ハッピーエンドにたどりつくまで
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昨夜のトランプ大会、開始は最悪だった。
イッキ様が来ないことへの不満が爆発し、トランプをしようと言い出した子が責められたり、呼んでくると部屋を出て行ったり。
でも私が一切動かずにいたら、次第に場は収束に向かい、サワさんやミネさんも混ざって楽しくトランプを始めた。
イッキ様に揺らがない女の子達。
FCの子達にはこういう広い視野を持ってほしかった。
そうすれば、少しでも穏便にイッキ様との関係性を変えられるかもしれないから。
「おはようございます、皆様。本日も有意義な時間を過ごしましょう」
バインダーを受け取り、本日の予定を読み上げる。
トランプ大会にイッキ様が来なかったから今朝は荒れるかと思ったけれど、表面上は皆落ち着いている。
いよいよ近づいてくる肝試しに私は気が気じゃなかった。
正直、昼の間に何をしたのか記憶が曖昧だ。
「この森には──」
おどろおどろしい声音で怪談をする。
ここで怖がらせておかないと、ノアが逃げてくれないかもしれないから。
今回の目標は、彼女を逃してイッキ様と合流させること。
ここで合流できなかったら、彼女は崖から落ちて昏睡状態に陥ってバッドエンドまっしぐらになってしまう。
「皆様、くじは行き渡りましたか?それでは、一番目の方から順に森の中へお入りくださいませ」
"リカ"として表情は崩さない。
緊張する。
私の行動に、女の子の命がかかっているから。
「……参りましょう」
私の番が来て、ペアの子と一緒に森へ入る。
「では、私は持ち場につきますね」
「ええ」
少し歩いてから、その子は私から離れて木陰に消えていく。
あとはノアが来たところに出ていけばいい……というのがFCの作戦。
でも、そのまま行くと彼女は崖から落ちてしまうので、私は彼女がこちらへこないように物音を立てながら誘導し、イッキ様と合流させる。
「……よし」
小さな声で呟いて、私は道に出た。
「!」
「……え」
ノア!?
どうして?彼女がここを通るのはもっと後のはず……というか、ここを通る前に別の方向へ逃げてイッキ様と合流するはずでは?
「……わたくし、警告いたしましたわよね」
仕方がないので、エンカウントした時の流れに持っていく。
もしかすると、イッキ様との親密度が低かったか……それともどこかで選択肢を間違えているか。
彼女がここに来た理由は、現時点ではわからない。
こうなった以上、私は彼女が崖から落ちてしまわないよう、脅す程度で済むようにしなくては。
「イッキ様をご自分のものだと勘違いなさらないようにと」
一つでも多くのヒントを彼女に与えてあげないと。
私の後ろにはFCの子たちが1人、また1人と集まってくる。
「日報もお出しにならず、イッキ様がご配慮くださっているのにご自分のことばかり……」
気づいて。
この場面を乗り越えた後、あなたがどう振舞わなければならないのか。
「独占禁止法についてのご説明は、FCに入られた際にお聞きになられたはずですわよね?」
今記憶を取り戻すのは危ないかもしれないけれど、ここは私がどうにか切り抜けさせるから。
少しでも思い出して。
そして、イッキ様と幸せな未来を迎えてほしい。
「これ以上お守りいただけないのであれば……」
ノアは慌てて逃げ惑う。
危ない。もう少し行くと崖だ。
「死んでいただかなくてはいけませんわね」
表立って彼女を助けるのはまずい。
崖に落ちる直前で、腕を引かないと。
「!」
今!
「っ!」
ヒールで足場の悪い山道を駆け、彼女の腕を掴む。
強くこちら側に引いて……。
「え?」
彼女が私より外側に足をついたため、私は彼女に振り回される形で体が崖側に傾く。
「いやっ……」
落ちる!
「っ!!」
驚きで叫び声すら出ない。
私は案の定、本来彼女が足を滑らせるはずだったところに足をついてしまい、そのまま崖から体が外へ投げ出される。
「「「リカさん!!!」」」
FCの子たちの叫び声が聞こえる。
それを最後に、私の意識は途切れた。