HAPPY NEW YEAR

「それでは、カウントダウン始めまーす」
先程まで騒いでいた歌手達が、一斉に10、9、と叫ぶ。私もカウントダウンにあわせるように、最後のラストスパートをかける。
「3、2、1!!明けましておめでとうございまーす!!」
TVの中で、歌手やタレント達がそれぞれ新年を祝っている。よし、今年もなんとか間に合った。
「お姉ちゃん、あけおめー!!今年も今から神社行くー?……ゲ」
「かすみ。ノックして、っていつも言ってるでしょ」
妹のかすみは、私の姿をみて顔をしかめた。
「毎年毎年よくやるよ、それ。湊くんと付き合ってた時もだけど。そんなんだからフラレるんじゃん」
「何で?」
「何でって……夜中の神社行くのにバッチリ化粧で着物来てんの、この世でお姉ちゃんだけだよ」
「そんなことないよ。きっと、他にもいるよ」
「この一瞬のためにィ!?朝から家族で他の神社行くのにも、まーた化粧して着物着るんでしょ」
はぁー、とわざとらしく妹のかすみはため息をついてみせる。
「湊くん、全然家から出たがらない人だったから、お姉ちゃんとは性格あわないだろうなって思ってたけどさ」
「もう別れたから良いの。そいつの名前もう出さないで」
「はーい。今度は外に出るのが好きな人と付き合った方が良いよ」
「思い知ったわよ!今回で!!」
夜中に2人で近所の神社まで歩いていく。
ふと、年越しした瞬間に神社に行きたいと言ってみたところ、外出許可が出たあの年から、なんとなく2人の恒例行事になっていた。

「何で私をディズニーに誘ってくれなかったの」
「あんたテスト期間だったじゃない」
「良いんだよ1日くらい!」
「……いや、かすみいつも勉強してないよね?」
「まぁまぁ、こないだのテストで、私クラスで3番目に頭悪かったんだけど。でも、私より頭悪い人あと2人もいるんだよ!?」
大丈夫大丈夫、と呑気に笑う妹の将来を案じながら歩いていると、神社が見えてきた。

「わ!今年も夜中なのにけっこう並んでるね」
「本当だねー」
あ、みてみて!と妹がこっそり指差しして、小声で話しかけてくる。
「あの人も、夜中なのにバッチリリーゼント!!」
「あの子、確か……」
「お姉ちゃん知り合い?」
「ううん。ぶどうが丘高校の後輩。でも、いつもあの髪型だし、身長もあるから有名なんだよね」
「ふーん……。あ、隣の人、お姉ちゃんに手ふってるよ」
視線をうつすと、確かに手を大きくふっている子がいた。
「あ!康一くん!」
私も手を振り返す。
「今度こそ知り合い?」
「うん。露伴先生とディズニー行ったら?って言った子」
「成る程。つまり、あの人のせいで私がディズニーに行けなかったわけね」
「……今度一緒に行く?」
「うん!」
そんなに私と行きたいの?疑問に思いつつ、妹のことだから全部私に任せっきりにするだろう。それ目当てだろうな、と見当をつけた。

「早百合さん!明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとう」
「えーと、その子は……?」
「私の妹。かすみです」
「初めまして!明けましておめでとうございまーす!!」
「早百合さん、いつから着物に着替えたんスか?」
「お姉ちゃんは毎年、11時くらいから準備するんですよ」
「はぇー。気合い入ってるっスね」
康一くんと、仗助くんの後ろから顔を出したのは、確かいつもこの2人と一緒にいる億泰くんだ。
「それは俺達もだよなァ」
そう言って2人は笑う。
「その髪型ってー」
かすみが言い出した途端、なんとなく康一くんが慌てた気がした。
「何時間くらいかかるんですかァ?」
「俺は慣れてるからな。大体10分から15分っスね」
「へぇ~それ、毎日ですか?」
「そーだぜェ」
「えぇー!?私だったら、髪の毛セットする時間よりも寝てたいです」
「あんたいつも私が起こすまで起きないじゃない。遅刻は良くないよ」
「まぁね。こないだ遅刻しすぎて親呼び出されそうになったよ」
妹の報告に、3人が笑った。
「妹さん、早百合さんと正反対の性格っスね」
「お姉ちゃんが心配症すぎるんだよ」
いや、妹が呑気すぎるからこうなってるっての、と反論しようとした時だった。

「君たち、夜中だぜ?未成年はさっさと帰りなよ」
「あ、露伴先生」
「何してんスか、こんなところで」
「深夜に友人と会えて、浮かれてる君たちに言われたくないね」
「露伴って友達いねースもんね」
「康一くんがいるから良いんだ」
「え、僕友達として数えられてるんですか?」
康一くんが小声でぼやいたのを、露伴先生のためにも聞き流した。

「善通寺早百合と……隣は?」
「妹のかすみです」
「初めまして!いつも漫画読んでます」
私が買った単行本を読み始めたにわかのくせに。こういうのをちゃっかりしてる、って言うのよね。
「ふーん、そいつはどうも」
口調こそそっけなかったが、露伴先生は満更でもないようだった。
「ところで君、その着物……」
「あ、もしかしてまた写真撮りますか?」
妹が身を乗り出す。
「この間のディズニーの写真、お姉ちゃんきれいに撮ってくれてましたもんね」
「こら。先生は忙しいだろうから」
「いや、君が良ければ撮らして欲しい。和服の資料って少ないからな」
「え!?」
「ほらー!!良かったね」
さっさと日にち決めちゃいなよ、妹の強引な口ぶりに乗せられ、あれよあれよと話が進んでしまった。

神様、私の願い、叶えてくれますか?
ディズニーでゴンドラに乗ったあの日を思い出して、私はもう一度神様に頼みごとをした。
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