黒い鳥
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
サナギ ハル
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翌日、悩んだ結果パンを作って持っていくことにした。
会うのが楽しみで、パンの入った袋を片手に何時もより早めについてしまう。
来るのを待っていようとしたその時頭上に影が射し、顔を上げるとロシナンテの姿があった。
「今日は早かったんだな」
「はい! 会うのが楽しみで」
つい口から本音が出てしまい、恥ずかしさを誤魔化そうと、手にしていた紙袋を差し出すと、ロシナンテは紙袋を受け取り、中のパンを取り出すと食べてくれた。
沢山あったパンは全てロシナンテの胃袋へと次々消えていく。
「何でコラさん、パン食ってんだ?」
パンを食べ終わったと同時に声が聞こえ、視線を向けると小さな男の子が立っている。
コラさんと言うのはロシナンテのことを言っているらしく、男の子は不思議そうにロシナンテへと視線を向けている。
お知り合いですかと尋ねると、ロシナンテは何故か急に話さなくなり、ただ頷いたりと動作で表し始めた。
そんなロシナンテの様子を不思議に思いながら男の子に声をかける。
ハルが自分の名を男の子に教えると、その子はローだと言う。
名前をお互いに教え合うと、ハルはコラさんの恋人なのかと聞かれ、思いもしない質問に頬が熱くなり、チラッとロシナンテを見ると、ローに違うことを伝えている。
「何だ違うのか。なら、何でパン嫌いなのに食ってたんだ?」
「え? ロシナンテさん、パン嫌いだったんですか?」
ロシナンテは躊躇いながらも頷き、自分はロシナンテの嫌いな物を食べさせてしまったのだと慌てて謝罪する。
すると、どこからか取り出した紙とペンで何かを書きだすとその紙をハルに見せる。
紙には、お前が作ったパンは美味かった、とだけ書かれており、その言葉が嬉しくてロシナンテへと視線を向けると、恥ずかしそうに視線を逸らされてしまった。
その後ローが、紙に何書いたんだとロシナンテに聞いていたが、慌ててその紙はしまわれてしまい、書かれている文字は二人だけが知るものとなった。
お前は何でここにいるんだと、ロシナンテが紙に書きローに見せると、どうやらドフラミンゴという人物がロシナンテを呼んでいたらしく、それをローは伝えに来たようだ。
その後、ロシナンテはローとその場を去ってしまったが、いったいドフラミンゴとは何者なのか、そしてあのローという男の子は何者なのか、謎は深まる。
まさかあんな小さな子供が海軍というわけでもないだろう。
そもそも、この街に海軍が何故いるのかすらわからず、ロシナンテについて知らないことはまだ沢山ある。
それからも、毎日決まった時間に路地へ行き、ロシナンテと話す日々を繰り返す。
そして色々なことを知ることができた。
ロシナンテは海賊だということ、そして、理由は教えてもらえなかったが、仲間には自分が話せることを隠していること。
どれも詳しくは教えてもらえず、何か深い理由があるようだ。
きっとそれは電伝虫で話していることと関係があることは見ていてわかる。
ハルが来るといつも通信を切ってしまうため、話している内容まではわからないが、きっとそれは誰にも話すことができないことなのだろう。
そして今日もハルは、ロシナンテに会いに路地へと来ていた。
「ローに話した」
突然言われた言葉。
どうやら自分のことをローに話したようだが、何故か嫌な予感がした。
今まで話さなかったことを何故今話したのか。
まるで、もう会えないような、そんな嫌な予感がしてならない。
声についてもそうだが、あんなに知られないようにしていたというのに話したということは、少なからず何かあったのではないかと思えた。
翌日。
ハルはいつもの場所に向かうが、そこにロシナンテの姿はなく、日が暮れるまで待つが、その日ロシナンテが現れることはなかった。
また明日来ようと立ち上がったとき、近くに紙と羽が置かれていることに気づき手に取る。
一緒に置かれた羽は、ロシナンテが羽織っていた物だと気づき紙を開く。
黙っていなくなってすまねェ、お前に伝えたいことがあってこのメモを残す。
おれは、海軍本部所属の海兵だ。
今までドンキホーテファミリーに潜入していたんだが、色々あってローと海賊団を抜けることになった。
おれが裏切り者だとわかれば、ドフラミンゴは許さないだろう。
最後にお前に伝えたいことがある。
「ハル……お前のことを……ッ……愛していた」
最後という言葉が示すのは、きっともう会うことがないという意味なのだと思うと、足から崩れるように地面に座り込み、しばらくの間泣き続けた。
溢れる涙は枯れること無く頬を伝い、地面を濡らしていく。
このとき気づいた、出会ったあの時から、自分はロシナンテに恋をしていたのだと。
それから少しの時が経ち、ある日こんな話を耳にした。
ドンキホーテファミリーに潜入していた海兵が亡くなったというものだ。
その言葉を聞いた瞬間、それはロシナンテだとすぐにわかったが、一緒にいたはずのローの話は聞かない。
結局何があったのかはわからないが、ローはきっと何処かで生きている、そんな気がしていた。
ロシナンテが何をしようとし、何をしたかったのかはわからないが、きっとロシナンテがローを守ったに違いない。
どんなに優しくて強い人なのか、ハルは少しの間だったが見てきたのだから。
引き出しを開けると、そこにはロシナンテから貰った手紙と羽がしまわれている。
羽を手に取り月にかざす。
闇夜に輝く黒い鳥は、悪魔ではなく、ハルを助けてくれた人だった。
出会ったことを後悔なんてしていない。
ただ伝えたいことがあった。
私も、貴方を愛していたと。
《完》