ハッピーエンドにたどりつくまで
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合宿当日。
駅前は相当賑やかだった。
キャーキャーと歓声をあげ、イッキ様の袖を掴み、彼女から引き離そうとしている。
高音を聞きすぎて、頭が痛くなりそうだ。
「皆様、おはようございます。本日からの合同合宿で幹事を務めるリカと申します」
胸を張って、綺麗に腰を折る。
リカ姉様の威厳を脅かさないように。
近くのFCの子から名簿を受け取り、人数を確認する。
「茗荷大学3名、西池大学15名。全員揃ったようですわね」
イッキ様にも男友達ができれば、と少し思わなくもないけど、当然、この場に来ている男はイッキ様以外の男と意気投合している。
「それでは皆様、本日から3日間、協力し合って麗しい合宿の日々を過ごしましょう」
”リカ”の挨拶の終わりと共に、イッキ様の周りを囲む女子と、リカ姉様の周りを囲む女子に別れる。
賑やかに騒ぎながら電車に乗るFCの子達。
ほどほどに、と上位会員に伝えると、少し落ち着き始める。
やはり、”リカ”の影響力は大きいな。
電車ではずっと取り巻きの会員達と合宿の段取りを確認していた。
「さすが、山の上は冷えますわね……」
中へ入りましょう、と皆を誘導する。
中に入ると、山荘のオーナーが様々な施設について説明してくれる。
その説明が終わると、”リカ”の指示出しだ。
「それでは皆様、まずはそれぞれのお部屋にお手荷物を置いてきてくださいまし。その後は練習時間となっております。二大学揃って、さっそくビリヤードを嗜みましょう」
FCの子にプリントを渡し、机に置かせる。
「お部屋の場所は、こちらにご用意した部屋割り図をご確認くださいませ」
ビリヤード。
前世では全く縁のなかった競技だけど、リカ姉様が下手なわけにはいかないので、必死で練習した。
といっても、リカ姉様がビリヤードの腕前を披露することはほぼない。
だってこれは、
「きゃああ!」
「イッキぃ〜!」
イッキ様の舞台だから。
彼女が近寄れないくらいに騒ぎまくるFCの子達。
ノアは少し引き気味で、サワさん達と固まって見ている。
可哀想に、男性陣は端っこに追いやられてしまっている。
私はあまり出しゃばらず、隅の方から全体を管理する。
ひとまず初日はこんな感じでいい。
ノアがそっと退室したら、あとはもうファンサービスタイム。
イッキ様はどんどんかっこいい技をこなし、女の子達を熱狂させている。
「皆さん、そろそろ夕食のお時間ですわ」
ゲームがひと段落したところで声をかける。
あまりイッキ様を束縛しすぎても可哀想だ。
「「「はぁい、リカさん」」」
それからは穏やかに夕食を、といくわけもなく、食事中もイッキ様は女の子の相手をずっとしていた。
ノアはサワさんやミネさんと楽しそうに談笑している。
夕食が終わり、私はイッキ様とひと息ついていた。
「イッキ様、あの子たちのこと、たくさん構ってくださっていること、感謝いたしますわ」
「いいよ、最近あんまり遊んであげられなかったからね」
「イッキ様は本当にお優しいですわ」
そこには、私の皮肉も込めていた。
そんな話をしていると、イッキ様のほうをチラチラ見ながら、私に話しかけてくる女の子がいた。
「あの、リカさん。私トランプ持ってきたんですけど、よかったらみんなでしませんか?」
イッキ様と過ごす時間を作りたいのね。
「そうですわね……。イッキ様はどう思われます?」
「え、僕?いいんじゃないかな、トランプ」
「そうですわね。消灯までまだ時間もありますし、それまでは皆でトランプ大会をいたしましょうか」
「やったぁ……!じゃ、じゃあ私、みんなを呼んできます!」
「あ、僕が行くよ。君はトランプの用意をしてて」
「え、でも、」
「いいから。ね?」
イッキ様に甘い顔をされれば、女の子が断れないはずがなかった。
このまま、ノアと甘いひと時を過ごすことだろう。
そして皆がわらわらと集まってきても、当然イッキ様が現れることはなかった。