第一章:新たな始まり
夢小説設定
この小説の夢小説設定日本人とイギリス人のハーフ、という設定ですので、ミドルネーム(名字(日)の部分)が存在します。
名前は日名・英名どちらで設定していただいても構いません。
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それから私は、もう縄には縛られず、雪村千鶴という女の子と同じ部屋に入れられた。
「!」
「よかった、また会えたな」
「はい……!」
涙ぐむ彼女。
そういえば私の名前を教えていなかったので、ひとまず自己紹介をした。
「エリィさん……」
「ああ。……ところで気になってたんだが、」
「?」
襖の前にいる男たちから少し遠ざかり、聞こえないように小声で話す。
「あんた、人間じゃないよな?」
「!」
「あ、待て待て。咎めようとしてるわけじゃない。ちょっとだけ腕を噛ませてほしい」
「っえ?」
「私は人間じゃないんだ。まあ、吸血鬼ってやつ。あんたのことがずっと気になってたんだ」
「……」
「ほぼ初対面の奴にこんなこと言われて嫌だろうけど……あ、まあ、どうしても嫌なら遠慮なく断ってくれ」
そう言ったのだが、千鶴は袖を捲って腕を差し出してきた。
「……どうぞ」
「……………私から言っといてなんだけど、いいの?」
「はい。助けていただいたお礼です」
「ふーん……そういうことなら遠慮なく」
カプッと軽く噛み、少しだけ血をいただく。
「!」
同胞の血でも、人間の血でもない、しかし今まで飲んだ中で1番少量でお腹が満たされる血だった。
「ありがと」
ペロリと舐めて腕を離すと、もう傷口は塞がっていた。
「傷、塞がるの早いね」
「!」
吸血鬼の唾液は治癒力を一時的に高めさせる効果がある。自分には効かないが。
吸血し終えた相手の歯型を一刻も早く治してあげるために進化した能力なのではと一部の学者たちが言っていた。
しかし、私は人間と吸血鬼のハーフ。その能力は人より少し弱く、普通なら数分で塞がるところ、私の場合1時間ほどはかかる。
しかし、千鶴は一瞬にして塞がっている。
「……私も、よくわからなくて」
本人も、なぜ傷の治りが早いのか理解していないようだ。
それなら聞いたところで何も解決しない、と思い、もう聞くのはやめた。
そして私は、自分の身体の変化に気づく。
先ほどまで変若水の残りが身体にあるような感覚がずっとあったが、千鶴の血を飲んでから、それが綺麗に取り除かれているのだ。
「……」
吸血鬼にとって「満腹」になる美味い血、というのは大抵純潔の人間の血だ。
しかし、千鶴の血は、それらとはまた違う。それ以上に満腹感を得られる。
「入るぞー」
それから布団が持ってこられ、早々に就寝することになった。
部屋はギリギリ2人分の布団が敷けるほどの大きさで、当たり前のように布団が与えられた。
元の世界ではあり得なかったことだ。
私はその日も、暖かい布団に包まれて眠った。