第一章:新たな始まり
夢小説設定
この小説の夢小説設定日本人とイギリス人のハーフ、という設定ですので、ミドルネーム(名字(日)の部分)が存在します。
名前は日名・英名どちらで設定していただいても構いません。
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どれくらい時間が経っただろうか。
いつもに比べて治るまでに時間がかかり、さらに言うと、治った後も体の中にあの変若水とやらが残っている感覚があった。
「!」
「……待たせたな」
衝動を抑えるのに必死で、身体中が汗に濡れて気持ち悪い。
私の醜い呻き声も、外に漏れていただろう。
「もう……平気なのか?」
「ああ。一杯でいい、水をもらえるか」
「取ってくる!」
元気な男が駆けていき、ふらついた私の体をガタイのいい男が支える。
「……」
目が虚ろな私を、男は複雑な表情で見つめている。
「なあ、あんたは毎週こんなに苦しんでんのか」
「吸血鬼だからな。私は理性で抑えられる分、マシな方だ。理性ぶっ飛んで血ぃ吸って人間に処刑された同胞なんかいくらでもいる」
「……」
「水持ってきたぞ!」
「感謝する」
喉を、冷たい水が伝っていく。
ついでに持ってきてくれた手ぬぐいで少し汗を拭い、落ち着いたところでまた話し合いが再開された。
「あの変若水とやら、あれは吸血鬼にとっては衝動誘発剤だな。で、人間にとってはそれが羅刹への変化に影響すると。味はまあ、不味くはないが、やっぱり同胞と似たような味がする。おそらく真似てるんだろ」
「そうか……」
「私の場合は吸血鬼の特性が強いから染まらなかったが、人間があれを口にした時、人間の血じゃあ治らないかもな」
「それは何故だ?」
「人間にはそもそも同じ種族の血を吸う文化はないし、この国は特に血を飲む習慣がないだろ。だから、いくら羅刹になったとはいえ、身体は血を上手く吸収できないはずだ」
「では、羅刹はもうあの衝動を抑えることができないと?」
「いや、まあ、具体的なもんは何かわからんが、何かしらはあるはずだ。とりあえず絶対必要なのは強い意志だな」
「意志?」
「吸血衝動を抑える意志。私の衝動を抑えるのに絶対必要なのも意志だ。どれだけ血が吸いたくても、相手を殺したいわけじゃない。だから、理性でその場に留まるってこと」
「そんな方法で……?」
「まあ、羅刹の場合はそれだけじゃ無理ってことだ。……で、どうかな。提案なんだけど」
「なんだ?」
「これまでの反応から見るに、羅刹や変若水のことは外に漏れちゃいけないんだろ?でも私はそれを知ってる。ここで殺されるのが運命みたいなもんだ。だが、私はここでやられるほどヤワじゃない。それでもあんたたちは情報が外に漏れるのを防ぎたい」
「何が言いたい?」
「私をここで雇わないか?」
「……雇う?」
「そうだ。羅刹を研究する要員として。表向きの建前がいるなら、雑用係でもなんでも言えばいい。見たところ男だらけみたいだから、男の格好で生活してもいい」
「……」
これでダメなら私はここから今すぐにでも逃げ出さなければならないわけだが。
「……結論は明日出す」
「!」
返事は、保留にされてしまった。