瞳に映る二人の私 前編
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雪根 小丸(ゆきね こまる)
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雲一つないお昼時、この日、小丸は新選組屯所を訪れていた。
通された部屋には、新選組局長の近藤 勇、新選組副長の土方 歳三、そして、小丸の姉である雪村 千鶴の姿がある。
「何故姉はここで生活をしているのですか!!」
そして今、新選組局長と副長を前にして、千鶴が新選組にいる理由を小丸は問い質していた。
ことの始まりは、連絡が取れなくなった父を探しに、千鶴が京の町へと向かったことだ。
千鶴は、父さんを連れて戻るからと小丸に言い残し出ていったが、それから日にちは過ぎ、一人残された小丸は千鶴まで帰ってこなくなるのではと思い始め、千鶴が向かった京の町へと出立した。
だが、京の町についたものの、父である雪村 綱道は京の町で仕事をしていること、そして、連絡が取れなくなった父を心配し、京の町へと向かった千鶴がどこにいるのかなどわかるはずもない。
千鶴と同じ様に男装をしているものの、知らない場所にただ一人、心細くて俯きそうになった小丸だが、それよりも、今は二人を探さなければと京を駆け回る。
「すみません、私とそっくりな人を見かけませんでしたか?」
小丸と千鶴は双子の為、誰か見た人がいないかとお店に訪ね回る。
すると、茶屋の人がそっくりな人物を見たと言うので、どこで見たのか尋ねると、何故だか口を噤む。
「どこで見たんですか!?教えてください!!」
茶屋の女は躊躇いながらも、周りに聞こえないようにそっと声にする。
その女から発せられた言葉に、小丸は驚きを隠せなかった。
女が言うには、何度か新選組と千鶴が一緒にいるのを見たことがあると言うのだ。
まさかとは思ったが、真実を確かめなくてはと小丸は新選組屯所へと向かう。
そして、直ぐ近くまで来たところで聞き覚えのある声が中から聞こえ、そっと覗いてみるとそこには、掃き掃除をしている千鶴の姿があり今に至るわけだ。
「姉に聞いても答えてもらえず……。姉がここにいる説明をしてください!!」
何が何だかわからなくなり、小丸の瞳には涙が浮かぶ。
必死に溢れ落ちそうになる涙をぐっと耐えながら説明を求めるが、その場にいた3人とも口を噤んだまま開こうとはしない。
このままでは話にもならないと思った小丸は千鶴の腕を掴むと、帰ろうと言い引っ張るが、千鶴は立ち上がろうとしない。
「お姉ちゃん……?」
「ごめんなさい。今はここにいなければいけないの」
「何で……父様を探すんでしょ!?」
今は連絡が取れなくなった父を探さなければいけないというのに、小丸はますます訳がわからなくなる。
そんな小丸にはなんの説明もなく、千鶴は黙ってしまう。
「っ……黙ってちゃわからないよ!!」
「ごめんなさい。でも、ここにいることで父様を探す手がかりが見つかるかもしれないから」
結局それ以上のことは誰も何も話してはくれず、このまま千鶴を残して一人でなんて帰れないと小丸が言うと、新選組の局長である近藤がしばらくここにいることを許可してくれた。
近藤の横に座る土方は怒っていたようだが、近藤はそんな土方を説得し、小丸は新選組にしばらく滞在することとなった。
納得なんてできるはずがない小丸は、千鶴に案内された部屋で一人頭を悩ませる。
「はぁ……。やっぱり考えてもわからないよ……」
そとの空気でも吸い気分転換をしようと廊下に出ると、小丸は空気を思い切り吸い込む。
「よぉ、千鶴!」
突然声がし視線を向けると、そこには知らない男の姿があり、どうやら千鶴と間違えられたようだ。
「どうかしたのか?」
心配する男に、千鶴ではないことを伝えようとしたのだが、小丸は言葉を呑み込む。
どうせこのままでは誰も真実は教えてくれない為、それなら、このまま千鶴のふりをしていれば、何かわかるかもしれないと考えたのだ。
「何でもないんです、ちょっと空気を吸いたくなってしまって」
小丸は自然に返事を返したつもりなのだが、男は首を傾げた。
「何でそんな言葉で話てんだ?俺達同い年くらいなんだし普通でいいじゃん」
「あ、あぁ!そうだよね、ごめんね」
危うくバレそうになったもののなんとか回避でき、二人で少しの間話したのだが、とくに知りたいことは聞けず夜となった。
小丸は幹部の隊士達と夕餉をとった後部屋へ戻ると、眠りにつく。
翌日の朝、目を覚ました小丸が廊下に出ると、美味しそうな香りがし、その香りに誘われるように歩き出す。
そしてついた先は厨であり、中を覗くと、首に白い布を巻いた人の姿がある。
その人は、昨夜の夕餉の際に居た人物であり、幹部隊士の一人だ。
「斎藤さん、おはようございます」
「ああ、雪村か」
声をかけると、どうやら千鶴と勘違いされたようだが、訂正することなく会話を続ける。
「朝餉の準備ですか?美味しそうですね!」
そんな他愛のない会話を交わし皆で朝餉をすませると、小丸は千鶴や綱道のことを知るため、屯所の中を歩いて回る。
その途中、昨日小丸を千鶴と勘違いした男が小丸に気づき声をかけてきた。
「千鶴、何してんだ?」
この人も、昨夜の夕餉に居た幹部隊士であり、名は藤堂 平助だ。
小丸は昨夜皆と自己紹介を交わし、千鶴が他の隊士と話しているのを見ていたため、千鶴が一人ずつどんな話し方をしているかは記憶済みだ。
「妹が私の後を追ってきて、急に父様のことが不安になっちゃって」
「そうだよな……。大丈夫だって!俺達が絶対に見つけてやるからさ」
「ありがとう、平助くん」
情報を聞き出そうとしたが、どうやら平助の口振りからして、まだ綱道の手がかりは掴めていないようだ。
それから平助が巡回へ行ってしまうと、小丸は再び屯所の中を歩き回る。
「千鶴」
背後から聞こえた声に振り返ると、そこには土方の姿があった。
「土方さん、どうかされましたか?」
尋ねると、土方は小丸に一つのおまんじゅうを差し出した。
首を傾げる小丸に、貰い物だ、俺は食べねぇから食えと言われ、小丸は驚きに目を見開く。
最初の印象は怖い人であり、昨夜の夕餉の時も沖田に怒鳴っているのを目にしていたため無理もない。