第二章:新撰組での暮らし
夢小説設定
この小説の夢小説設定日本人とイギリス人のハーフ、という設定ですので、ミドルネーム(名字(日)の部分)が存在します。
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翌日、私は非番の原田を伴って、こちらに来たばかりの時にお世話になった商家に顔を出すことにした。
「非番なのに悪いな」
「気にすんな。俺も気になるしな」
「商家が?」
「お前の実家が」
「実家というか、居候させてもらってただけだ。血の繋がりはない」
「そうなのか?じゃあ親は、」
そこまで口に出して、原田はその続きは言わなかった。
私自身もどう話していいかわからないし、それはありがたかった。
「親の話は、まあそのうちな」
そう話しているうちに商家に着く。
ちょうど奥様が外に出てきていた。
「!」
私に気づいた奥様がぎょっとして中へ引っ込み、旦那様を連れてまた出てきた。
そういえば、置き手紙もせずに出て行って、もう何日経っただろうか。
「……エリィ……?」
いつも全く話さない旦那様が、私の名前を呼ぶ。
「ご挨拶が遅くなり、申し訳ありません。奥様、旦那様、私は今───」
「あんた、生きてたのかい!」
「!」
感極まった奥様に抱きつかれる。
他人で、居候で、かなり厄介者だったと思うのだが、情が湧く程度には私のことを可愛がってくれていたのか。
「……あがりな」
旦那様はそれだけ言って、中へ戻る。
それは、隣にいる原田にも言っているようだった。
「そうね。ひとまず中に入りなさい。そちらのあなたも」
互いに見合って、中へ入ることにした。
「……」
中へ入るも、奥様がお茶を入れてきてくださるまで、旦那様は一言も言葉を発さなかった。
「お待たせしました。粗茶ですが」
「ありがとうございます」
「すみません……」
「で?あんた今どこにいるんだい?」
「……」
ちらりと原田を見ると、許可はもらってる、と話を促してくれた。
「新撰組です」
「な、何ですって!?じゃあ、お隣のあなたは……」
「新撰組十番隊組長、原田左之助だ」
「ああ……」
「奥様!」
めまいで倒れかけた奥様を、旦那様が支える。
「そうか」
旦那様はそれだけ言って、あとは何も言わなかった。
「……まあ、あんたが生きてただけいいよ。最近は変な奴らがうろついてるって話も聞くから、てっきり夜に出て行ってそのままやられちまったのかと……」
「変な奴ら?」
「何でも白髪赤目の、化け物みたいな奴だって話さ」
「!」
「まあ、新撰組さんでお世話になってるなら安心ね。迷惑かけるんじゃないよ」
「はい、奥様」
はあああと息を吐いて立ち上がった奥様は、安心しきった顔をしていた。
「新選組でお世話になってるってことは、もうここには戻ってこないんだね?」
「……はい」
「そうかい」
そういうと奥様は二階へ上がっていった。私の部屋があるところだ。
「?」
「あんたの荷物、大したものもないけど持っていきな。それからこれは餞別よ」
奥様は私の数少ない荷物と、少しのお金を持たせてくれた。
「え!?そんな、このお金はいただけません」
「受け取りな。あんたのことはこき使ってばっかりだったけど、もう娘みたいなもんだからね。娘の門出だ、ほんの気持ちくらい素直に受け取っておくれ」
「……」
少し戸惑い、私はそれを受け取った。
「ありがとう、ございます」
そうして私は二人に笑顔で送り出されてしまった。
まさかこんな穏やかに別れることができるなんて……。
「いい人たちだな」
「……ああ」
この世界の人は、もう少し信じてもいいのかもしれない。
「それにしても、白髪赤目って羅刹のことだろう?いまだに逃げてる奴がいるのか?それとも……」
新しく逃げ出した奴がいるのか。
「いや、逃げた奴らはもう全員始末したはずだ。始末する前に目撃された可能性はあるが……」
「……夜の巡察に私も同行していいか、土方に掛け合ってみる」
「だめだ、危険すぎる」
「問題ない。原田、私はその辺にいるか弱い人間の女子じゃないんだ。それに私がいれば羅刹を気配で見つけられるしな」
「……」
「土方が私を信用して同行許可を出すかどうかは別として、私が行ったほうが効率がいいのは確かだろう?」
原田は屯所に着いてもずっと苦い顔をしていた。
その夜。
土方は「隊と離れずに行動するなら許す」と言ってくれた。
実際、羅刹の気配を感じた時に人間と同じように地面を走っていたら遅すぎるが、まあそれも仕方ないだろう。
まだ完全に仲間と認定されてないからな。
「今晩の巡察をする隊は、っと……」
「俺たちだ」
「!原田か。今晩は十番隊なんだな」
「ああ」
「私はいつでも出られるが、もう出るか?」
原田は隊員の様子を少し見て、そうだな、と頷いた。