あなたのためなら、なんだって
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それから、ノルンでの出来事について聞いた。
怪しげな新聞の話も。
「その新聞、持ってる?」
「いえ……。机の上に置いてあったのを見ただけです」
十中八九夏彦のお仲間だろう。たぶん、あの室星ロンとかいう奴。
能力者名簿に載ってなかった。
「その新聞は嘘。見てしまったら、もう頭から離れないかもしれないけど……。大丈夫、ここの人達と仲良くなっても争うことになったりしないよ」
千ちゃんの手を握って、訴えるように、気持ちが伝わるように言う。
「そう、なんですね」
きっと、千ちゃんの中に根付いてしまった意識を覆すことは、難しい。
しかも、そう思って彼らと距離を置いてきたのに、今更戻る方法もわからないだろう。
「もしそうなったとしても、今度こそ私が千ちゃんを守ってみせるから。行商はもうやめることにしたの」
「そんな……」
「千ちゃんのためっていうのは後付けで、元からやめるつもりだったから気にしないで」
少し申し訳なさそうな顔をした千ちゃんに笑いかける。
『世界』側の人間であることは伝えていない。
千ちゃんに恨まれるかもしれない怖さもあるが、『世界』の人間であることを隠していた方が守りやすいというのもある。
基本的に『世界』側の人間は能力者に関わってはいけないから。
工作員であることもあって、『世界』の科学者の中でも私の存在を知っている人は少ない。かなり上の位の人だけだ。
だからこそ、こうして自由に動けている。
このノルンにもヒヨコという体で『世界』の誰かが監視をしている。私が『世界』の人間だと知らないからこそ、私はノルンに乗り、妨害を受けずに千ちゃんと一緒に居られる。
「お金に困ったら、またいつでも始めたらいいし!」
「すごいですね、まりあさん」
「そう言ってもらえるとすごく嬉しい。でも私のコレは商売だから。千ちゃんみたいに無償で人を助けてるわけじゃないの。だからね、私は千ちゃんの方がすごいと思うな〜」
「そんなことないです。僕は……」
「ん〜?」
むぃ、と千ちゃんの頬をつまむ。
「にゃいすりゅんでぅか」
「褒められたら素直に『ありがとう』でいいんだよ〜」
千ちゃんの頬を両手で包む。
「ね!」
「……ありがとう、ございます」
「ん!いい子〜」
千ちゃんの頭を撫でる。
気持ちがいいのか、目を閉じている千ちゃん。可愛い。
「私、久我深琴と同じ部屋だから。何かあったらいつでも来て。何かなくても、来ていいからね」
「……はい」
もう千ちゃんに辛い思いはさせない。そう思って私は千ちゃんと別れた。
「あ、戻ってきた。おかえりなさい」
「ただいま〜」
部屋に入ると、私の荷物と自分の荷物を前に仁王立ちしている久我深琴の姿があった。
「どうしたの?」
「あなたが帰ってきてから荷物を開けようと思ってたのよ。あなたは上と下、どちらで寝たい?」
「あ〜どっちでもいいよ。上でも下でも、寝られれば」
「そう。じゃあ私が上を使わせてもらうわね」
「うん」
「ええと、それから。あなたのこと、何て呼んだらいいかしら」
「私?」
「そうよ」
「うーん、何でもいいよ〜。好きに呼んで」
「じゃあ、まりあね」
「はーい。じゃあ私は深琴って呼ぶね」
「ええ。よろしくね」
「うん!よろしく〜」
後の2人は、それぞれ、こはる、七海、と呼ぶことにした。
彼女達は、まりあさん、西城さんと呼ぶらしい。
「よろしくね!」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
握手をして、挨拶を交わす。
ここから、私の新しい生活が始まるのだ。