恋する乙女
名前変更
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雪根 小丸(ゆきね こまる)
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最初に彼を目にしたのは、血飛沫が舞う中で一瞬にして人を斬り捨てる光景。
下で結わえられた髪が宙を舞う。
瞳に映る彼が輝いて見えたなんて、今の現状を前に思うことではないとはわかっているけど、思ってしまったのだから仕方がない。
浅葱色の羽織が靡く姿さえも素敵で、私は彼に釘付けだった。
「君、さっきから僕の声聞こえてないでしょ」
突然の声に視線を向ければ、そこには彼と同じ浅葱色の羽織を纏った男の人。
その奥からもう一人現れて、鋭い視線が私を射抜く。
「これで二回目か……」
その人は、深い溜息を吐いて口にするけど『二回目』とはどういう意味なのか。
それよりも、あの素敵な殿方を見たくて視線を向けようとすれば、突然腕を掴まれ遮られた。
「いきなり何なんですか」
「お前をこのまま帰すわけにはいかねえんでな」
長い髪を上で纏めた男の人がズルズルと私を引っ張っていく背後では、残った二人の声が微かに聞こえる。
その場から連れ出された私に内容を聞き取る事は出来ず、無理矢理連れてこられた部屋で待つように言われた私はムッとしていた。
そこで閃く。
同じ浅葱色の羽織を纏った人が連れてきたということは、先程の殿方にもまた会えるかもしれないということ。
「失礼します」
かけられた声のあとに襖が開かれ、私と年も近そうな女の子が顔を覗かせる。
呼んでくるように頼まれたらしく、ある襖の前に案内された。
向かう途中「皆さん優しい方ですから」と、多分安心させようとしたらしく声をかけてくれたけど、正直今の私はあの殿方に会いたいという気持ちしかない。
それが彼女にはどう見えたのか「私も前に、同じ状況でこの場所へ連れてこられたんです」と話してくれるけど、つまりそれは、彼女もあの殿方が目的でこの場所に来たということ。
何故男装をしているのかわからなかったけど、あの殿方に近づく為にこの場に留まり続けているに違いない。
彼女が襖を開ければ、部屋には複数人の男の人の姿。
その中には、先程引き離されてしまった殿方もいる。
男の人達に囲まれた真ん中に座るよう促したのは、私を建物へ連れてきた人物。
どうやら座っている位置からして位の高い人みたい。
「こいつがさっき話した女だ」
「千鶴ちゃんの時もそうだけど、簡単に見られちゃうなんて土方さんしっかりしてくださいよー」
「何言ってやがる。今回もお前が勝手に動いてこうなってんだろうが!」
二人が言い合いを始める中、私の視線はただ一人に向いている。
それは、視線だけではなく身体ごと。
「何故あんたは俺を見る」
「一目惚れだからです」
この場で一番若そうな男の子が大きな声を上げ、他の人達も「マジかよ」などの声が漏れる。
この場に連れてこられた理由はわからないけど、留まるためにはこうするしかない。
再び身体を前に向けた私は「男装するのでここに置いてください」と頭を下げた。
「は? お前、何言ってやが──」
「見たところ、女の子は私をここに案内してくれた方だけのようですから、私も男装すればおいていただけますよね」
頭を押さえる男の人は深い溜息を吐き、高らかに笑う人は「君、面白すぎだから」と涙まで滲ませている。
この後わかったことだけど、私が連れてこられたのは新選組屯所。
あの夜町に居た三人は、副長の土方 歳三。
一番組組長、沖田 総司。
三番組組長、斎藤 一。
私が見たもの全てを話したら「良かったですね土方さん、見られてなかったみたいですよ」と沖田さんが言っていた。
どうやら新選組の秘密を目にしたと思われていたらしく、見ていないとわかった途端、部屋の空気は一気に軽くなり、自然と私は帰される流れになりかけてた。
そこに待ったをかけたのは私。
このまま帰されたら、次に斎藤さんと会えるかだってわからない。
ここにおいてほしいと、副長の土方さん、局長の近藤さん、総長の山南さんにお願いする。
勿論首を縦には振ってもらえず、土方さんはとくに反対していたが、私は秘密を一つ知っている。
この時は、雪村君が私と同じように斎藤さんに好意を持っていると思っていたけど、実際は新選組の秘密を知ったことでこの場所にいることを後に知る。
そんなこととは知らない私は「男装させた女の子がいることは、秘密じゃないんですか」なんてチラつかせれば、刀に手をかけた土方さんを近藤さんや周りの隊士さん達が止めに入る。
それを止めようともせず一人笑いながら「君、やっぱり面白すぎだから」なんて言ってたけど、恋する乙女は強いんです。
その後の結論は、私も男装して新選組で暮らす事が許可された。
但し、女を隊士として扱うことは出来ないということで、斎藤さんの刀裁きに惚れ込んだ私が住み込みで斎藤さんから刀の指南を受けるというのが屯所内での私の立ち位置。
女だと知られた場合、大人しくここを去ること。
新選組の事情に首を突っ込んだり詮索したりなどすれば、その時は容赦なく切り捨てるという物騒な条件はあるものの、この二つさえ守れば斎藤さんの側にいることが許される。
雪村君は土方さんの小姓ということに表向きはなっているが、幹部隊士でも限られた人にしか与えられない一人部屋を使っていたりと、その待遇に不満を持っている隊士達もいるらしい。
そこで、そんな不満を少しでも和らげる意味もあり、私は雪村君と同じ部屋を使うことが決められた。
本当は斎藤さんと同室が良かったな。
なんて我儘はこれ以上言えない。
何より恋敵ではないとわかった今、彼女を敵視する必要はなく、屯所内で唯一の女同士という事と年齢が近いということもあり、直ぐに打ち解けてお互い名で呼び合うようにまでなった。