愛ラブ船長
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
サナギ ハル
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おれは行くが、風邪が治るまでは大人しくしてろ。夕飯はベポにでも持って来させる」
そう言い背を向け行ってしまうローの背に声をかけそうになったが、ハルはぐっと我慢し扉が閉まるまでその背を見詰めていた。
忘れると決めたはずだというのに、忘れようとすればするほど、想いが溢れて苦しくなる。
そんな気持ちを忘れたくて瞼を閉じると、薬のせいか直ぐに意識は沈んでいく。
目が覚めたとき、この想いも全て忘れていられたらどんなに楽だろうか、そんなことを思いながら意識を手放すと、扉が開く音で目を覚ます。
どうやら寝てしまっていたようで、もしかしたらローが来てくれたんじゃないかと扉へと視線を向けるが、そこにいたのは夕食を運んで来てくれたベポの姿だった。
「起こしちまったか?」
「ううん。夕食を運んできてくれたんだよね。ありがとう」
ゆっくり上体を起こすと、ベポが持ってきた器を受け取る。
器に入っていたのはお粥であり、いつぶりだろうかと笑みを浮かべると、キャプテンが作るように言ったんだとベポが言う。
その言葉に驚くハルだったが、ベポが話すには、ローはハルが倒れたと聞いて慌ててこの部屋に来たらしく、あんなに慌てたキャプテン初めてみたぞと言われ、視線をお粥へと戻す。
ローがそんなに心配してくれていたなど知らず、何だか嬉しくて頬が緩む。
だが、それと同時に目頭が熱くなり、気付いたときには頬に涙が伝っていた。
「サナギ?」
「あはは、あれ、可笑しいな……。何で泣いてるんだろう」
嬉しいはずなのに、流れ出す涙は止まらず、誤魔化すようにお粥を口へ運ぶと、温かさが体全体に広がり胸を締め付ける。
込み上げる感情を押さえることなどできるはずなく、やっぱり船長への想いを忘れることなんてできないと、涙を拭いながら口から溢れでた本心。
ローへの想いを忘れようとすればするほど苦しくなり、ハルはベポに抱きついた。
するとベポは、おれはこのまま追いかけ続けても逆効果だって言ったけど、想いを忘れた方がいいなんて思わないぞ、と言う。
顔を上げるハルにベポは、その想いを挫けず伝えてきたのがお前だと笑みを浮かべてくれる。
その言葉で思い出した。
想いが叶わなくても挫けずにいられたのは、いつか絶対に振り向いてもらうと思っていた気持ちがあったからだと。
諦めたら想いはそこで終わってしまう、そう思ったから。
この気持ちを思い出させてくれたベポに礼を伝えると、ベポは笑みを浮かべてくれる。
「サナギとの付き合いはキャプテンよりは短いが、性格は理解してるつもりだからな」
「熊のくせに?」
「すみません」
ベポと笑い合っていると、何故か崎ほどまでの苦しさがどこかへと消えてしまっていた。
溢れる想いを最初から忘れるなんて無理だったのかもしれない。
それに、この想いをここで終わりになんてしたくないと思う自分がまだいるのだから。
今までだって、どんなにローへの想いが叶わなくても、挫けずに何度もアタックし続けてきた。
まだまだローに好きになってもらうのは先になりそうだが、いつかこの想いを受け止めてもらえたら、なんて夢みたいなことを考えてしまう。
でも、夢を夢で終わらせたくないからこそ、想いを毎日伝えてきたのだ。
「ベポ、私絶対にこの恋を叶えて見せるから、それまでずっと見ててね」
「勿論だ」
ベポが部屋から出ていった後、ハルは再び眠りへとつくと、翌日にはすっかり風邪は治ってしまっていた。
「ハルちゃんふっかーつッ!!」
「風邪治ったんだな」
「うん。ベポ、昨日はありがとうね」
そんなことを話していると、食事部屋へと入ってきたローが椅子に座る。
気づいたハルはローの目の前に朝食を並べると、風邪はいいのかとローに声をかけられ、船長の薬のお陰でこの通り元気ですと笑みを浮かべながらピースサインをする。
すると、微かにローの口角が上がった気がした。
だが、直ぐにその表情は険しいものへと変わる。
どうかしましたかと尋ねれば、これは何だと尋ね返されてしまう。
何だと言われても、置かれているのはご飯とお味噌汁と目玉焼きだ。
少な過ぎただろうかと首を傾げ尋ねると、おれが聞きてェのはそういうことじゃねェと何故か更にローの表情は険しくなりハルは気づいた。
ワカメがハートマークになっていたり、目玉焼きがハートマークになってることですかと尋ねると、それ以外に何があると呆れ混じりの溜息を吐き、ローは一気に味噌汁を飲みきり、ハートの目玉焼きを真っ二つに割った。
「あーッ!! もっと味わってくださいよ。それに、目玉焼きをそんな風に真っ二つに割るなんて悪意を感じますよ!?」
そんな二人のことを眺めていた皆は、ようやくいつもの日常が戻ってきたことを嬉しく感じていた。
実は昨日の夜、ハルが眠っていたときにベポとローが様子を見に行ったのだが、ローは眠っているハルの横に立つと、今まで誰も見たこともなほどの穏やかな笑みをハルに向けていたことはベポしか知らない。
「船長~、いつになったら私の愛を受け取ってくれるんですか?」
「安心しろ、そんな日はこねェからな」
「ひどッ!」
船長は相変わらず冷たいけど、私は挫けず明日も明後日もアタックをする。
船長はそんな日は来ないと言うが、いつか想いが通じ合うことを私は信じ夢見ている。
「おい。ハル、ベポ、この後話してェことがあるから来い」
「アイアイキャプテン!」
「愛ラブキャプテン!」
船長ラブな女と獣を引き連れ、ローは食事部屋を出る。
その顔には笑みが浮かび、いつものハルに戻ったことを嬉しく思う人物がまだここにもいた。
《完》