終章:最期のときまであなたを想う
夢小説設定
この小説の夢小説設定日本人とイギリス人のハーフ、という設定ですので、ミドルネーム(名字(日)の部分)が存在します。
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薬で吸血衝動を抑えてから1ヶ月。
体はやはり血を欲しているのか、あれから2度また吸血衝動に襲われたが、それもまた薬で抑えられた。
少し頭痛が増えたけど、それ以外は何ともない。
「おはよう、原田」
朝も普通に起きられるようになった。
「おはよう。最近早いな」
「薬のおかげかな。山南とも、この効果について話し合っているところだ。もしかすると、他の羅刹達も薬を飲むことで人間の生活に戻れるんじゃないかとな」
「そうなるといいな」
「そうだな。藤堂のこともあるし、山南も……。今のところ皆で薬を飲んでいるけど、顕著に影響が出ているのは私だけなんだ」
もしかすると、元の世界の薬だから、羅刹には効かないのかも。
「っ!」
「また頭痛か?」
「ああ、まあな。大したことない。急に朝型になったから体が驚いてるんだろう」
朝起きれるようになったものの、以前より寝つきがかなり悪くなった。
そのせいで疲れが出てるんだろう。
「今日は?」
「巡察だ。一緒に行くか?」
「うーん、そうだな。せっかく起きれたんだし、ついていくよ」
「昼からは非番だから、ゆっくりしよう」
それから原田について巡察に出たが、以前よりも疲労の溜まり方が早い。
「あの、エリィさん大丈夫ですか……?」
「ん?ああ、大丈夫だ。最近動いていなかったから体力が落ちたのかもしれない」
はは、と笑いながら言ったものの、体に疲れが滲み始めていた。
以前だったら、これくらいなんてことなかったのに。
日傘さえさしていれば、いくらでも歩けるくらいだったのに。
「少し休憩するか?」
「いや、そこまでじゃない。皆に気を遣わせてしまってすまないな」
それから通常の巡察ルートを辿って帰り、屯所に着く頃には軽い目眩が起こるほどだった。
「っとと、」
「おっと、大丈夫か?部屋で休もう」
「えっ、ちょ、」
私はそのまま原田に抱き抱えられてしまう。
「待て待て!自分で歩ける!!」
「そんな状態で何言ってんだ。いいから静かにしてろ」
千鶴が私の部屋に布団を用意してくれて、私はそのままそこに寝かせられる。
「助かった、ありがとうな」
「いえ!エリィさん、あまり無理されないでくださいね」
「すまない……ありがとう」
千鶴は笑顔で去っていく。
屋根の影に入ってから、だいぶ体が楽になった。
「悪い……こんなはずじゃ……」
頭痛の時点で、巡察について行くのは辞めるべきだった。
隊士にも迷惑をかけてしまったし……。
「気にするな」
原田の手が、私の頭を優しく撫でる。
「最近は色々生活を変えたから、それで疲れが出たんだろう」
「そう、なのかもな」
薬のことが頭を過った。
血を飲んでいないから、体調に異変が現れているのではないか。
でも、だとしたら、私は……。
「少し休むよ。ありがとう」
「ああ。何かあったらすぐに呼べよ」
原田は最後まで心配そうな顔だった。
結局私はその後、夜までずっと眠っていた。
「んん……」
起き上がって体を伸ばす。
山南のところに、相談に行こうかな。
「!」
スッと襖を開けると、外に座っていた原田がハッとして振り返る。
「起きて大丈夫なのか?」
「いや、私は大丈夫だけど……え?ずっと居たの?」
「ああ。何かあったら呼べって言っただろう?」
「そうだけど……!あんたが風邪引いたら大変だろう!?」
私は部屋から布団を引っ張ってきて原田に被せる。
もうさっきのような疲れはない。
「私は山南のところに行ってくるから!私の部屋で暖かくしてて!」
「あ、おい!」
私は原田を部屋に押し込み、山南のところへ向かった。
「おや、そんなにドタバタと足音を立てて……皆さんが起きてしまいますよ」
「ああ、ごめん。ちょっと薬のことで話があるんだけど」
それから体調の話や吸血衝動の頻度などについて山南に説明した。
「なるほど……非常に興味深い結果ですね。ただ、本当に急な環境変化に対応できていない可能性もあるので、もう少し様子を見てみましょうか」
「うん……それはそうだな。また変化があれば連絡するよ」
「ええ。お待ちしています」
それから薬を追加でもらって、私は部屋に戻った。
「あ」
部屋に戻る途中の廊下で、原田と会った。
「部屋にいろって……!」
「さっきまでフラフラだったお前が、戻ってくるのを待ってられるほどいい子じゃねえからな」
「もう……」
原田はまた私を部屋まで送って、ゆっくり休めよ、と言って今度こそ自分の部屋に戻っていった。