってしまった。
兎に角喧嘩を止めなくてはと、二人の間に入ると喧嘩は収まり、ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。
突然クロコダイルさんに手を握られ、真っ直ぐに見つめられ目が逸らせなくなる。
「何してやがる」
「コイツは喧嘩をするなと言った。なら、コイツから答えを聞けばいい話だろ」
「手を握ってることは気に食わねェが、鰐野郎の言葉にはおれも同感だ」
私の答えを待つ二人だが、いきなりの質問に答えなんて簡単に出せるはずもなく口を閉ざしていると、明日までに答えを出せなんて期限をつけられてしまった。
私は自室に戻ると一人頭を抱え悩む。
考えたところでドフィはファミリーであり、クロコダイルさんはお友達のような感覚でしかない。
答え次第で、もしこの関係が壊れてしまうのなら、私が出す答えは一つだ。
きっと二人は納得してくれないだろう。
翌日。
私は二人に謝り、昨日出た結論の通り選ぶことはできないことを伝えた。
二人との関係を壊したくないのもあるが、私は二人に対して恋愛感情がなく、どちらかを選ぶなんて最初からできるはずがなかった。
「何で選べねェんだ?」
「鳥野郎なんかと迷う必要はねェ。おれを選べばいい」
「ごめんなさい。二人が私に向けてくれる感情と同じものを、私は二人に思うことができないんです」
ストレート過ぎる発言ではあるが、この二人には直球で伝えなければわかってはもらえないと思った。
だが、これでわかってもらえるだろうかと不安もありつつ二人の言葉を待つと、返ってきた返事は予想もしていないものだった。
「恋愛として見られないなら好きにさせれば問題ない」と無茶なことを言い出すドフィ。
クロコダイルさんまでその話に乗り、いつものように睨み合いが始まってしまう。
私の意見など二人が聞くわけもなく勝手に話は進められ、夜までにどちらを好きか決めなくてはならない。
取り敢えず三人部屋へと戻り、私は自室で先程二人が決めたことを整理する。
先ず今から夜までの時間を2つに分け、ドフィとクロコダイルさん、一人ずつと一緒の時間を過ごす。
そして夜が来たら、好きになった相手の部屋を訪れるのが答えということになるらしいが、恋愛感情がない私にどう選べと言うのか。
どちらかを選ばなければこの件は収まらない。
だからといって好きでもない相手を選ぶこともできず、兎に角今は二人に付き合い夜までに納得する答えを考えるしかない。
そして先ず最初に私が時間を過ごすのはドフィ。
一体どんな方法で惚れさそうとするのか不安を感じながらも、ドフィの部屋を訪れた。
「フッフッフッ、来たか」
その不適な笑い声は聞き慣れているが、今は不安でしかない。
「まァ、隣に座れ」
「はい」
ソファに座るドフィの隣に距離を空け座ると、一体何をするつもりなのだろうかと警戒する。
日は浅いとはいえ、ドフィのことは少しだがわかっているつもりだ。
他の幹部の皆よりはまだわからないことも多いが、私が知るドフィはとても仲間思いであり、それと同時に残忍さや狡猾さ、傲慢さや執念深さを併せ持っている。
そんな悪の塊みたいな人なのに、何故か私はこの人に惹かれた。
根っからの悪い人ではなく、ただ悪いところが目立ち、そう見えてしまうだけであり、本当は誰よりも仲間思いで誰よりも優しい人なんだと思う。
ドフィがすることには全て意味があり、話す言葉一言一言に納得させられてしまう、本当に不思議な人。
「何ニヤついてやがる」
「えっと……何故ドフィは私の事が好きなのでしょうか?」
顔を覗き込まれ慌てて質問をしてしまったが、実際何故ドフィが私を好きなのかは謎。
迷子になった私がクロコダイルさんと最初に会ったあの日からだ、ドフィが私に好きだと言い始めたのは。
クロコダイルさんを探しに来たドフィが私とクロコダイルさんを見るなり、眉間にシワを寄せ私を庇うように前に立った。
「鰐野郎、こんなとこで何してやがる」
「城の中を見て回っていただけだ」
「なら何故この女と一緒にいた」
いつもより少し低い声で話すドフィは何だか怒っているように見えたが、それが何故なのかはわからなかった。
私は、自分が迷子になってしまい困っているところ、この方が声をかけてくれたんですと説明をすると「そうか。あとはおれが部屋まで連れていく。鰐野郎は最初の部屋で待ってろ」と言い、私の腕を掴んだドフィは歩きだすが、呼び止められた声に足を止め振り返る。
「どうやらその女はお前の気に入りみてェだな」
「だったらどうした。お前には関係ねェことだ」
「クハハ、関係はある。おれもその女を気に入ったからなァ」
この件があって以来、ドフィは私に好きだと想いを伝えるようになり、ある日私は何でドフィは私のことが好きなのか尋ねた。
沈黙が続くとドフィの手が私の肩を押し、上体は後ろへと傾き押し倒されてしまう。
数センチしかないドフィとの距離に鼓動が高鳴る。
「フフフッ、顔が真っ赤じゃねェかハルちゃんよォ」
「こんなに近い距離なら誰でも緊張します」
「本当にそれだけか?」
私の反応を楽しむように笑みを向けられ、このままドフィのペースにさせてなるものかと、覆い被さるドフィの胸を両手で押し退けようとする。
体格や身長が大きく違うのだから、こんな抵抗は無意味だが何もしないよりはましだ。
「仕方ねェ。この続きは夜まで取っておくとするか」
スッとドフィが離れ、私は上体を起こすことができたが、その言い方はまるで自分が選ばれると確信しているようだ。
私はドフィにもクロコダイルさんにもそんな感情がないことは伝えたというのに、一体どこからその自信はくるのか。
時間を確認すればそろそろクロコダイルさんとの時間。
このままだと何をされるかわからないため丁度いい。
私は逃げるようにしてドアノブに手をかけると、背後から声をかけられ振り返る。
「今夜待ってるぞ。その時にさっきの質問の答えを教えてやる」
「私がドフィを恋愛として見ていないことは気づいていますよね」
「お前は気づいてねェんじゃねェのか。自分の気持ちによォ」
私はドフィの言葉を無視して部屋を出ると、クロコダイルさんが待つ部屋へと向かう。
その途中の通路で、私はドフィの言葉の意味を考えていた。
私が自分の気持ちに気づいていないと言っていたが、私の気持ちは最初から決まっている。
今夜はどちらの元へも行かず、翌日ハッキリと二人に断るつもりだ。
まだどう断るか決まっていないため、二人が納得できる理由を考えなければならない。
「どこへ行く気だ」
「あ、クロコダイルさん」
そんなことを考えながら歩いていたせいでいつの間にかクロコダイルさんが待つ部屋を通り過ぎてしまっていたようだ。
「部屋から出て待ってたのは正解だったみてェだな」
わざわざ部屋から出て待っていてくれたクロコダイルさんと部屋に入り、向かい合う形で座る。
ドフィのように、隣に当然のごとく座られるのもだが、こうして向かい合う形で座るのも何だか緊張してしまう。
先程から何も喋らず、ただじっとこちらを見詰めるその視線に耐えられなくなり、何か話さなければと言葉を探して思いついたのは、ドフィにしたのと同じ質問だった。
クロコダイルさんは何故私のことを好きなのか。
私はクロコダイルさんに好かれるようなことは何一つしていない。
「それはお前が気づいてねェだけだ」
それと似た言葉を先程ドフィにも言われた。
そんなに私は鈍感なんだろうか。
ドフィもクロコダイルさんも見た目は怖いけど、二人とも女性からはモテているのは知っている。
二人に言い寄る女性は、私なんかより綺麗で可愛い人達ばかりだというのに、二人とも興味がないらしく相手にすらしていない。
だからこそ不思議なのだ。
そんな二人が何故こんな何の役にもたたない私に好きだというのか。
「私には、何故クロコダイルさんやドフィが私を好きだと言ってくださるのか、わかりそうにありません」
「ならわからせてやるさ」
クロコダイルさんは立ち上がるとこちらへと近づいてきて、私の顎を掴み自分へと向けた。
次第に縮まる距離に唇が触れそうになりぎゅっと目を閉じると、顎を掴んでいた手が離れたのでそっと瞼を開く。
「何故拒まなかった」
抵抗しようとさえ思わなかった自分に私自身驚いて言葉が出ない。
あのままだったら私とクロコダイルさんの唇は重なっていた。
なのに瞼を閉じるなんて、まるでそれを受け入れたとしか思えない反応。
「今の自分がどんな顔をしてるかわかるか?」
「え……?」
「それが答えだ」
答えだと言われてもよくわからず聞き返そうとしたが「時間だ、部屋に戻れ」と言われ、聞くことができないまま私は自室へと戻ることになってしまった。
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