あなたのためなら、なんだって
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案の定、史狼が現れたのは夏彦がいるところだった。
『結賀史狼と交戦中』
「向かってまーす」
『俺は他の人形を倒してくるよ』
室星は島内の人形を殲滅しに向かった。
私と夏彦で結賀親子をどうにかしないと。
「お待たせー……って、結賀?」
「父さんを殺すな!」
「そこを退け、結賀駆!」
「あら……」
夏彦は変に情があるから、関係のない結賀駆を撃てない。
それをいいことに、史狼は駆を盾にする。
そんなこととは知らずに父親を庇い続ける駆。
面倒なことになっている。
「うーん、駆」
「!まりあは知っていたんだね」
「そうよ。だから来ないでって言ったのに」
「父さんを、殺す気でいたのか」
「……面倒だなあ」
駆は完全に我を失っているように見える。
洗脳だろう。
あの耳飾り、外しておけばよかった。
「おい、一帯を爆破とかはやめろよ?」
夏彦が私を見て真剣に言う。
「え〜?夏彦の中の私ってそんな感じなの!?さすがにそんなことしないよ〜」
ひとまず駆の右肩に銃弾を当てる。
「っ!」
「……おい……」
夏彦が呆れた顔で私を見る。
「なあに?だって駆がそこにいる限り、史狼の捕縛は無理でしょ?」
「まりあ……」
「ねえ駆。私たちはできることなら史狼を殺したくないんだよ。でも駆がそこにいて、史狼が駆を盾にしてると、うっかり殺しちゃうかもしれないの。だからそこ、退いてくれないかな?」
左肩に銃口を向ける。
「待機してって言ったのを無視したのは駆だし、悪いのは駆だよね?」
「っく……」
「退いてくれる気になった?ああ、それか、駆が説得してくれたらいいよ」
「説得?」
「そう。史狼に、ここから早急に立ち去って、二度とここに来ないように」
そんな要求を史狼が受け入れるとは思えないけれど。
「父さん!」
「何を言い出すんだ駆?お前が今することは私の説得などではない。奴らを排除することだ」
「そんな……!」
「やはり中途半端だったな……」
史狼がぶつぶつと呟く。
やはり撃つしかないかと銃口を駆に向けたときだった。
「や、やめてくださいまりあさん……!」
「えっ、千ちゃん!?」
史狼はその隙を見逃さない。
すぐさま発砲音が聞こえ、私は慌てて千ちゃんを庇った。
「あぶな……千ちゃん、怪我してない!?」
「は、はい……」
「危ないから中で待っててって言ったのに……!」
「でも、これ以上まりあさんが誤解されるようなことになって欲しくないんです……!」
「うーん……夏彦!」
「なんだ!」
「時間稼いで」
「……わかった。危ないことはするなよ」
私は千ちゃんを木陰に連れて行く。
そして、カバンの中に入っている予備の銃を渡した。
「本当はこんなの握らせたくないんだけど……。変な人形が来たら、そいつに向けてここを押して」
「えっ!?」
「大丈夫!そんなに難しくないから。そして、これはね、同じように見えるけど、殺すためじゃなくて相手を眠らせるために使うものなのね。よく覚えていて」
「は、はい?」
「千ちゃんの望みを叶えて、私の目的も達成するの!」
「!」
千ちゃんは私が誤解されるようなことをしてほしくないと言った。
それはつまり、内部犯だとか、誰かを殺したとか、そういう風に思われることを言っているのだろう。
それなら。
「見てて〜」
私は夏彦の横に並ぶ。
「史狼の方は頼んだ」
「ああ!」
私は正面から駆に向かって行く。本物の銃口を向けて。
「まりあ!」
思った通り、駆は能力で行手を阻もうとする。
私は銃でそれらを撃ち退け、麻酔銃を構えた。
「とった!!」
間髪入れずにもう片方の手で麻酔銃を撃つ。
「っ!」
駆は最後の力を振り絞って、私と夏彦の足にツタを絡め、倒れた。
「使えんな」
史狼はそう言って駆に銃口を向ける。
「夏彦!」
隠れたまま史狼に向かっていた夏彦が、すぐさまその手を撃ち抜いた。
「くっ!」
間一髪、史狼は銃を落とす。
「そこまで!」
その声に振り向くと、『世界』の戦闘部隊が私たちを囲んでいた。
「西城まりあ、ご苦労様でした。あとは我々が引き受けます」
気づいた時には、史狼はもう倒れていた。
洗脳か、麻酔か。
定かではないが、捕縛したのは明らかだった。
「まりあさん、この方は……」
「ああ、『世界』側の人だよ〜。大丈夫、味方だからね」
不安そうな顔をする千ちゃんを宥め、私は夏彦が逃亡したことを確認する。
よかった、ここでうっかり捕まってしまわなくて。
「それ以上の接触は禁止です、西城まりあ」
「……はあい」
私は千ちゃんから距離をとる。
「まりあさん……?」
「ごめんね千ちゃん。……私も、こっち側なの」