終章:最期のときまであなたを想う
夢小説設定
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あれから、結局羅刹の方は大した進展もなかった。
しかし、新選組は変わっていく。
屯所は移ったし、千鶴の姉だか兄だかよくわからない、南雲とかいうのにも会った。
二条城で警護という大役を得て近藤さんが舞い上がっていたり、沖田の病が発覚したり。
なんかよくわからないが、すごいことをして島原で宴会を開いたりもした。
私がこの世界に定着するための1年はあっという間に過ぎ去り、私は安全な生活を手に入れた。
神に脅されたほど、困難な死の運命はなかったな、と私は呑気に振り返っている。
そして今日、あの伊東が離隊する。
斎藤と、藤堂も一緒に。
「藤堂は、自分が連れてきた手前、はいさようならって見送れないんだろうな」
なんとなく、そのあたりの性格もわかってきた。
斎藤はおそらく、土方や近藤の命とかだろうな。
奴がそう簡単に新選組を離れるとは考えにくい。
「幹部一元気な奴がいなくなると、少し静かになるな」
「おい!それは良い意味か!?」
「いや、悪い意味だ。寂しい、というのかな」
「!」
「元気でな、藤堂。くれぐれも早死になんかするんじゃないぞ」
「っは!わかってるよ!エリィもあんまり無茶すんなよ、左之さんが心配すっから」
「はは、気をつけよう」
この頃、私と原田はもう恋仲、というものになっていた。
原田が愛を告白してくれてから、私なりに考えて、それが嫌じゃないことに気づいた。
むしろ、断ることで私から離れていかれることの方が嫌だと思った。
これは愛というより、ただの執着かもしれないが。
「じゃあ、」
「ああ、じゃあな!」
またな、とは言えなかった。
斎藤はともかく、藤堂は本当にもう会えるかどうかわからない。
それから数日、原田も永倉も暗い顔をしていた。
あそこの3人は特に仲が良かったからな……。
「原田、甘味処にでも行こうか」
「ああ」
「永倉も行くか?」
「!……いや、やめとくぜ」
チラリと原田を見て、永倉は立ち上がりかけた腰を下ろす。
「私達のことは気にしなくていいぞ。別に2人きりになろうと思って誘ってるわけじゃないからな」
「まあそうだったとしても、お前を邪険にしてまで行こうとは思わねえよ」
こういうところ、好きだなあと思う。
「まあ単純に気分転換だ。今日は非番だろう?」
「そ、そうか?それなら……」
私は永倉と原田を連れ立って茶屋に向かう。
大男2人も連れていると、嫌でも視線が集まる。
「見られてんな……」
「女1人と大男2人だとなあ」
「さっさと店に入ろう」
私は早々に目をつけて甘味処に入る。
お団子とお茶とを3人分頼んで、中の席で待つ。
「エリィも食べるの、珍しいな」
「まあ、これだけ注目されてて私だけ食べないのはイメージ、あー、印象が良くないからな」
「そんなこと気にしなくていいぞ。食べたくないなら無理に食べる必要は───」
「いいんだよ。こうして気兼ねなく食事できるのは未だに新鮮だからな」
「新鮮?」
「昔生きてたところでは、7日に一度食事ができればいいくらい貧しかったからな」
「……」
湿っぽい雰囲気になってしまう。
だが、ある意味シリアスな話をすることで気を逸らすことはできるかもしれない。
「まあ、私達は人と同じ食事をする必要はないからな。食事よりも、メイン、主食の心配をしてたな」
「そうか……」
「お団子です〜」
「ありがとう」
ちょうどいいタイミングで品が来た。
「ん〜、美味しい!」
誰かに追われるでもなく、何らかの違法な手段を使ったわけでもなく、穏やかに食事を摂れることにようやく最近慣れてきた。
「エリィは美味しそうに食べるよな」
「本当に美味しいからな」
「俺の分も食べていいぞ」
「原田、あんた最近私に食べ物を譲ることが多いぞ。自分で食べろ。そういうお人好しはいつか身を滅ぼすからな」
「……左之……」
永倉が何やら哀れな人を見る目で原田を見ている。
「言うな、新八」
原田も哀愁漂う雰囲気をまとい始める。
「?」
さっぱり空気がわからず、首を傾げてしまう。
「なんでもねえ。じゃあ遠慮なく」
それから3人で談笑して帰った。