ヤンデレテイマーとわんこ勇者
「だからー、あいつ出ていったんだって」
俺は思わずフードの奥で、絶句した。
「だってお荷物でしょ?色んな意味で」
「そうそう、空気悪くする天才だし」
「それ告げたら、自分からパーティ抜けるってさ、笑える」
俺は仲間の声も遠くにレオのことを思い浮かべた。黒い艶々の髪、静かで優しい声、それにいつも俺を守ってくれる背中。それがもうここにはなかった。
陰で何言ってくれちゃってんの?なんでレオも黙って出て行ったの?あー、もう、いいや、こんなパーティ、解散だ!
俺は呼び止める仲間だった奴らを無視して、フードを目深に被り、レオの香りを辿ってあとを追いかけた。
「レオ!」
慌てて追いかけたおかげで、森の中を静かに歩くレオを見つけられた。呼びかけるとレオは振り向く。その顔に表情はなかった。
「なんですか?俺はもうパーティ抜けた身ですよ」
「やだ、お前がいないと俺はダメなんだよ!」
「嬉しいお言葉ですけど、戻る気ないんで」
そう言って背を向けるレオの肩を掴む。振り向いて目を開くレオに笑いかけた。
「じゃあ、俺がついて行く!」
「は?」
「パーティ解散してきたから!」
ふん!と鼻を鳴らして、腰に手を当てる。レオは珍しくびっくりしたみたいだった。
「え……あんた勇者だよな?!仲間そんな風に置いてきていいの?」
「元々、俺とお前しかいなかったじゃん!なんで、今更、俺を捨てんの?」
しゅんと眉を下げると、レオは何かを誤魔化すように腕で顔を擦った。
「すて、てはないです。ちょっと色々限界かなと思って」
「なんで?みんなからいじめられたりしてた?そうだよな、出て行ったらって言われたんだもんな。俺が気付かなくて、お前に肩身狭い思いさせてたらごめん!」
俺は頭を下げてレオの言葉を待った。
「いや、そういうわけじゃ、まあ居心地はあんま良くなかったけど、俺の問題だったっていうか」
レオの手を取り俺は思いの丈を告げる。
「レオ、すごい頑張ってくれてた!お前がいなかったらこんな旅意味ないよ……」
レオは目を逸らしたあと、ため息をついてじっと俺の方を見た。それからぼそりと言う。
「じゃあ、俺にテイムされます?」
「?人間ってテイムできるのか?」
「まあ、強く願うならって感じかな」
「される!お前と一緒にいられるならなんでもいい!」
本当にそう思っていたのですぐに頷く。でも、レオはまた深くため息をついた。
「……勇者さんってバカですか」
「なにが?」
俺は首を傾げてレオに尋ねる。何か変なことを言っただろうか?
「従属契約結ぶってことでしょ、本気ですか」
「?お前、テイムした魔物に優しいの知ってるし、実はちょっと魔物たちが羨ましかった。いつもお前の隣で優しい顔して撫でてもらえるの、いいなって思ってたし、何か問題あるのか?」
「っ……まじか」
レオは息を飲んで、信じられないようなものを見たように目を見開く。それから少し赤くなった。どうしたんだろう?俺は少しレオが心配になった。
「レオ?」
「いいですか、契約したら、一生俺のもんですよ、死が二人を別つまで」
「なんか結婚の言葉みたいだな!」
俺は嬉しくなって笑う。俺はレオのことがそういう意味で好きだったからだ。
「はあ、この人分かってんのか分かってないのか……」
「?」
レオは顔を押さえるとしゃがみ込んだ。俺も合わせてしゃがみ込む。しばらくすると目が真っ直ぐに合わさった。
「分かりました、テイムしましょう」
互いに立ち上がる。俺はレオの言葉が嬉しくて元気に頷いた。
「うん!」
レオはそっと俺の手を取って、もう片方の手を額に当てた。あ、なんかあったかい。レオの手から心地よい熱が伝わってくる。
「テイム」
「終わり?」
「終わりです、ほらおいで」
「!……うん!」
手を広げられて、俺は呼ばれるままにその腕の中に身体を預けた。
「このフードももう要らないかな」
「あ……この姿、ちょっと恥ずかしい」
晒された素の姿はちょっと恥ずかしくて、俺は頭を押さえる。
「俺の使い魔でしょ、隠さないで」
「耳付きの獣人が勇者なんておかしいって、いつも笑われてたから」
髪と同じ、白い耳と尻尾が少し丸まる。嫌ではないけれど、ちょっと怖かった。
「そんな奴ら全員蹴散らしてやりますよ」
レオの手が腰に回る。
「ふふ、嬉しい、あっ、そこ撫でたら」
尻尾の付け根付近を撫でられて、俺は思わず声を漏らす。
「撫でて欲しかったんでしょ、ほらここに座って」
レオは俺の手を引いて木の陰に座った。俺は促されるままレオの膝の上に座る。レオは俺の耳や頭や尻尾、腹を順番に優しく撫でた。
「ふっ、あっ、だめ、っ!」
「可愛いですね、勇者さん、いや、ソウ」
「なんか、性格変わった?」
レオを見上げて聞くと、レオは久しぶりに笑顔を見せた。
「元々こうですよ、こうやって二人で過ごすの久しぶりですね」
「うん、お前の手、あったかくてきもちいい」
手に擦り寄ると、レオは勢いよく俺の頭を撫でてきた。
「わぶっ!わあー、わしゃわしゃしないでくれ!」
「ほんと、気が狂いそうだ」
そっと膝に寝かせられて、撫でられ続けていると、心地よくて、段々と眠くなってくる。俺はうとうととしつつ、レオの存在に意識を集中させた。
「寝たんですか?」
「う、ん」
俺はとろりと意識を溶かしつつ返事を返した。
「寝てないじゃないですか、寝ていいですよ」
「でも、魔王倒しに行かなきゃ」
そう、まだ旅の途中だった。ここでずっとこうしてたいけど、それは無理だろうから、少し意識を浮上させる。
「いいですよ、そんなことしなくて、やるなら俺がやります、ソウはただ俺に従えばいい」
俺はその言葉にくすくすと笑う。頼もしいなあと思った。ぽろりと愛しい想いが溢れる。
「レオ、だいすき」
「……俺も好きですよ」
「ほんと?」
「はい」
俺はレオの甘い言葉にがばりと起き上がって迫る。
「じゃあ、キスして、そうしたら寝る!」
「は、あ?!」
「あ、そういう意味じゃなかったのか?」
俺は少し落ち込んだ。やっぱり、友達としてって意味だったのだろうか?
「そういう意味ですけど!」
「レオ」
俺は舞い上がってにこりと笑いかけた。レオは赤くなる。今日は珍しい表情ばかり見ている。
「っ……」
レオは俺にそっとキスをした。俺もキスを返す。
「ありがとう、ずっと、そばに居てくれて」
俺は静かに感謝を告げた。本当に本当に色んなことが嬉しいからだ。
「俺みたいな卑怯者にそんなこというのあんただけですよ」
「ふふっ、ちょっと寝るな」
俺はレオの膝に頭を預けた。何故か色んなことが大丈夫だと思う。これからもずっとレオのそばに居たい。
「はい、おやすみなさい」
レオは優しく俺の頭を撫でた。
可愛い可愛い俺だけの勇者さま。俺はソウの頬にそっと口付けを落として、さっき剥ぎ取ったフードを枕代わりに、自分の上着をシーツの代わりにして、身体をずらして抱き上げ、寝かせた。
さて、近づいてきてるデカい奴を倒すか。おいで、俺のかわいい子たち。俺は敵の気配を察知して、十数体の鍛えられた使い魔を放つ。
俺の異様なテイマーとしての能力に気づいたのは最近だった。この人への想いも膨れ上がっていて弾けた。本当に色々な意味で限界だったのだ、あのパーティにいるのは。でもこの人はあいつらよりも俺を選んだ。暗い優越感のままテイムしてしまったが、多分そんなことこの人は気付いてない。俺はまたソウの頭を撫でて、頬に口付けた。真っ直ぐに好きだと、必要だと言ってくるこの人の優しさが愛しくて少し憎い。俺の想いは暗くて重い。いつかこの人がそれに嫌気が差してももう手放してやれない。魔王を倒すのに、今の使い魔たちで足りなければ、ここら一帯の魔物たちをテイムしてやるさ。それだけの力が今はあった。実は一時的な契約もできる。テイムは絶対ではない、契約を切ることもできる。だけど、この契約だけは切らない切らせない。さあ、殲滅の始まりだ。
軽く動いた耳に触れる。俺だけの、俺だけのものだ。もう勇者じゃない、ただのソウ。ああ、自分も戦うって言い出すんだろうな、使い魔だろって。ほんとうは側におきたいだけで、戦わせたくなんてないけど、きっとそれをこの人は許さない。ならば一緒に戦おう。テイム頼りじゃない、魔法だって使える、俺がこの人を守る。ああ、でも今はまだもう少しここで。俺は戦いに備えながらも、ソウの隣にしゃがみ込んで、安心し切った愛しい寝顔を眺めた。
俺は思わずフードの奥で、絶句した。
「だってお荷物でしょ?色んな意味で」
「そうそう、空気悪くする天才だし」
「それ告げたら、自分からパーティ抜けるってさ、笑える」
俺は仲間の声も遠くにレオのことを思い浮かべた。黒い艶々の髪、静かで優しい声、それにいつも俺を守ってくれる背中。それがもうここにはなかった。
陰で何言ってくれちゃってんの?なんでレオも黙って出て行ったの?あー、もう、いいや、こんなパーティ、解散だ!
俺は呼び止める仲間だった奴らを無視して、フードを目深に被り、レオの香りを辿ってあとを追いかけた。
「レオ!」
慌てて追いかけたおかげで、森の中を静かに歩くレオを見つけられた。呼びかけるとレオは振り向く。その顔に表情はなかった。
「なんですか?俺はもうパーティ抜けた身ですよ」
「やだ、お前がいないと俺はダメなんだよ!」
「嬉しいお言葉ですけど、戻る気ないんで」
そう言って背を向けるレオの肩を掴む。振り向いて目を開くレオに笑いかけた。
「じゃあ、俺がついて行く!」
「は?」
「パーティ解散してきたから!」
ふん!と鼻を鳴らして、腰に手を当てる。レオは珍しくびっくりしたみたいだった。
「え……あんた勇者だよな?!仲間そんな風に置いてきていいの?」
「元々、俺とお前しかいなかったじゃん!なんで、今更、俺を捨てんの?」
しゅんと眉を下げると、レオは何かを誤魔化すように腕で顔を擦った。
「すて、てはないです。ちょっと色々限界かなと思って」
「なんで?みんなからいじめられたりしてた?そうだよな、出て行ったらって言われたんだもんな。俺が気付かなくて、お前に肩身狭い思いさせてたらごめん!」
俺は頭を下げてレオの言葉を待った。
「いや、そういうわけじゃ、まあ居心地はあんま良くなかったけど、俺の問題だったっていうか」
レオの手を取り俺は思いの丈を告げる。
「レオ、すごい頑張ってくれてた!お前がいなかったらこんな旅意味ないよ……」
レオは目を逸らしたあと、ため息をついてじっと俺の方を見た。それからぼそりと言う。
「じゃあ、俺にテイムされます?」
「?人間ってテイムできるのか?」
「まあ、強く願うならって感じかな」
「される!お前と一緒にいられるならなんでもいい!」
本当にそう思っていたのですぐに頷く。でも、レオはまた深くため息をついた。
「……勇者さんってバカですか」
「なにが?」
俺は首を傾げてレオに尋ねる。何か変なことを言っただろうか?
「従属契約結ぶってことでしょ、本気ですか」
「?お前、テイムした魔物に優しいの知ってるし、実はちょっと魔物たちが羨ましかった。いつもお前の隣で優しい顔して撫でてもらえるの、いいなって思ってたし、何か問題あるのか?」
「っ……まじか」
レオは息を飲んで、信じられないようなものを見たように目を見開く。それから少し赤くなった。どうしたんだろう?俺は少しレオが心配になった。
「レオ?」
「いいですか、契約したら、一生俺のもんですよ、死が二人を別つまで」
「なんか結婚の言葉みたいだな!」
俺は嬉しくなって笑う。俺はレオのことがそういう意味で好きだったからだ。
「はあ、この人分かってんのか分かってないのか……」
「?」
レオは顔を押さえるとしゃがみ込んだ。俺も合わせてしゃがみ込む。しばらくすると目が真っ直ぐに合わさった。
「分かりました、テイムしましょう」
互いに立ち上がる。俺はレオの言葉が嬉しくて元気に頷いた。
「うん!」
レオはそっと俺の手を取って、もう片方の手を額に当てた。あ、なんかあったかい。レオの手から心地よい熱が伝わってくる。
「テイム」
「終わり?」
「終わりです、ほらおいで」
「!……うん!」
手を広げられて、俺は呼ばれるままにその腕の中に身体を預けた。
「このフードももう要らないかな」
「あ……この姿、ちょっと恥ずかしい」
晒された素の姿はちょっと恥ずかしくて、俺は頭を押さえる。
「俺の使い魔でしょ、隠さないで」
「耳付きの獣人が勇者なんておかしいって、いつも笑われてたから」
髪と同じ、白い耳と尻尾が少し丸まる。嫌ではないけれど、ちょっと怖かった。
「そんな奴ら全員蹴散らしてやりますよ」
レオの手が腰に回る。
「ふふ、嬉しい、あっ、そこ撫でたら」
尻尾の付け根付近を撫でられて、俺は思わず声を漏らす。
「撫でて欲しかったんでしょ、ほらここに座って」
レオは俺の手を引いて木の陰に座った。俺は促されるままレオの膝の上に座る。レオは俺の耳や頭や尻尾、腹を順番に優しく撫でた。
「ふっ、あっ、だめ、っ!」
「可愛いですね、勇者さん、いや、ソウ」
「なんか、性格変わった?」
レオを見上げて聞くと、レオは久しぶりに笑顔を見せた。
「元々こうですよ、こうやって二人で過ごすの久しぶりですね」
「うん、お前の手、あったかくてきもちいい」
手に擦り寄ると、レオは勢いよく俺の頭を撫でてきた。
「わぶっ!わあー、わしゃわしゃしないでくれ!」
「ほんと、気が狂いそうだ」
そっと膝に寝かせられて、撫でられ続けていると、心地よくて、段々と眠くなってくる。俺はうとうととしつつ、レオの存在に意識を集中させた。
「寝たんですか?」
「う、ん」
俺はとろりと意識を溶かしつつ返事を返した。
「寝てないじゃないですか、寝ていいですよ」
「でも、魔王倒しに行かなきゃ」
そう、まだ旅の途中だった。ここでずっとこうしてたいけど、それは無理だろうから、少し意識を浮上させる。
「いいですよ、そんなことしなくて、やるなら俺がやります、ソウはただ俺に従えばいい」
俺はその言葉にくすくすと笑う。頼もしいなあと思った。ぽろりと愛しい想いが溢れる。
「レオ、だいすき」
「……俺も好きですよ」
「ほんと?」
「はい」
俺はレオの甘い言葉にがばりと起き上がって迫る。
「じゃあ、キスして、そうしたら寝る!」
「は、あ?!」
「あ、そういう意味じゃなかったのか?」
俺は少し落ち込んだ。やっぱり、友達としてって意味だったのだろうか?
「そういう意味ですけど!」
「レオ」
俺は舞い上がってにこりと笑いかけた。レオは赤くなる。今日は珍しい表情ばかり見ている。
「っ……」
レオは俺にそっとキスをした。俺もキスを返す。
「ありがとう、ずっと、そばに居てくれて」
俺は静かに感謝を告げた。本当に本当に色んなことが嬉しいからだ。
「俺みたいな卑怯者にそんなこというのあんただけですよ」
「ふふっ、ちょっと寝るな」
俺はレオの膝に頭を預けた。何故か色んなことが大丈夫だと思う。これからもずっとレオのそばに居たい。
「はい、おやすみなさい」
レオは優しく俺の頭を撫でた。
可愛い可愛い俺だけの勇者さま。俺はソウの頬にそっと口付けを落として、さっき剥ぎ取ったフードを枕代わりに、自分の上着をシーツの代わりにして、身体をずらして抱き上げ、寝かせた。
さて、近づいてきてるデカい奴を倒すか。おいで、俺のかわいい子たち。俺は敵の気配を察知して、十数体の鍛えられた使い魔を放つ。
俺の異様なテイマーとしての能力に気づいたのは最近だった。この人への想いも膨れ上がっていて弾けた。本当に色々な意味で限界だったのだ、あのパーティにいるのは。でもこの人はあいつらよりも俺を選んだ。暗い優越感のままテイムしてしまったが、多分そんなことこの人は気付いてない。俺はまたソウの頭を撫でて、頬に口付けた。真っ直ぐに好きだと、必要だと言ってくるこの人の優しさが愛しくて少し憎い。俺の想いは暗くて重い。いつかこの人がそれに嫌気が差してももう手放してやれない。魔王を倒すのに、今の使い魔たちで足りなければ、ここら一帯の魔物たちをテイムしてやるさ。それだけの力が今はあった。実は一時的な契約もできる。テイムは絶対ではない、契約を切ることもできる。だけど、この契約だけは切らない切らせない。さあ、殲滅の始まりだ。
軽く動いた耳に触れる。俺だけの、俺だけのものだ。もう勇者じゃない、ただのソウ。ああ、自分も戦うって言い出すんだろうな、使い魔だろって。ほんとうは側におきたいだけで、戦わせたくなんてないけど、きっとそれをこの人は許さない。ならば一緒に戦おう。テイム頼りじゃない、魔法だって使える、俺がこの人を守る。ああ、でも今はまだもう少しここで。俺は戦いに備えながらも、ソウの隣にしゃがみ込んで、安心し切った愛しい寝顔を眺めた。
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