序章:世界からの脱却
夢小説設定
この小説の夢小説設定日本人とイギリス人のハーフ、という設定ですので、ミドルネーム(名字(日)の部分)が存在します。
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「!」
ハッと目を覚ますと、私は久しぶりに温かい布団に包まれていた。
屋根があり、壁があり、窓がある。
私は、家の中にいた。
「……」
身体の動きを確認する。
窓から外を眺める。
私は、本当に全く別の世界へ来ていた。
少なくとも私の世界に木造の家なんてほとんどなかった。
道路は綺麗に舗装されていたし、服は洋装が主だった。
しかし、窓の外の光景は、その真逆だった。
「エリィー!」
階下から、私を呼ぶ声がする。
聞いたことがないはずなのに、どこか耳馴染みのある声。
「いつまで寝てるんだい?そろそろ起きる時間だよ」
見覚えのない、中年の女性。
しかし、私の記憶に彼女との関係が刻まれている。
「すみません、すぐ行きます」
「早く支度しな。もうすぐ店を開けるよ」
「はい」
私は、この商家に居候している。
彼女はここの奥様で、旦那は無口な男。
居候させてもらう代わりに店の手伝いや家事を私がやらされているということだ。
これは、生き残れるんじゃないか?
「早く!」
「はい!」
私の記憶の中にあるはずのない、ここでの私の役割が次々と思い浮かんでくる。
身体も勝手に動く。
あっという間に夜になり、ご飯を食べ終えて自室に戻る。
「あと確かめなければならないのは、」
私は手元にある尖った石で肌を傷つけてみる。
少し血が滲んだものの、みるみるうちに傷は塞がった。
「………ああ……」
”コウモリ”としての性質はそのままか。
となると……。
「っ!」
目を閉じて意識を集中させると、頭に熱を感じる。
鏡を見ると案の定、角が出て、髪は真っ白に染まり、目は赤く染まっていた。
牙が出ているから、吸血のための性能も備わっている。
ここまで元の世界と同じ身体となると、そのうち吸血衝動が来ることになる。
しかし、今日一日を終えた限り、この世界では吸血鬼は馴染みのない存在だ。
”コウモリ”の名も聞かなかったし、吸血鬼なんて単語ももちろん出ない。
極め付けは、人間が聖水や十字架を持ち歩いていなかったこと。
そんなの、理性を失った”コウモリ”に血を吸ってくれと言っているようなものだ。
1,2人なら家に忘れてしまったのだろうと思えたが、誰1人として持っていなかった。
しかもそのことを言及する人間がいない。
この世界において、確実に”吸血鬼”も”コウモリ”も浸透していない。
「……」
同胞の気配を探しても見つけられな─────
「!」
2つ向こうの通りに、3人の同胞?の気配。
なんというか……人間の血も混ざっているというか、同胞と言っていいのかわからないような、微妙な気配だ。
「……」
少し考えて、私は会いに行くことにした。
もしこの世界の”コウモリ”なら、吸血衝動が起こる前に血の入手方法を聞きたい。
せっかく異世界に飛ばしてもらったのに、前の世界と同じような状況になるのだけは避けたい。
幸い仕事があるから、お金はそれなりにある。
なんとしても、血液の入手ルートを確保しなければ。