終章:最期のときまであなたを想う
夢小説設定
この小説の夢小説設定日本人とイギリス人のハーフ、という設定ですので、ミドルネーム(名字(日)の部分)が存在します。
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立っていたのは、とても見覚えのある人だった。
「……え……?」
私の覚えていることと違ったのは、髪が白くなっていたことと、いつも着ていた露出の高い服ではなかったこと。
「……座って」
「ああ……」
布団から動けない私を見て、彼は痛々しそうな顔をする。
私の言葉に促されて、彼は私の横に座った。
「ええと、私も聞きたいことがたくさんあるけど……」
私は上手く笑えなかった。
その髪色から察したことへの悔しさが込み上げてくる。
どんな顔をしたらいいのか。
「……エリィ、だよな?」
彼が私の手に恐る恐る触れる。
「ああ、そうだよ。こんなに弱くなってしまったけどな」
「俺のこと覚えてるか?」
「もちろん。随分見た目は変わったけどな」
はは、と笑ってみるが、乾いた笑いになってしまった。
「あんたも、変若水を飲んでしまったんだな」
「……まあな。やむにやまれずっつーかよ」
「そう……。戦のことは風の噂で聞いてたから、だいたい知ってるけど」
「関所を隔てたここにも噂は広まってんのか……」
「うん。行商人が時々ここを通るからね」
「なるほどな」
私の感覚はもう鈍ってしまって、後どれくらい彼が生きられるのかもうわからない。
でも、見た目は元気そうに見えた。
「こんな死の瀬戸際で再会するなんてなあ。もう私の自分の力だけでは起きていられないし……」
もっと元気な時に再会できていれば、とか。
口には出さないけれど。
「あんたの記憶の中の私は、元気なままが良かったな」
「確かに体は随分弱っちまったみてえだが、心根の強さは変わってねえだろ、お前。他の奴なら、そんな体になっちまうもっと前の時点で耐えきれてねえよ」
「あはは、長所を見つけるのが上手いな。なんだかあんたに会ったら気が抜けたよ。新撰組の行く末が、私もなんだかんだで気になってたんだろうなあ」
突然出てきておきながら言えたことではないが。
「そうだろうと思ってな。お前に話してやりたくて、話さなきゃならねえと思って、探して来たんだ」
それから彼は、私が抜けた後の新撰組のみんなの様子を、細かく教えてくれた。
自分が新撰組の皆と離れた後の、戦の結果も。
追加情報で、鬼の話も少しだけしてくれた。
「そうか……」
話を聞いているうちに、次第に急激な眠気が襲ってきてしまい、彼が話終える頃には頭がぼんやりとしてきていた。
「っと、話しすぎたか?」
「ん、いいや……、なんだろうな、すごく眠く、なってしまって……」
そうすると彼は私の頭と背を支えながら布団に寝かせてくれた。
「すまない、せっかく……」
「構わねえよ。今の話で終わりだ。もう寝てろ」
「帰るのか……?」
「ああ。そろそろ、な」
それなら、最後にきちんと伝えないと。
今度こそ、文ではなく自分の言葉で。
「ありがとう……」
「礼はいいよ。あいつの、最後の頼みだからな」
「2人して、迷惑をかける……」
「全くだぜ」
「そこの、棚に。羅刹の衝動を、抑える薬が……」
「?これか?」
「ああ、私じゃなくて……あんたに」
「俺に?」
「私はもう、いいから。その資料も持っていけ……」
彼は戸惑いながらも、棚から資料と薬を手に取る。
「……感謝する」
「ふ、それこそ、礼はいい」
たくさん話を聞けてよかった。
皆のその後を知れてよかった。
こんなに軽やかな気持ちで眠りにつけるのは、新撰組を出て以来初めてだろう。
「あんたは、長生きしろ……」
「……ああ」
「私と……」
ああ、もう目を開けていられない。
意識が遠のいていく。
「原田の、ぶん、も……」