終章:最期のときまであなたを想う
夢小説設定
この小説の夢小説設定日本人とイギリス人のハーフ、という設定ですので、ミドルネーム(名字(日)の部分)が存在します。
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あの後、私は逃げるように原田から離れた。
追ってこようとしたけれど、吸血鬼である私が彼から逃げ切る手段などいくらでもあった。
屋根を伝って歩くのもよし、塀を飛び越えるのもよし。
頭を冷やして屯所に戻ってからも、永倉を誘って外へ出かけたり、土方のお使いをしたりして、原田を避け続ける日々が続いた。
そんなある日。
「おう、エリィ」
「永倉。どうかしたか?」
「あー、そうだ!久しぶりに散歩でもどうだ?」
「?まあいいけど」
珍しく永倉から声をかけられて、散歩に連れ出された。
しばらくいつもの巡察コースを歩いていたが、徐々にその道から逸れていく。
「永倉?」
屯所を出てから、何なら誘ってきた時から、永倉は苦い顔をしていた。
永倉は何も言わず、ポツンと立つ小屋の戸を開けた。
「ちょ、」
私が止めるより先に、永倉がずっと苦い顔をしていた理由がわかった。
「原田……」
「すまねえ!」
そう言うと、永倉は走って去っていってしまう。
「まあ、ここまでだな」
そう言って、私は戸を閉めて原田の横に座る。
「エリィ、この間は、」
「言いたいことはわかってる。大方、夢を押し付けたみたいで申し訳ないとか思ってるんだろう。それと同時に、私を離すつもりはない、とも」
「ああ。お前がどう思っていようと、俺が添い遂げてえと思ってるのはお前なんだ」
「それはそうだろう。今恋仲なのは私だからな」
「見くびるなよ。エリィ、お前は俺が惚れ抜いたただ1人の女だ。これだけは譲れねえ」
「譲る必要はない。それは確かにそうなんだろう」
現時点では。
「お前に避けられてたここ数日、どう話そうかずっと考えてた。仕事も手につかねえし、酒すら飲む気にもなれなかった。これと決めた女がこうも自分をかき乱すもんかと……初めて知ったんだ」
原田の言葉は純粋に嬉しい。
「そこまで想ってもらえるのは、幸せなことだな」
原田が今、私を愛していることは知っている。
それが身に染みてわかるほど、私は原田からたくさんの愛をもらっている。
でも、私と共に生きるということは、私の吸血衝動に付き合わせるということ。
とても幸せとは言い難いことになると思う。
「あんたがたくさん愛してくれたから、私はあんたの愛を信じられるようになったし、私もあんたを愛してるよ」
それは単純に、良い傾向だと思える。
契約云々なしに、愛なんてものを信じて身を預けられるようになるとは。
以前の私なら考えられなかったから。
「それなら何が不安だ?俺じゃ……頼りにならないか?」
「うーん……いや、頼りにならないわけじゃない」
私だって、できることなら原田とこれからも一緒にいられたらと思うし。
でもその上で、私ばかり原田に寄りかかるのは違う気がする。
「うん、そうだな。私はあんたと離れたいわけじゃないから……」
私が一方的に諦めて突き放すのは、愛がない、気がする。
「私なりに、あんたと生きられるように模索してみるから、見守っててくれないか」
「……そうか。エリィがそういうなら、任せるよ」
原田は話してもらえないことに不満そうだったが、いつもの微笑みを返してくれた。