最初に口から出た言葉
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
雪根 小丸(ゆきね こまる)
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「まさかお前から誘われるとは思ってなくて驚いたぜ!」
「〝ごめんなさい、迷惑だったよね……。〟」
「いや、違うんだ。実はさ、俺もお前と一緒に食べたいなって思ってて、さ……」
照れながら言われた言葉に、小丸の鼓動が小さく音をたてる。
新選組のことが怖くて仕方なかったはずなのに、何故か怖くないと思えるのは、きっとこの藤堂の笑顔のせいなのだろう。
「そうだ!明日も町に行かねぇか?」
「〝はい!〟」
明日の約束もし、今日という日はあっという間に過ぎ去っていく。
その翌日の御昼刻。
昨夜約束した町へと二人で出掛けていた。
本当は紙を持ってきたかったのだが、紙と筆があっても歩きながら書くのは難しいため、持ってくることができず話す手段はない。
それに、今日は何だか人が多いため、藤堂から離れないように気を付けなければいけない。
「ッ!!」
そんなことを考えながら歩いていると、早速背中にぶつかられ、前にいた藤堂へと倒れてしまった。
「おわっ!?」
そのまま二人で転んでしまい、慌てて藤堂の上から退くが、紙も筆もない状況では謝る手段がなく、深く頭を下げた。
「そんな必死になんなくても、こんなん大丈夫だって。それより、お前は怪我はしてねぇか?」
心配する藤堂に小丸は頷くと、藤堂はいつもの笑みを浮かべながら、ならよかった、と小丸の頭をわしゃわしゃと撫で手を握った。
「また転ぶといけねぇしな」
視線を逸らし照れくさそうに頬を掻きながら言うと、藤堂は歩き出してしまい、小丸は繋がれた手へと視線を落とすと、つい笑みが溢れる。
その後も藤堂と歩き回り、気づけば空は茜色となっていた。
「よし、今日はこれで帰」
言いかけたとき、近くで人が集まり騒いでいるのに気づいた藤堂は、小丸にこの場で待つように言うと、人が集まるところへ飛び込んでいってしまう。
待つように言われたが、人の叫び声も聞こえ、藤堂の事が心配になった小丸はその場所へと向かった。
人混みをを掻き分け前いくと、そこには刀を持った男二人と藤堂が向かい合っている。
今日は任務ではないため藤堂は刀を持っておらず、小丸からは血の気が引いていく。
そんな小丸の姿が藤堂の瞳に映り驚いたその瞬間、男は刀を藤堂目掛け降り下ろした。
小丸に気をとられていた藤堂は気づくのが遅れ、着物には血が滲み出す。
藤堂は、自分に刺さった刀を抜くと、その刀を握り二人の男を切り捨てる。
そしてそのまま藤堂は、バタリと音をたて地面に倒れてしまった。
「ッ……!?」
心配し駆け寄るが、声が出せない自分には呼び掛けることもできず、なんとか声を出そうと、出ない声で叫び続ける。
駆けつけた新選組隊士の人達に藤堂は運ばれていき、その間もずっと小丸は藤堂のそばを離れずにいた。
治療は無事終わったがなかなか目は覚めず、今は藤堂の汗を拭き取ることしかできない。
あの時、自分があの場にいかなければこんなことにならなかったかもしれないと思うと、涙が止まらなくなる。
涙は出るのに声を出しては泣けず、ただ溢れる涙は畳を濡らしていく。
「……なに、泣いてん……だよ……」
声が聞こえ、涙を拭い視線を向けると、小丸へと視線を向ける藤堂の姿が瞳に映った。
「俺は、死なねぇ、から、安心しろって……。まだお前の名、前も、聞いてねぇのにさ」
そう言いながらニカッと笑う藤堂の笑顔を見ていたら安心してしまう。
辛いはずなのに、自分を安心させようとしてくれている藤堂の気持ちが小丸に伝わる。
「……雪根………小丸………」
「ッ!?お、お前、今……声……」
掠れてはいるが、小丸の声がようやく藤堂に届くと、まだ傷も塞がりきっていないというのに、藤堂は小丸の腕を掴み引き寄せ、そのまま腕の中に閉じ込めた。
「ごめんね……藤堂、さん」
「お前は悪くねぇんだから心配すんな」
ゆっくりと体が離され、二人の視線が重なると、引き寄せ合うように唇が重なる。
触れた唇からお互いの想いが流れ込むのを感じ、言葉などなくてもお互いの気持ちがわかってしまう。
舌が絡められ頭がくらくらとしてくると、ゆっくりと体が離され一気に寂しく思いつつも顔を上げると、藤堂は小丸を真っ直ぐに見詰めていた。
「藤堂さん……?」
「平助」
「え……?」
「これからは名前で呼んでくれよな、小丸」
突然名で呼ばれ、鼓動が大きく高鳴るのを感じると、胸の前でぎゅっと手を握り視線を真っ直ぐに向ける。
「わかりました。平助、くん」
お互いに頬を桜色に染めながら笑い合う、こんな幸せな日々がずっと続きますようにと心で願った。
だが、そんなに世の中甘くはない。
「平助ッ!!てめぇこいつを外に連れ出したあげくに怪我したんだってなぁ」
「ゲッ!!土方さん……」
この後藤堂は鬼の形相の土方に怒られたそうな。
《完》