ハッピーエンドにたどりつくまで
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外へ出ると、予想通り少し肌寒かった。8月なのに。
「今頃、ノアは記憶を失っている頃かしら」
FCの名簿にヒロインの名前があり、日報にもご丁寧に名前が書いてあった。
そして、今日からヒロインは日報を提出しなくなる。
「さて、どうしましょうか……」
リカ姉様は、ストーリーに出てこない裏で何をしていたのだろう。
FC入会希望者には上位のメンバーが色々と説明をしてくれているし、女磨きとか……?
でも今日は何の予定もなかったから……。
「ひとまずこの辺りの道を覚えなくては」
背筋はピンと伸ばして胸を張る。
リカ姉様はいつも自信に満ち溢れていて、気品溢れる女性。
その雰囲気があるからこそ、この貴婦人のような格好が似合うのだ。
「まずは大学までの道ね」
携帯の地図を頼りに、周りの景色と一緒に頭にインプットしていく。
この身体に染み付いているのか、そう苦労することなく様々な道を覚えることができた。
駅までの道、大学までの道、冥土の羊までの道、それからノアの家までの道。
念の為イッキ様の家までの道も確認しておく。
「これくらいかしら」
それからは特にすることもないので、冥土の羊へ。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
出迎えてくれたのは、店長のワカさん。
私を見て一瞬訝しげな表情をする。
当然だ。今日はイッキ様は出勤していないから。
「コーヒーをいただけます?」
「かしこまりました」
”リカ”が今日ここに来ることって、もしかして何か良くなかった?
お店の様子を見ておこうかなっていう好奇心と、あわよくばシンを見れたらって思っちゃったけど……。
「お待たせいたしました。ごゆっくりお寛ぎくださいませ」
「少々よろしくて?」
「はい」
「その、最近うちの子達は騒がしくしておりません?もし他のお客様のご迷惑になっているようでしたら、わたくしから言いつけておきますわ」
「そうですね、時折気になることはありますが、従業員が上手く宥めておりますのでご心配には及びません」
つまり、イッキ様が苦労をしているということか。
「それなら良いのですけど。ありがとうございます」
イッキルートの店長は元軍人(?)っていう設定だから、もっと猛々しい感じかと思ったら、なんか落ち着いてるな……。
もしかしてイッキルートじゃない……?
でも、イッキ独占禁止法が施行されてるから、イッキルートだと思ったんだけどな。
「ふぅ……」
転生して初めての飲み物。
ここのコーヒー、美味しいって本当だな。
「ごちそうさまでした」
「お帰りをお待ちしております」
ひと息ついて、私はもう家に帰ることにした。
今日はたくさん歩き回ったから、お風呂で念入りに足のマッサージをして、早めに寝ようとベッドに入ったところで携帯が鳴る。
会員からのメールだ。
『夜分にすみません。ノアからの日報が届きませんが、どうしますか?』
やはり。
ここで「気にしなくていい」とか言おうものなら、リカ姉様の地位が危ない。
今後FCをコントロールできなくなってしまう。
『報告ありがとう。催促メールを送ってください。』
これでいい。
『日報は?』というメールに彼女が戸惑ってバイトのマニュアルを借りる、という流れができる。
そして、彼女にFC内のルールについて認知させられる。
あとは、日報が出されなくなり、彼女がイッキ様とべったりになり始めたFCをどう抑えるか。
指示を過剰に出しすぎると、ノアがdeadエンドへ向かってしまうし、出さなすぎてもdeadエンドになる。
そして、”リカ”が彼女に肩入れしすぎると、いよいよ誰もFCを抑えられなくなってしまう。
力関係を壊さないようにしつつ、彼女をハッピーエンドへ連れて行かなくては。
リカ姉様の幸せは、イッキ様が幸せになることなのだから。