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それから夏彦の襲撃があって私と千ちゃんがペアにされるのに、あまり時間はかからなかった。
グループが違うということで支障が出るかと思ったが、誰が内部犯かわからない今、一番安心できる人の傍にいようということになった。
女子が相手を優先して選べたので、私は当然千ちゃんを指名した。
こはるは結賀と、深琴は朔也と、七海は宿吏とペアになった。
あとは遠矢と加賀見、乙丸と室星でペアになる。
空汰はヒヨコに囲まれるということで安全を確保させた。
内部犯は室星だから、精神感応力のある乙丸が彼とペアになったのは良かったかもしれない。もし殺気があれば感じられるだろう。
「よろしくね、千ちゃん」
「よろしくお願いします、まりあさん」
グループとしての仕事は残るかと思いきや、内部犯に襲われておきながらそれどころではないということになり、掃除だけは何人かが交代ですることになった。
畑は結賀が何人かを誘いながらお世話をするらしい。
「うーん、今日は何もすることないね。ちょっと暑いし、水浴びでもする〜?」
千ちゃんが水に入ると生き生きすることは知っている。
「!」
パアッと顔を輝かせる千ちゃん。
「内部犯がきても私が守るから、安心して水浴びしてね。私は泳げないから、足だけ浸かるよ」
私達は泉のほとりに向かうことにした。
「水着持ってる?」
「はい」
「着替えておいで〜。部屋の前で待ってるから」
「すみません、それじゃあ着替えてきます」
部屋の前で立っていると、七海達が通りかかる。
ペアになってからずっと、2人はギスギスしている。
「七海!宿吏!」
「!」
「まりあさん……」
「お前そこで何してんだ?」
「千ちゃんが着替えてくるのを待ってるの。これから泉に行くんだけど、2人も一緒にどう?」
「いや、俺は───」
「宿吏」
「?」
目が、千ちゃんと似ている。
理由なく千ちゃんを避けるその態度。
誰にでも割とキツめに当たるものの、引きこもっている千ちゃんには何も言わなかったし、強く言った場面もない。
彼が千ちゃんの兄であることはほぼ明らか。
千ちゃんが記憶を失っているのは、たぶん七海の能力。
2人がギスギスしている原因はそれだな。
「2人ともすることなくて手持ち無沙汰なんじゃない?一緒に行こうよ〜」
「……」
「お待たせしました……しゅ、宿吏さん……!?」
サッと私の後ろに隠れる千ちゃん。
それを見て、宿吏は落ち込む。
「大丈夫だよ、宿吏は悪人じゃないし。怖い人じゃないから」
「でも……」
「私が一緒にいるから。ね?」
「……はい」
「じゃあ、行こっか〜」
2人を強引に泉に連れいていく。
2人を気にしながらも、千ちゃんは水に入って気持ちよさそうに泳いでいる。
「千ちゃんが溺れかけた時は宿吏、お願いね〜」
「は?」
「私泳げないから」
「ったく、そういうことかよ……」
本当は、何かをきっかけに千ちゃんが思い出したらいいなと思って誘ったんだけど、そういうことにするか。
「ごめんね〜。敵からは守ってあげられるんだけど、水害からはちょっと……」
七海は宿吏と一緒にいるのが気まずいのか、私を挟んで反対側に座る。
「お前はなんでそんなにあいつと仲が良いんだ?」
「千ちゃん?前も話したけど、あの子の村に行ったことがあって。うーん、色々あって?千ちゃんに村の外に家を手配したこととかもあるの。その関係かな〜」
「家!?」
「そう。知り合いが貸し出してる家に千ちゃんを住まわせてあげたりしたの。……まあ、逆効果だったみたいなんだけど」
「……そうか」
「宿吏は千ちゃんと知り合いなの?」
「は?なんでそうなるんだよ」
「なんか意識してる感じだから〜」
隣で七海が心配そうに見ている。
「そんなんじゃねえよ……」
「そう?」
千ちゃんはしばらく水の中を漂っていたけど、さすがに気まずくなってきたのか、こっちへ寄ってきた。
「あの……」
「あ、ごめん千ちゃん!こんな見られながら泳ぐの嫌だよね〜。じゃあ!」
「うおっ!?」
私は宿吏の服を剥がし、泉に突き落とした。
泳げるのは知ってるし。
「っぷは、おい!!」
「さすがに七海の服を剥がすわけにはいかないし〜。千ちゃんも、これを機に宿吏のことよく知ってみて。何かひどいことしたら私がシメてあげるから!」
ね、と笑えば、千ちゃんは渋々歩み寄ってくれた。
「宿吏も、変に意識してひどいこと言わないでよ〜」
「なっ、おい!」
「じゃあ七海、少し2人きりにしてあげよ〜」
「え、でも、」
「いいからいいから。私たちがいないほうが話しやすいこともあるかもしれないし?」
さあさあ、と私は七海の背中を押してその場を離れた。