あなたのためなら、なんだって
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「お買い上げありがとうございます〜」
頭を上げ、さて、と品物を片付け始める。
そろそろ私の休暇も終わる。
わざわざ『世界』と連絡を取るのも面倒だし、今頃ノルンが空を漂っているはずだから、適当に拾ってもらおうかな。
彼が快適に過ごせているかも確認したい。
「ああでも、能力者しか乗れないんだっけ……」
それなら、と荷物を抱えて近くの森へ向かう。
しばらく進んでいくと、この時代に存在するはずのない戦闘機が止まっている。
「大当たり〜!」
嬉しくなって大きな声を出すと、すぐ耳の横を銃弾が過ぎていく。
「誰だ」
「物騒だなあ。私のこと覚えてないの?夏彦」
「……お前は……」
私を見た彼は、銃を下げ、大きなため息を吐く。
「……何をしにきた、まりあ」
「久しぶり〜!」
「何をしにきたと聞いている」
「もちろん、お願い事をしにきたのよ」
それを聞いて、夏彦は心底嫌そうな顔をする。
「俺の居場所を『世界』に報告しないことと取引か?」
「察しが良くて助かる〜」
で?と夏彦は私に話の続きを促す。
「私をノルンに乗せてほしいの」
「……は?」
「お仲間を乗せてるのは調査済みよ。これも『世界』には報告してないけど」
「なるほど、お前はどこまでも知っているということか」
「んー、ある程度はね」
夏彦は少し考える素振りをして、大きなため息とともに了承した。
「お前は、約束だけは守る女だからな。いいだろう」
夏彦としても、今『世界』に居場所がバレるのはまずいだろう。
そう踏んで頼ってよかった。
「一筆書いた方がいいかと思ったけど、口約束でいいの?」
「それなら念のため書け」
「はーい」
荷物の中から書類を引っ張り出し、スラスラと契約書を書く。
最後に私の署名をして捺印。
内容を夏彦に確認してもらい、夏彦の署名をもらって契約成立だ。
「じゃあ、準備ができたらこの子を飛ばして。予定通りに進んでいるなら、あと1週間ほどでこの辺りの上空を通るはずよ。私は村の方にいるから」
そう言って、私の伝書鳩を渡す。
夏彦が頷いたのを確認し、私は再び村に戻った。
「あ、まりあちゃん!今日はもう店仕舞いかねえ?」
「おばさま!うーん、さっき片付けちゃったんですけど……おばさまにはいつもお世話になってるので、特別に。今日は何をお求めですか?」
それから4日ほど経った頃、夏彦に渡した鳩が私の元へ来た。
『ノルンへの手続きは済んだ。あとは好きにしろ』
鳩を籠の中に戻し、手早く荷物をまとめて宿を出る。
「まりあちゃん、もう行くんか」
「寂しくなるのぅ」
「またいつでも遊びに来てね!」
「お世話になりました〜!今後とも西城商会をどうぞご贔屓に!」
荷物を持って、意気揚々と草原へ向かって歩く。
私は本来の乗客じゃないから、ノルンに乗りに行かなくても『世界』の手の者は迎えに来ない。
だから、ノルンが来た時にきちんと乗れるように草原で待っていないと、私を乗せないまま発ってしまう可能性があるのだ。
「あと3日くらいかな……。何かトラブルがあれば、もう少し日にちは前後するだろうけど」
テントを張って、野宿の用意をする。
少し歩いたところに泉があるから、お風呂はそこでどうにかすればいい。
食料は売れ残りの生鮮品があるから、それを消費しよう。
あとは、と考えていながら空を望遠鏡で見ていると、遠くに球体が見えた。
「あの距離なら、明後日には来そうね」
見通しを立てて、食料品の消費率を計算する。
「千ちゃん、元気かな」
テントの中に柔らかな毛布を敷いて、私は眠りについた。