笑顔の海賊団
名前変更
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【デフォルト名】
サナギ ハル
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「食料ありがとな」
そう言いながら笑顔を向けた男は、それだけ伝えると来た道を戻っていってしまう。
どうやら御礼を言いにわざわざ来たようだが、ハルは海賊というものを村に来たアイツらしか知らず、あんな笑顔を向けてくれる海賊もいるのだとこのとき初めて知った。
あの笑顔を思い出すと、胸が音をたてる。
「変な感じ……」
それから翌日の朝、ハルは昨日3人に食料を渡した場所へと来ていた。
なぜだかわからないが、またあの人達に会いたいとどこかで思っていたのかもしれない。
だがきっとすでに、あの海賊達は島を出ていってしまっただろう。
そう思い戻ろうとしたその時、背後から声をかけられ振り返るとそこには、麦わら帽子を被るあの男の姿があった。
「貴方は昨日の……。どうしてここに」
「お前の名前聞いてなかったから聞きに行こうとしてたんだ」
しししと笑う男の笑顔は眩しく、海賊なのに怖さなんて全く感じさせない。
海賊と言っても自分と同じ人に変わりはない。
そして色々な人がいるように、海賊にも色々な人達がいるのだと知った。
今自分の瞳に映る海賊は、前に村に来た海賊とは違う。
ハルは自分の名を教えると、その男にも名を尋ねる。
男は自分のことをルフィだと言った。
どこかで聞いたことのある名だが思い出せず考えていると、突然目の前に手が差し伸べられ首を傾げる。
「ハル、お前、おれ達と来ねェか?」
「え……?」
突然の誘いに驚きが隠せず、どうしたらいいのかわからずあたふたとしていると、ルフィは更に言葉を続けた。
「お前、つまんなそうな顔してるからさ、おれ達と来たらそんな顔する暇なんてなくなるぞ」
つまらなそうな顔と言われ、考えてみたら自分は今まで普通の日々を過ごしている中で楽しみなどなかったかもしれない。
目の前では、ルフィが笑みを向けながら手を差し伸べてくれている。
もしこの手を掴んだら、今までの日常が変わるのかもしれないと思ったとき、ハルはルフィの手を掴んでいた。
こうして今ハルは麦わらの一味の仲間となり一緒にいる訳だが、こんな何の能力もない自分を何故仲間にしたのか、いまだにハルにはわからない。
「どうしたんだ? ボーとしちまって。腹でも減ったのか」
「ううん、ちょっとルフィ達と初めて会った日の事を思い出してたんだ」
「ハルが食いもんくれたときか」
ルフィは食べ物のことしか頭にないらしく、もしかしたら自分が食べ物をあげたから仲間にしてくれたのかもしれない、なんて考えてしまう。
そんなことを考えていると、突然ルフィの手がハルの両頬を摘まみ引っ張る。
「いひゃい、いひゃい(痛い、痛い)!! なにひゅるの~(何するの~)」
「またお前が暗い顔してるからだ」
そう言いながらようやく頬から手が放されると、ハルは痛む頬を撫でる。
「私はルフィと違ってゴムじゃないんだからね!!」
「ああ、知ってる。お前がそんな顔してるから悪いんだ」
「だって……」
仲間になって3日目。
皆を見ていて自分とは別世界の人達なんだと思い始めていた。
皆には夢があり、その夢を叶えようと頑張っている。
だが自分には夢もなければここでできることすら何もない。
ルフィに手を差し伸べられた時、この手を掴んだら何かが変わるような気がして勢いでついてきてしまったが、ただ自分の無力差を思い知らされただけだった。
「何でルフィは、私を仲間にしたの……?」
「お前のそのつまんなそうな顔を笑顔にするためだ」
ハッキリとした口調で思ったことが言えてしまうルフィは羨ましいとさえ思えてしまう。
でも、だからこそ思い知らされる。
自分にはできないことを、ルフィや皆はできてしまうのだと。
「言っただろ、そんな顔する暇なんてねェって」
「無理だよ……。私は、皆と違うんだから」
「何言ってんだお前? 何も違わねェだろ。お前はお前にだからできることをしてる。皆だってそうだ」
自分にしかできないことをしているというルフィの言葉に、ハルは首を傾げる。
皆はそうかもしれないが、自分にはそんなものありはしない。
「私は何もしてないよ」
「お前は皆のために手伝ったりしてるだろ。お前も仲間のために自分の出来ることをしてんだ。何も違うとこなんてねェぞ」
皆と違わないと言うルフィの言葉に、今まで不安だった気持ちが晴れていくのを感じた。
自分も、皆といてもいいんだと言われた気がして口許が緩む。
「しししッ! その顔のがいいぞ」
いつの間にか口が緩んでいたことに気づき、慌てて口許を手で隠すと、ルフィの手がハルの頭へと置かれた。
頬が熱くなるのを感じながら、ルフィに負けないくらいの笑顔を向けると、ルフィはしししとあの時と同じ笑顔を向けてくれる。
だが、あの時と違うことがある。
それは、大切な場所が自分にできたこと、そして、そんな場所で笑いあえる仲間がいることだ。
「ルフィって、やっぱり船長なんだね」
「あたりまえだろ。お前はおれをなんだと思ってたんだよ」
「さぁ、なんだろうね」
しししとルフィの真似をして笑って見せると、ルフィも笑みを返してくれる。
「ハルちゅわ~ん、シェフ特製のスイーツができましたよ~」
「スイーツ!? 食う食う!!」
「これはお前にじゃねェ! 手伝ってくれたハルちゃんにだ!!」
スイーツを狙っているルフィにとられまいと、サンジはスイーツの乗った皿を高く持ち上げる。
その騒がしさを聞きつけ、ナミやロビンが甲板へと顔を出し、その後に続いて他の皆も甲板へと集まり出した。
こんな賑やかで笑顔が絶えない海賊団はきっと、この麦わらの海賊団だけに違いない。
《完》