日常の1コマ王子様
■違和感
氷帝学園テニス部の部室にて、レギュラーである忍足 侑士 が何やらキョロキョロと辺りを見ていた。
そこにやって来たのは、同じくレギュラーの向日 岳人 。
「侑士、何してんだよ」
「なんや岳人かいな」
そう言い視線を落としていた顔が向けられると、向日は違和感を感じた。
何処かいつもと違う。
「人の顔ジロジロ見よって失礼なやっちゃな」
「いや、なんつーか。何時もと違うっつーか」
その理由がわからず向日が首を傾げていると、部室の扉が開き宍戸 が部室に入ると同時に、何やら変な音が聞こえる。
忍足は「やってもーた」という表情。
宍戸は自分の足元を見て「ヤベッ」と声を漏らすとそれを拾う。
「侑士ーっ!」
宍戸の持つレンズが割れた眼鏡を指差し叫んだ向日はようやく納得した。
自分が感じた違和感と、何かを探している様子だった侑士の行動に。
その叫びに侑士は「眼鏡は俺ちゃうわ」と静かにツッコんだ。
■手強い相手
屈みながら、部室の中をこっそり覗く人影は、長太郎 。
宍戸 が声をかけると、慌てて人差し指を自身の口に当て「シーッ」という彼の様子に首を傾げる。
口から離れた人差し指が指す部室の中を覗くと、そこには跡部 一人。
「白い薔薇か、赤い薔薇か……。両方もいいが、あの手の小ささじゃ持ちきれねえだろうからな」
独り言をいっているが、白い薔薇、赤い薔薇、持ちきれないということは、誰かへの贈り物だろうか。
いつも自信に満ち足りた跡部にしては、珍しく悩んでいるようだ。
「あの薔薇、マネージャーへの贈り物みたいなんですよ」
その言葉で、宍戸の心臓はドキッと跳ね上がる。
テニス部員全員が想いを寄せているマネージャー。
あれやこれやとアピールするが、脈がない状態のまま今に至る。
ここにきて跡部の薔薇アピールは、氷帝学園女子なら誰もがときめく。
「アカンなあ。これは阻止せえへんと」
いつの間にいたのか、ひょっこり現れた侑士 。
後ろには、他のレギュラー部員までいる。
部活開始時間も忘れ、どうやって阻止するかを部室前で話し合う声は中にまで聞こえているが、話に夢中で気づいていない。
「あいつらも必死みてえじゃねーの。勝つのは俺様だがな」
笑みをこぼす跡部だが、後に皆が目にする光景は「関係のない物は持ち込む禁止ですよ」と、マネージャーに注意される跡部の姿。
真面目な彼女らしい反応に、他のレギュラー陣はホッとすると同時に一筋縄ではいかないことを改めて感じた。
■先手必勝
部活終わり、部室で着替えていると『キス』の話になった。
言い出した主は、侑士 。
キスをしたことがあるかという問いに、部室内は静寂に包まれる。
みんなの脳裏に浮かぶのは、マネージャー。
もしするとしたら、初めては彼女がいいというのが考えだが、叶うとしても一人だけ。
その一人に自分が選ばれるかなんてわかるはずもなく、みんなの表情が険しくなる。
「みんな、考えとることがバレバレやわ」
「クソクソ! 侑士のせいで嫌な考えが浮かんだじゃねーか」
イライラを吐き出す岳斗 の右肩に侑士の手が置かれ「負けるんが怖いならやめときや」といわれ、岳斗だけでなく他のみんなの心にも火をつけた。
テニスも恋も諦めた時点で終わる。
勝負すらしないで負けを認めるなど、ここにいる誰もするはずがない。
「マネージャーの気持ちを手に入れてやる」
「俺もキスしたいCー」
「って、ゆうてるけど、本人の感想をきこか」
みんなが盛り上がる中、侑士の言葉で部室に入ってきたのはマネージャー。
会話全てを聞かれていたことを知ったみんなは声にならない叫びを上げ、顔を真っ赤にしたマネージャーの肩をさり気なく抱き寄せる侑士。
誰も反応すらできないこの状況を作り出したこの男は、間違いなく策士。
《完》
氷帝学園テニス部の部室にて、レギュラーである
そこにやって来たのは、同じくレギュラーの
「侑士、何してんだよ」
「なんや岳人かいな」
そう言い視線を落としていた顔が向けられると、向日は違和感を感じた。
何処かいつもと違う。
「人の顔ジロジロ見よって失礼なやっちゃな」
「いや、なんつーか。何時もと違うっつーか」
その理由がわからず向日が首を傾げていると、部室の扉が開き
忍足は「やってもーた」という表情。
宍戸は自分の足元を見て「ヤベッ」と声を漏らすとそれを拾う。
「侑士ーっ!」
宍戸の持つレンズが割れた眼鏡を指差し叫んだ向日はようやく納得した。
自分が感じた違和感と、何かを探している様子だった侑士の行動に。
その叫びに侑士は「眼鏡は俺ちゃうわ」と静かにツッコんだ。
■手強い相手
屈みながら、部室の中をこっそり覗く人影は、
口から離れた人差し指が指す部室の中を覗くと、そこには
「白い薔薇か、赤い薔薇か……。両方もいいが、あの手の小ささじゃ持ちきれねえだろうからな」
独り言をいっているが、白い薔薇、赤い薔薇、持ちきれないということは、誰かへの贈り物だろうか。
いつも自信に満ち足りた跡部にしては、珍しく悩んでいるようだ。
「あの薔薇、マネージャーへの贈り物みたいなんですよ」
その言葉で、宍戸の心臓はドキッと跳ね上がる。
テニス部員全員が想いを寄せているマネージャー。
あれやこれやとアピールするが、脈がない状態のまま今に至る。
ここにきて跡部の薔薇アピールは、氷帝学園女子なら誰もがときめく。
「アカンなあ。これは阻止せえへんと」
いつの間にいたのか、ひょっこり現れた
後ろには、他のレギュラー部員までいる。
部活開始時間も忘れ、どうやって阻止するかを部室前で話し合う声は中にまで聞こえているが、話に夢中で気づいていない。
「あいつらも必死みてえじゃねーの。勝つのは俺様だがな」
笑みをこぼす跡部だが、後に皆が目にする光景は「関係のない物は持ち込む禁止ですよ」と、マネージャーに注意される跡部の姿。
真面目な彼女らしい反応に、他のレギュラー陣はホッとすると同時に一筋縄ではいかないことを改めて感じた。
■先手必勝
部活終わり、部室で着替えていると『キス』の話になった。
言い出した主は、
キスをしたことがあるかという問いに、部室内は静寂に包まれる。
みんなの脳裏に浮かぶのは、マネージャー。
もしするとしたら、初めては彼女がいいというのが考えだが、叶うとしても一人だけ。
その一人に自分が選ばれるかなんてわかるはずもなく、みんなの表情が険しくなる。
「みんな、考えとることがバレバレやわ」
「クソクソ! 侑士のせいで嫌な考えが浮かんだじゃねーか」
イライラを吐き出す
テニスも恋も諦めた時点で終わる。
勝負すらしないで負けを認めるなど、ここにいる誰もするはずがない。
「マネージャーの気持ちを手に入れてやる」
「俺もキスしたいCー」
「って、ゆうてるけど、本人の感想をきこか」
みんなが盛り上がる中、侑士の言葉で部室に入ってきたのはマネージャー。
会話全てを聞かれていたことを知ったみんなは声にならない叫びを上げ、顔を真っ赤にしたマネージャーの肩をさり気なく抱き寄せる侑士。
誰も反応すらできないこの状況を作り出したこの男は、間違いなく策士。
《完》
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