終章:最期のときまであなたを想う
夢小説設定
この小説の夢小説設定日本人とイギリス人のハーフ、という設定ですので、ミドルネーム(名字(日)の部分)が存在します。
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原田と話し合った日から数日、吸血衝動がやってきた。
「っ……!」
原田と生きていくためには、この衝動を制御できるようにならなければいけない。
もし、羅刹のために作った薬が私にも効けば、その薬を持ち歩いているうちは、血を吸わなくても生きていけるのではないか。
これを試すため、私は吸血衝動を待っていた。
「く、すり……!」
引き出しに入れておいた薬を、震える手を抑えながら口の中に流し込む。
「………………………………」
歯を食いしばって耐えること数分。
「治まった……?」
衝動的な喉の渇きが消えていく。
息切れもないし、嗅覚も通常に戻っている。
元の世界の鎮静薬を元に作っているから、効くだろうとは思っていたけれど、こんなにもきちんと効くとは。
「これはいける!」
その後、心配で様子を見に来た原田に鎮静薬の効果のほどを喜びと共に伝えた。
「はは、ネタばらし……あー、ええと、もったいぶった割に簡単に話しちゃうけど、この吸血衝動がずっと引っかかってたんだ」
「薄々そうだろうとは思ってたが、やっぱりか」
「この薬は今山南も開発を進めているし、このままいけばもっと簡単に薬を用意できるようになるはずだ!」
人間にはなれない。
でもずっと血を吸いながら生きていくわけにもいかない、原田の夢は静かに暮らすことだから。
理性で抑えることはできても、誰かの血を吸わないと生きていけないようでは……。
「よかったな!これで楽になるんだろう?」
衝動に苦しむ私をいつも見ていた原田も、同じように喜んでくれる。
「ただ忘れるなよ。たとえお前が血を吸わないといけなくなっても、それが俺の血で解決するなら、それは全く迷惑じゃない」
「!……ああ、ありがとう」
原田は本当に優しい。
でも私は、それに甘えていたらダメになる。
「愛してるよ、原田」
「ああ、俺も愛してるぜ」
それからしばらくして、斎藤も藤堂も帰ってきた。
……藤堂は、羅刹になっていたけど。
「よお、昼起きてるのがキツくなった気分はどうだ?」
夜。もう皆が寝静まった頃。
シリアスな雰囲気にしないように、からかい気味で話しかける。
「エリィ……」
「辛気臭い顔するなよ。生まれた時からその状態だった私が憐れみたいだろう」
「そういうわけじゃねえって」
「わかっている。藤堂はそういう人間じゃないからな」
「お前はすごいな、生まれた時から血の匂いに過敏で……ずっと生きてきたんだな」
「いいや、生まれた時からだから耐えられるんだ。私はこの生活しか知らないから。あんたの方がよほどすごいよ」
未だに正気を保っていられるんだから。
「体調が悪化したら、私と山南で共同開発している薬を服用するといい。私はその薬のおかげで、今のところ吸血を抑えられているしな」
「そうなのか!もしかしてそれ、左之さんのためか?」
「まあな。いつまでも原田の血を吸わせてもらうわけにも、誰かの血を吸うわけにもいかないだろう?」
藤堂は自分のことのように喜んでくれる。
「2人のこと、応援してるぜ!」
「ふふ、ありがとう」