聖域を抜けた話
リエルの章
ープロローグー
―五百年前―
麻倉家が僕を殺しに来た
大天狗の受験の極みを受け僕は負けた……だけど、僕だってただ負けたわけじゃない。呪詛返し
呪い返してあげた
遅かれ早かれ奴は死ぬ
僕の邪魔をするからさ
意識が遠のいていくのが分かる。
そんな時、白銀の鎧を着た女が僕の横に跪く
目もかすみよく見えなかったが、女は銀色の仮面をつけていた
こんな砂漠地帯でよく仮面や鎧を付けられるのか疑問があったがもう死ぬだけなのでどうでもよかった
「あなた、大丈夫なの!?すごい出血…」
「僕はもう…死ぬんだ…でも一八万の月が登る頃にまた…」
「十八万の月?」
女は疑問に思った様子だったが彼から手を離し、どこからか小さな竪琴を取り出した
「最後だけでも安らかに…鎮魂歌(レクイエム)を…」
この女はきっと心が清らかなのだろう。こんな死に損ないに音楽を奏でるのだから。こんな僕を心配してくれている
聖闘士…?っという単語が頭の中をよぎった
なんだそれは。彼女は聖闘士として僕を助けようとしたのか
だが自分の死期くらいわかる。
……
男の息が無くなった
「安らかに眠って…」
人間とは儚く脆い。少し前に似たような服を着た集団がいた
部族の人間だと思うが、下手に動かすと厄介だ
部族というのはそういうもの。
ならっと女は当たり一体を冷やす
これで彼らが来るまでは持つはず
「さよなら…来世で会えたらいいわね」
聖衣のマントをとり、彼にかけた
ギリシャ 聖域
十二宮をのぼり教皇の間に入る。
「琴座、ライラのリエルただいま帰還した」
ゴゴゴっと扉が開き中へとはいる
「やぁ、セージ。私にあの程度の任務を押し付けるなんてよっぽど聖域は人手が足りないようだな」
「すみません。リエル様…あれから数年、まだ黄金聖闘士やほかの聖闘士たちも足りません。」
聖戦が終わってまだ数年
今代のアテナもあの戦いの後消えた。
否、帰ってこなかった
そしてそれから数年がたったという話だ
「分かってる。冗談だ。しかし、あの程度ならハクレイでも良かっただろう?あいつの事だからどうせ応じなかったんだろうが…」
「お恥ずかしい限りで…」
「まぁいい…教皇直々の頼みだったから聞いたまで。私をこきつかえるんだからさぞ気分がいいでしょう?」
「まさか、リエル様もクレスト様もこの聖域とって、なくてはならない存在。あなた方の力が今の聖域には必要不可欠なのです」
「あぁ分かってる。クレストと私以外、まともに戦えそうなのが、キャンサーのあなたとジャミールから出てこないハクレイくらいか…。他の黄金聖闘士はもう育成くらいしか出来ないからな。」
「すみません…前の聖戦でかなりダメージをおってしまい小宇宙を燃やせなくなっているのです」
「なに…暇なら私が見てやるだけだよ。だが私は優しくないよ?崖から落とされても文句は言わせない。私のことを最強と言うのなら最強なりのもてなしをするだけさ」
さてっと、懐から紙を出す
「これが先方から貰ったものだが…ラゴウとかいう凶星の調査だったか…落ちた形跡も、見たものも少なかった…ただおかしな言い伝えはあった」
「おかしな?」
「あぁ…ラゴウとは五百年に一度の神の復活のための儀式の前に見える星…。クレストを呼んでくれ。宝瓶宮の書斎と…スターヒールから私の行った大陸と精霊、神その他もろもろの資料を宝瓶宮まで送ってくれ。」
「あ、あのリエル様…?!」
リエルはそう言うと出ていってしまう
スターヒールは私しか入れませんからね……
「リエル…何用だ?セージから連絡があったが」
「ラゴウとかいう凶星のことだよ」
「ラゴウか…聞いたことは無いな」
「私が行ってきた大陸の精霊や神関連の本が読みたい。嫌な予感しかしないんだ」
そこから精霊王を決める儀式ということがわかった
私の目の前で息を引き取った男と似た民族衣装を着た男が描かれている
「パッチ族…ね。」
「五百年単位なら次は西暦で言うと二〇〇〇年ってところか」
「私たちが生きているかは不明だな」
「確かに…もう我は二五〇年たってるからな」
「確かに…先代のアテナより私よ心臓は一年間に十万回しか鳴らない…二五〇年生きたとして二五〇日しか経ってない…これから五百年たったとしても五百日しか経たないということさ。」
それから数年たった
聖域内の人が寄り付かない墓地
ポロンポロンと琴の音が響く
星は流れ生きて生き 星は流れ死んでいく
あぁまたみんな死んじゃった
私はなんで生きてるの?
あれから何十年経った?
あの前聖戦が終わってようやく50年ほど
次の子の育成をしなきゃならないのは知ってる
でも、育成したところでと思うところはいつもある。
「リエル様ここにおられましたか」
「何…セージ……なんの用?…それにしても、老けたわね」
「老けますよ。私はリエル様とは異なり時間の流れは人と同じです」
「そうね……私は仮死状態だから見た目が変わることはないわ……」
「任務のお願いです」
「任務ね……邪神の討伐?」
「凶星が光っておりましたので」
「あぁ私も気にはなってはいたわ……まるで……全てを燃やすような……」
「えぇ……見たことの無いような輝き方」
恨みの籠った星の光の輝き方
「まぁいいわどうせ暇だし……方角は……数年前に行った大陸……ね……ちょっと前にコロンブスとかいう若造が見つけたけど、捕まったとかいう……」
「その大陸です。我々は聖闘士ですからこの手の話は関わることはありませんが……」
「奴隷商人だったらしいから……まぁ……我々は神と神に準ずるものとしか基本戦わないが、所詮人は悪よ」
「私にはまだその境地は分かりかねます……」
「人を愛するのは人間だが人を殺すのも人間だよ……ちまたでは、性病が流行ってるらしい……うちの馬鹿な男たちに簡単に任務で遊んでくるなとちゃんと忠告しておきなさい……街に行く旅に中途半端な知識を持って帰って来るんだから」
「はい」
そう言うとリエルはその場から消えるようにどこかへ消えた
……
さてと……アナザーディメンションにて空間を歪ませ異次元空間の中へとはいる
そして前行ったことのある場所に降り立つ
どの変だったかしら
そもそも私、方向感覚が疎いから任務は不向きなのよね……夜に動いた方が私には向いてるし
危ないって言われるけど……そんなもの知らないわ
タッと土を蹴る音が静かに響く
凶星と言ってもハーデスとの聖戦も一区切りは着いている
ポセイドン軍だって光り方が全く違うのだから…
だからなぜ光っているのか
それを解明しなければ……次に繋がらない
日はとても高く蒸し暑い
あの先は砂丘……長丁場になるか
聖衣は異次元空間に投げたから背負わなくていいが……白いマントを顔まで覆うように砂丘の中へと入っていく
とりあえず……力が強いところに行くしかないか
どれほど歩いただろうか
だが一つだけわかったことがある
凶星の星の光と同じ力をここらで感じる
どこだ?
辺りを見渡し、岩の割れ目を見つける
人が通れるほどの割れ目である
「……とりあえずあそこに行くか…休憩も兼ねて」
岩の方へ行くとさらに力が強くなっていた
あぁここか……
「ライラ!」
リエルは琴座の聖衣を呼び寄せ、異空間より、琴座の聖衣が現れた
それを装着した。
「よし……とりあえず調査はしないとな」
中に入ると不思議と薄っすら明るかった
それもそのはず、入った瞬間、立て付けの木に火が点ったのだった
なんの術だ?人工的に作られたものだということはわかるが……
奥に進むと固く閉じられた大きな岩が縄で縛られ置いてあった
何かを封じるかのように
五芒星………双子神か?いや……違う
双子神の力は全く感じられない
それに謎の文字
ここら辺の国のものじゃない
東洋……中国とかそこらの文字……だと思うが……
岩に触れるとはじかれた
何を守っているのか封じているのか
足元を確認してみると焦げたような後がある
炎……この燃え方は人知を超えるもの
小宇宙は感じられない
小宇宙を燃やさず人知を超えるもの……
精霊か…?
精霊がここまでの力を出せるのか
『クレスト…聞こえるか』
『なんだ』
『宝瓶宮にいるな』
『あぁ…いる』
『それなら、火の精霊について調べてくれ』
『火の?お前は今、凶星を調べてるはずでは?』
『調べている……だが、この凶星は本当に凶星なのか……それを調べるために必要なことだから』
『あぁ……』
小宇宙通信にて、クレストは宝瓶宮の書庫から本を探す
火の精霊
『燃え方が人など簡単に骨の髄……もしかしたら魂まで燃やすような燃え方だ』
『…まるで悪魔だな』
『そう言うな…まだよくわかってないのだから』
パラパラと本をめくりながらクレストは関係がありそうな情報を探す
『………リエル聞こえるか』
『あぁ聞こえている』
『これはどうだ?数年前に調べたラゴウとかいう流れ星…それは新たな神を決める知らせ……。この本には 全ての魂の根源である精霊。グレートスピリッツが内包する五大元素のうち火の属性が具現化した存在……その名もスピリットオブファイア…… 見る限り、全ての炎の源のような存在だ。そのほかに土…水…風…雷の精霊もいるようだ』
精霊は凶星になるわけはないのに……
『どうだ?』
『そうね……多分そのスピリットオブファイアなんでしょう……』
辺りを見渡していると落ちていた布を拾い上げる
燃え尽きた服の布……
『どうした?』
『本当に人が燃やされたのかもな……服の布が落ちてはいるが人の骨すら残っていない……』
ははっとリエルの笑う声が聞こえた
『まるで全てを恨むかのような燃やし方……誰も信じないって感じの……精霊の単体でできるような力ではない……悲しい力ね……たしかに力が強いわ。でも……今現在の双子神のように……本体がいるわけじゃない……もしかしたら死んでるかも……そうだとしてもなかなか力が強い……ここは誰も立ち入らないようにするしかないし、これが神の力でないのであれば我々ができることは何もないわ』
『神の力ではなかったのだな』
『えぇそれ確かよ…何年神と戦ってきてると?さすがにそれくらいは分かるわ。精霊なら我々の出る幕ではない……帰るわ』
このスピリットオブファイアを知ることになるのはあと500年先の話……
………
「帰ったわ」
「おかえりなさいませリエル様」
教皇の玉座に座っているセージに髪をなびかせ見据えるようにリエルは立っていた
「えぇ……。結論から言うとあれは、人工的に作られたもの…。それも中国かそれより先の国の文字ね……ここらでは見ない文字だった。だけど、神の力は一切感じられなかった。恨みのような悲しみだけは描かれていた文字からは読み取れた……それと、精霊が関係しているようには思えたけど……それ以上は……分からなかったわ。それに、人があれを作って誰かを恨み殺したいとか……なにかの目的のために人を殺したたとして我らの出る幕ではないよ………人は争いを辞めないのだから」
「ですが……人というのは尊いものです」
「そうかしら……人は愚かよ……イティアの考えが分かるもの」
そう静かに言うリエルにそうですかと静かにセージは答える
それもそのはず、壊滅的な未来から未来を変えるために来たというアリエスのアヴニールがリエルを見た時に怯えたような表情をしていた
リエルが居ない時に教えてもらった未来
リエルはアヴニールの時代まで生きのび
そして、人に絶望した挙句、ハーデス軍に下り
アテナ軍を敗北させた首謀者
しかし、アヴニールがこの時代に来たということで未来は変わったはず
アヴニールが黄金聖闘士になる未来はもしかしたら無いかもしれない
「人が愚かよ。でも、私はイティアのように真面目じゃないし、基本的にどうでもいいから……イティアのようにならなかっただけよ……報告は以上よ……戻るわ」
教皇の間を後にし、階段を下っていく
双魚宮を抜け宝瓶宮に着いた
「帰ったわ」
「あぁ……なにか飲むか」
「紅茶をいただくわ……」
ふぅっと息を吐きながらクレストから紅茶の入ったカップを貰う
「イティアが逝って……残るは我らと……彼らのみ……海皇が動き出しそうな余韻を感じると言うのに……戦力が格段に足りないわ」
「あぁ……近いうちに私がブルーグラードに行く……そこで監視しておく……」
「あぁさすがにこれ以上の戦力を聖域の外に出しすぎるのは良くないからな」
生き残ったのは我らふたりと教皇になったセージと兄のハクレイ……あとは最近拾ってきた候補生の子たちとようやく聖衣を手に入れた若い子たち
戦力はさけない
今は、私たちのどちらかが聖域にいることでバランスを取っている
「……冥王との戦いが終わってまだ聖域も完全に復活しきっていないのにそろそろ海皇が目覚めることになるとはね……」
「……仕方がない…神の数百年は一瞬だ……我らにとってどれほど長い時間だろうと神にとったら昼寝をしていたレベルなんだ」
「わかっている……わかっているよ」
「リエル…お前の気持ちも分かる……イティアが反乱を起こした時我らは気づけなかった……」
「真面目で……余計なことは余り喋らないからね。さらに気づかないわよ…でも、確かに人は争いを辞めない…真面目すぎてそれに嫌気がさしてしまったのね」
「神にとったら我々は塵芥に過ぎない」
「そうね……第八感……エイトセンシズに目覚めてれば話は違うのかもしれないけれど、目覚めてしまえばこちら側には帰っては来れないわね」
「確かに……。我々の代でバルゴの聖闘士1人だけだったからな……。」
第八感に目覚めるものは高次元的感覚
神と人の狭間のような感覚を持つことになる故に……凡人には理解出来ぬ境地である
「私は思うのだ。クレスト……私はなんのために聖域で戦っているのか。私の居場所は本当にここなのかと。」
「違ったら違ったでそれはそれでいいのではないのか?元々は私が聖域にひきいれた…何も持たぬお前に名も聖衣も渡した……それが違うというのなら捨てても構わない」
「まぁ……でも今は嫌ではないのよ……。今はまだね」
この頃からだっただろうか
リエルの祈る時間が格段に増え何に祈っているのか聞いても教えてくれなかった
ただこれだけは教えてくれた
『まだ見ぬ神への祈り』
アテナかと思えたがそうでは無いらしい
そして数年もしないうちにリエルもまた第八感に目覚めることとなる
……
1990年 某日
「クレスト……私はアテナの聖闘士じゃないかもしれない……私は、育てた子達を戦場に送り出して死んでくのをあとどれ位見たらいいんだ?」
クレストの墓の前で静かに座り込むリエル
「アテナの考えが分からない……」
『貴方たちにはまだ命が残っている』
確かにアテナはそう言った
小宇宙をこれ以上燃やせば、その少年たちに待ち受けるのは死
もう分からない
慈悲?慈愛?そんなことを考えていた先達たちの考えが分からない
あれは鬼畜の性よ
命を燃やせば勝てると言いたいのか
「クレスト……やはり私は……聖域は狭すぎたのかもしれない……私を導いてくれる誰かに合えば何かが変わるのかもしれない」
「リエル…」
「なんでしょう…アテナ。この死に損ないになんのようです?」
「なぜいつも辛そうにしているのです?」
「おかしなことを聞きますね。みんな私を置いて…私は…また置いてかれた。また…それに!アテナ……あなたは平然とまた転生を繰り返すのでしょう?我々を残して生きろというのでしょう……それがどれだけ地獄なのか知らないのに!神様は自分のことしか考えていない……人間を本当に救いたいのなら中途半端な介入はやめて欲しい……」
「リエル……」
パチッと視界が歪む
「アテナ…?!」
何をするのです
私が…何…を……したというの?
「少し…落ち着くまで…」
そう最後に聞こえると意識を失った
「瞬、いますか?」
「え?リエル様?!」
「リエルはこれからギリシャの中で別の人として生きてもらいましょう…彼女にはもう、聖闘士は酷なのかも知れません。」
「でもアテナ…沙織さん…リエル様の意見を聞かずに…」
「もし、彼女が記憶を戻したら…何を言われようとも構いませんよ。瞬…どういう人生を全うしようとも……最強の聖闘士は今ここで死にました。これからは…ギリシャの巫女です」
END
ープロローグー
―五百年前―
麻倉家が僕を殺しに来た
大天狗の受験の極みを受け僕は負けた……だけど、僕だってただ負けたわけじゃない。呪詛返し
呪い返してあげた
遅かれ早かれ奴は死ぬ
僕の邪魔をするからさ
意識が遠のいていくのが分かる。
そんな時、白銀の鎧を着た女が僕の横に跪く
目もかすみよく見えなかったが、女は銀色の仮面をつけていた
こんな砂漠地帯でよく仮面や鎧を付けられるのか疑問があったがもう死ぬだけなのでどうでもよかった
「あなた、大丈夫なの!?すごい出血…」
「僕はもう…死ぬんだ…でも一八万の月が登る頃にまた…」
「十八万の月?」
女は疑問に思った様子だったが彼から手を離し、どこからか小さな竪琴を取り出した
「最後だけでも安らかに…鎮魂歌(レクイエム)を…」
この女はきっと心が清らかなのだろう。こんな死に損ないに音楽を奏でるのだから。こんな僕を心配してくれている
聖闘士…?っという単語が頭の中をよぎった
なんだそれは。彼女は聖闘士として僕を助けようとしたのか
だが自分の死期くらいわかる。
……
男の息が無くなった
「安らかに眠って…」
人間とは儚く脆い。少し前に似たような服を着た集団がいた
部族の人間だと思うが、下手に動かすと厄介だ
部族というのはそういうもの。
ならっと女は当たり一体を冷やす
これで彼らが来るまでは持つはず
「さよなら…来世で会えたらいいわね」
聖衣のマントをとり、彼にかけた
ギリシャ 聖域
十二宮をのぼり教皇の間に入る。
「琴座、ライラのリエルただいま帰還した」
ゴゴゴっと扉が開き中へとはいる
「やぁ、セージ。私にあの程度の任務を押し付けるなんてよっぽど聖域は人手が足りないようだな」
「すみません。リエル様…あれから数年、まだ黄金聖闘士やほかの聖闘士たちも足りません。」
聖戦が終わってまだ数年
今代のアテナもあの戦いの後消えた。
否、帰ってこなかった
そしてそれから数年がたったという話だ
「分かってる。冗談だ。しかし、あの程度ならハクレイでも良かっただろう?あいつの事だからどうせ応じなかったんだろうが…」
「お恥ずかしい限りで…」
「まぁいい…教皇直々の頼みだったから聞いたまで。私をこきつかえるんだからさぞ気分がいいでしょう?」
「まさか、リエル様もクレスト様もこの聖域とって、なくてはならない存在。あなた方の力が今の聖域には必要不可欠なのです」
「あぁ分かってる。クレストと私以外、まともに戦えそうなのが、キャンサーのあなたとジャミールから出てこないハクレイくらいか…。他の黄金聖闘士はもう育成くらいしか出来ないからな。」
「すみません…前の聖戦でかなりダメージをおってしまい小宇宙を燃やせなくなっているのです」
「なに…暇なら私が見てやるだけだよ。だが私は優しくないよ?崖から落とされても文句は言わせない。私のことを最強と言うのなら最強なりのもてなしをするだけさ」
さてっと、懐から紙を出す
「これが先方から貰ったものだが…ラゴウとかいう凶星の調査だったか…落ちた形跡も、見たものも少なかった…ただおかしな言い伝えはあった」
「おかしな?」
「あぁ…ラゴウとは五百年に一度の神の復活のための儀式の前に見える星…。クレストを呼んでくれ。宝瓶宮の書斎と…スターヒールから私の行った大陸と精霊、神その他もろもろの資料を宝瓶宮まで送ってくれ。」
「あ、あのリエル様…?!」
リエルはそう言うと出ていってしまう
スターヒールは私しか入れませんからね……
「リエル…何用だ?セージから連絡があったが」
「ラゴウとかいう凶星のことだよ」
「ラゴウか…聞いたことは無いな」
「私が行ってきた大陸の精霊や神関連の本が読みたい。嫌な予感しかしないんだ」
そこから精霊王を決める儀式ということがわかった
私の目の前で息を引き取った男と似た民族衣装を着た男が描かれている
「パッチ族…ね。」
「五百年単位なら次は西暦で言うと二〇〇〇年ってところか」
「私たちが生きているかは不明だな」
「確かに…もう我は二五〇年たってるからな」
「確かに…先代のアテナより私よ心臓は一年間に十万回しか鳴らない…二五〇年生きたとして二五〇日しか経ってない…これから五百年たったとしても五百日しか経たないということさ。」
それから数年たった
聖域内の人が寄り付かない墓地
ポロンポロンと琴の音が響く
星は流れ生きて生き 星は流れ死んでいく
あぁまたみんな死んじゃった
私はなんで生きてるの?
あれから何十年経った?
あの前聖戦が終わってようやく50年ほど
次の子の育成をしなきゃならないのは知ってる
でも、育成したところでと思うところはいつもある。
「リエル様ここにおられましたか」
「何…セージ……なんの用?…それにしても、老けたわね」
「老けますよ。私はリエル様とは異なり時間の流れは人と同じです」
「そうね……私は仮死状態だから見た目が変わることはないわ……」
「任務のお願いです」
「任務ね……邪神の討伐?」
「凶星が光っておりましたので」
「あぁ私も気にはなってはいたわ……まるで……全てを燃やすような……」
「えぇ……見たことの無いような輝き方」
恨みの籠った星の光の輝き方
「まぁいいわどうせ暇だし……方角は……数年前に行った大陸……ね……ちょっと前にコロンブスとかいう若造が見つけたけど、捕まったとかいう……」
「その大陸です。我々は聖闘士ですからこの手の話は関わることはありませんが……」
「奴隷商人だったらしいから……まぁ……我々は神と神に準ずるものとしか基本戦わないが、所詮人は悪よ」
「私にはまだその境地は分かりかねます……」
「人を愛するのは人間だが人を殺すのも人間だよ……ちまたでは、性病が流行ってるらしい……うちの馬鹿な男たちに簡単に任務で遊んでくるなとちゃんと忠告しておきなさい……街に行く旅に中途半端な知識を持って帰って来るんだから」
「はい」
そう言うとリエルはその場から消えるようにどこかへ消えた
……
さてと……アナザーディメンションにて空間を歪ませ異次元空間の中へとはいる
そして前行ったことのある場所に降り立つ
どの変だったかしら
そもそも私、方向感覚が疎いから任務は不向きなのよね……夜に動いた方が私には向いてるし
危ないって言われるけど……そんなもの知らないわ
タッと土を蹴る音が静かに響く
凶星と言ってもハーデスとの聖戦も一区切りは着いている
ポセイドン軍だって光り方が全く違うのだから…
だからなぜ光っているのか
それを解明しなければ……次に繋がらない
日はとても高く蒸し暑い
あの先は砂丘……長丁場になるか
聖衣は異次元空間に投げたから背負わなくていいが……白いマントを顔まで覆うように砂丘の中へと入っていく
とりあえず……力が強いところに行くしかないか
どれほど歩いただろうか
だが一つだけわかったことがある
凶星の星の光と同じ力をここらで感じる
どこだ?
辺りを見渡し、岩の割れ目を見つける
人が通れるほどの割れ目である
「……とりあえずあそこに行くか…休憩も兼ねて」
岩の方へ行くとさらに力が強くなっていた
あぁここか……
「ライラ!」
リエルは琴座の聖衣を呼び寄せ、異空間より、琴座の聖衣が現れた
それを装着した。
「よし……とりあえず調査はしないとな」
中に入ると不思議と薄っすら明るかった
それもそのはず、入った瞬間、立て付けの木に火が点ったのだった
なんの術だ?人工的に作られたものだということはわかるが……
奥に進むと固く閉じられた大きな岩が縄で縛られ置いてあった
何かを封じるかのように
五芒星………双子神か?いや……違う
双子神の力は全く感じられない
それに謎の文字
ここら辺の国のものじゃない
東洋……中国とかそこらの文字……だと思うが……
岩に触れるとはじかれた
何を守っているのか封じているのか
足元を確認してみると焦げたような後がある
炎……この燃え方は人知を超えるもの
小宇宙は感じられない
小宇宙を燃やさず人知を超えるもの……
精霊か…?
精霊がここまでの力を出せるのか
『クレスト…聞こえるか』
『なんだ』
『宝瓶宮にいるな』
『あぁ…いる』
『それなら、火の精霊について調べてくれ』
『火の?お前は今、凶星を調べてるはずでは?』
『調べている……だが、この凶星は本当に凶星なのか……それを調べるために必要なことだから』
『あぁ……』
小宇宙通信にて、クレストは宝瓶宮の書庫から本を探す
火の精霊
『燃え方が人など簡単に骨の髄……もしかしたら魂まで燃やすような燃え方だ』
『…まるで悪魔だな』
『そう言うな…まだよくわかってないのだから』
パラパラと本をめくりながらクレストは関係がありそうな情報を探す
『………リエル聞こえるか』
『あぁ聞こえている』
『これはどうだ?数年前に調べたラゴウとかいう流れ星…それは新たな神を決める知らせ……。この本には 全ての魂の根源である精霊。グレートスピリッツが内包する五大元素のうち火の属性が具現化した存在……その名もスピリットオブファイア…… 見る限り、全ての炎の源のような存在だ。そのほかに土…水…風…雷の精霊もいるようだ』
精霊は凶星になるわけはないのに……
『どうだ?』
『そうね……多分そのスピリットオブファイアなんでしょう……』
辺りを見渡していると落ちていた布を拾い上げる
燃え尽きた服の布……
『どうした?』
『本当に人が燃やされたのかもな……服の布が落ちてはいるが人の骨すら残っていない……』
ははっとリエルの笑う声が聞こえた
『まるで全てを恨むかのような燃やし方……誰も信じないって感じの……精霊の単体でできるような力ではない……悲しい力ね……たしかに力が強いわ。でも……今現在の双子神のように……本体がいるわけじゃない……もしかしたら死んでるかも……そうだとしてもなかなか力が強い……ここは誰も立ち入らないようにするしかないし、これが神の力でないのであれば我々ができることは何もないわ』
『神の力ではなかったのだな』
『えぇそれ確かよ…何年神と戦ってきてると?さすがにそれくらいは分かるわ。精霊なら我々の出る幕ではない……帰るわ』
このスピリットオブファイアを知ることになるのはあと500年先の話……
………
「帰ったわ」
「おかえりなさいませリエル様」
教皇の玉座に座っているセージに髪をなびかせ見据えるようにリエルは立っていた
「えぇ……。結論から言うとあれは、人工的に作られたもの…。それも中国かそれより先の国の文字ね……ここらでは見ない文字だった。だけど、神の力は一切感じられなかった。恨みのような悲しみだけは描かれていた文字からは読み取れた……それと、精霊が関係しているようには思えたけど……それ以上は……分からなかったわ。それに、人があれを作って誰かを恨み殺したいとか……なにかの目的のために人を殺したたとして我らの出る幕ではないよ………人は争いを辞めないのだから」
「ですが……人というのは尊いものです」
「そうかしら……人は愚かよ……イティアの考えが分かるもの」
そう静かに言うリエルにそうですかと静かにセージは答える
それもそのはず、壊滅的な未来から未来を変えるために来たというアリエスのアヴニールがリエルを見た時に怯えたような表情をしていた
リエルが居ない時に教えてもらった未来
リエルはアヴニールの時代まで生きのび
そして、人に絶望した挙句、ハーデス軍に下り
アテナ軍を敗北させた首謀者
しかし、アヴニールがこの時代に来たということで未来は変わったはず
アヴニールが黄金聖闘士になる未来はもしかしたら無いかもしれない
「人が愚かよ。でも、私はイティアのように真面目じゃないし、基本的にどうでもいいから……イティアのようにならなかっただけよ……報告は以上よ……戻るわ」
教皇の間を後にし、階段を下っていく
双魚宮を抜け宝瓶宮に着いた
「帰ったわ」
「あぁ……なにか飲むか」
「紅茶をいただくわ……」
ふぅっと息を吐きながらクレストから紅茶の入ったカップを貰う
「イティアが逝って……残るは我らと……彼らのみ……海皇が動き出しそうな余韻を感じると言うのに……戦力が格段に足りないわ」
「あぁ……近いうちに私がブルーグラードに行く……そこで監視しておく……」
「あぁさすがにこれ以上の戦力を聖域の外に出しすぎるのは良くないからな」
生き残ったのは我らふたりと教皇になったセージと兄のハクレイ……あとは最近拾ってきた候補生の子たちとようやく聖衣を手に入れた若い子たち
戦力はさけない
今は、私たちのどちらかが聖域にいることでバランスを取っている
「……冥王との戦いが終わってまだ聖域も完全に復活しきっていないのにそろそろ海皇が目覚めることになるとはね……」
「……仕方がない…神の数百年は一瞬だ……我らにとってどれほど長い時間だろうと神にとったら昼寝をしていたレベルなんだ」
「わかっている……わかっているよ」
「リエル…お前の気持ちも分かる……イティアが反乱を起こした時我らは気づけなかった……」
「真面目で……余計なことは余り喋らないからね。さらに気づかないわよ…でも、確かに人は争いを辞めない…真面目すぎてそれに嫌気がさしてしまったのね」
「神にとったら我々は塵芥に過ぎない」
「そうね……第八感……エイトセンシズに目覚めてれば話は違うのかもしれないけれど、目覚めてしまえばこちら側には帰っては来れないわね」
「確かに……。我々の代でバルゴの聖闘士1人だけだったからな……。」
第八感に目覚めるものは高次元的感覚
神と人の狭間のような感覚を持つことになる故に……凡人には理解出来ぬ境地である
「私は思うのだ。クレスト……私はなんのために聖域で戦っているのか。私の居場所は本当にここなのかと。」
「違ったら違ったでそれはそれでいいのではないのか?元々は私が聖域にひきいれた…何も持たぬお前に名も聖衣も渡した……それが違うというのなら捨てても構わない」
「まぁ……でも今は嫌ではないのよ……。今はまだね」
この頃からだっただろうか
リエルの祈る時間が格段に増え何に祈っているのか聞いても教えてくれなかった
ただこれだけは教えてくれた
『まだ見ぬ神への祈り』
アテナかと思えたがそうでは無いらしい
そして数年もしないうちにリエルもまた第八感に目覚めることとなる
……
1990年 某日
「クレスト……私はアテナの聖闘士じゃないかもしれない……私は、育てた子達を戦場に送り出して死んでくのをあとどれ位見たらいいんだ?」
クレストの墓の前で静かに座り込むリエル
「アテナの考えが分からない……」
『貴方たちにはまだ命が残っている』
確かにアテナはそう言った
小宇宙をこれ以上燃やせば、その少年たちに待ち受けるのは死
もう分からない
慈悲?慈愛?そんなことを考えていた先達たちの考えが分からない
あれは鬼畜の性よ
命を燃やせば勝てると言いたいのか
「クレスト……やはり私は……聖域は狭すぎたのかもしれない……私を導いてくれる誰かに合えば何かが変わるのかもしれない」
「リエル…」
「なんでしょう…アテナ。この死に損ないになんのようです?」
「なぜいつも辛そうにしているのです?」
「おかしなことを聞きますね。みんな私を置いて…私は…また置いてかれた。また…それに!アテナ……あなたは平然とまた転生を繰り返すのでしょう?我々を残して生きろというのでしょう……それがどれだけ地獄なのか知らないのに!神様は自分のことしか考えていない……人間を本当に救いたいのなら中途半端な介入はやめて欲しい……」
「リエル……」
パチッと視界が歪む
「アテナ…?!」
何をするのです
私が…何…を……したというの?
「少し…落ち着くまで…」
そう最後に聞こえると意識を失った
「瞬、いますか?」
「え?リエル様?!」
「リエルはこれからギリシャの中で別の人として生きてもらいましょう…彼女にはもう、聖闘士は酷なのかも知れません。」
「でもアテナ…沙織さん…リエル様の意見を聞かずに…」
「もし、彼女が記憶を戻したら…何を言われようとも構いませんよ。瞬…どういう人生を全うしようとも……最強の聖闘士は今ここで死にました。これからは…ギリシャの巫女です」
END
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