そして今現在…

「蔵馬…これ。」

蔵馬の代わりに買い物をしてきた凛は、買い物袋を手渡す


「ありがとうございます。凛は、明日は学校でしょう？家まで送りますよ。」

「…。」

「…泊まります？」

蔵馬の言葉に少し目を輝かせ蔵馬の服の袖を握る

「やはり昔からあなたは変わらない」

「蔵馬は見た目も性格も少し変わった…敵と戦う時は昔の蔵馬だけど。」

彼女の言う昔の蔵馬
妖狐の時の俺。
君はどっちの俺が好きなんだ？
最近は黄泉の所に俺がしばらく行くようになると待ちくたびれて、俺のところにくることもある

そしていつも同じセリフを吐く

「私は蔵馬の部下であなたの部下じゃない。私をふりまわせるなんて思わないで。」

蔵馬が黄泉の下に着いたことが余程許せなかったのか
来る度来る度このセリフを吐く

しかし、魔界の3大勢力のほかの勢力にはつかず、黄泉の所にいるのは蔵馬がいるから

ただそれだけの理由なのである。

数日後
幽助が人間界に帰ってきたついでに蔵馬に会いに来た
「蔵馬…ほんとにあの猫又お前のこと気に入ってるんだな。俺になんか、普通に話せるようになるまでかなり警戒されてたぞ。螢子とはすぐ仲良くなったくせによ。」

蔵馬の部屋に上げてもらった幽助は、ため息混じりに蔵馬を見る

「しょうがないですよ。女の子同士ですし。同じ女子高ですからね。今は…。」

「それは俺も驚いたぜ。まさかお前と離れるなんてな。」
幽助は、蔵馬を見ながら頬杖をつく
「たまにはいいでしょう。雪村さんとも仲がいいようですし、俺は最近じゃ不定期にしかこちらに帰ってこない。なら、彼女と仲がいい雪村さんなら俺の猫を任せられる。」

俺の《猫》とわざわざアピールするのはどういう事なのか。

自慢なのか
それとも無意識なのか

蔵馬はからかうことも
冗談を言うこともよくあるが
凛のことになると少し抜けているような無意識に言葉が出ているように見えた。

「はいはい。そうかい。」

「凛の記憶が完璧に戻ったのは俺と違って俺が幽助達と出会ってしばらくして…暗黒武術会の最中だった。」

「そういや…そうだったな。おまえが…鴉との戦いで負傷してお前を見た凛が記憶を取り戻した…そこからは凄いものだったな。あいつ。」

昔を思い出すように蔵馬の部屋から外を眺める。

「彼女には薬の調合から治療法まで叩き込みましたし…。彼女の氷の力で冷やすことが出来る。それだけでかなりの時短になる。あの時は本当に彼女に助けられて…泣かれて…でも…妖狐の姿に戻る術をあの大会で掴めた。」

懐かしいっと呟く蔵馬

記憶を戻した凛の態度は
少し変わった
警戒心を全開にし蔵馬に近づく女には嫉妬をした

その度に蔵馬に説得されるが
そんなことは凛にとって言い訳のようで昔のように無理矢理でも黙らさればいいのにと思うのである。
何故、性格が真逆のような男になったのかとなる凛。
優しすぎる人間の姿をした蔵馬に内心振り回され心がざわつく
この気持ちを言葉にしても
はぐらかされるとなるため
言葉には出さない
それは猫又時代の時からの自分への掟