第一章:新たな始まり
夢小説設定
この小説の夢小説設定日本人とイギリス人のハーフ、という設定ですので、ミドルネーム(名字(日)の部分)が存在します。
名前は日名・英名どちらで設定していただいても構いません。
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それから2,3日原田と一緒に過ごした。
そして、思った通り吸血衝動がやってきた。
時間は夜。原田も近くにはいない。
「っく……」
千鶴の血を吸ってから、少し周期が乱れるかと思ったが、大幅な乱れはなかった。
今回の衝動を血を飲まずに乗り切っても、まだ問題はないだろう。
だが、この先もずっとこの調子で行くわけにはいかない。
なるべく早く、血の入手ルートを確保しなければならない。
生きていくためにも。
「ぁ……ぅっ、はぁ……」
変若水を少し飲んだ影響か、少し理性が弱まっている感覚がある。
次第にこの影響は薄れていくだろうが、人間ばかりのこの屯所で理性が弱まるのは非常に困る。
「ぁぁ、っは、ぐ……」
唇を噛む。
手のひらに爪がくい込み血が滲むほど拳を握りしめ、畳の上に蹲る。
今彼らとの関係を壊すわけにはいかない。
何としても耐えなければ。
「エリィ……?」
「!」
この声は、原田だ。
人間の匂いが近づいてくる。
「っ来るな!!!」
「!」
足が止まる。
そうだ。そのまま引き返せ。
「……吸血衝動か」
「っく……ぁ……」
「エリィ」
「!」
原田は立ち去る気配もなく、むしろこちらに歩み寄ってきた。
「っおい、貴様っ」
「……」
襖を開け、月光を背に原田がそこに立っている。
「何の、つもりだ……!!!」
血の滲んだ手や切れた唇を見て、原田は悲痛な表情になる。
「血を吸えば、楽になるのか」
「っは!?」
原田は丸腰だった。
「ま、さかっ」
私に血を飲めと言うのか。
「俺の血を」
私としては助かる。
だが原田に一体何のメリットがある?
「っ条件は、」
「条件?」
「何が目的だっ!!」
「……そうだな。強いて言うなら、俺をもう少し信頼してほしい」
こいつはバカなのか。
それとも、私から信頼されることで油断させ、いつか寝首を搔くつもりなのか。
「……っは、呆れた奴……」
それでもいい。
こいつが吸っていいと言うなら吸わせてもらおう。
「っう……」
飛びかかりそうになるのを、理性を総動員して抑える。
ゆっくりと原田の首元に口を寄せる。
「……すまない」
「っ!」
牙を立てると、原田は少し震えたが、暴れることもなく、ただ私の背に手を回し、頭を撫でていた。
「……」
飲み終えた後、傷口を舐めてやると、すぐに、修復が始まった。
「もういいのか?」
「ああ。元々そんなに量は必要じゃないんだ」
もらったのは、最低限。
それでも自分の命を繋ぎ止めるのに十分な量だ。
「……痛かっただろう」
「大したことじゃない」
「そうか」
そういえば原田はいつもお腹に包帯を巻いている。
痛みには慣れているのかもしれない。
「それより、手ぇ血が出てるぞ」
「ああ、これくらいならすぐ塞がる。血がついてるだけだ」
「そうなのか……」
「羅刹の回復力を知ってるだろ?それと似たようなものだ」
原田は持っていた手ぬぐいで私の手を取り拭った。
「もう塞がってる……」
「な?心配は無用だ」
「……そうか」
原田はまだ何か言いたげだったが、それ以上は何も言ってこなかった。