あなたのためなら、なんだって
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それからの数日間、私はずっとノルンで見張りをした。
もう私が色々持っていることはバレてしまったから、余すことなく道具を存分に使って。
「この船の中を動き回ってるヒヨコに探知できる機械を取り付けたから、見かけ上はあんまり変化はないはず。何か嫌なこととか、考慮してほしいことがあったら言ってね、ある程度は対処できるから」
みんなは機械や兵器に馴染みがない。
だからあんまり派手に使うと、精神衛生上良くないかもしれない。
そう思ってできる限り小型で目につかない、性能が良いものを選んで使用した。
「それから、もしかしたら探知に漏れがあるかもしれないから、もし気になることがあったら、些細なことでも良いからなんでも言ってほしい」
「……」
誰も何も言わない。
どう反応していいのかわからないのだろう。
襲撃されてパニックになっていたところに、またイレギュラーが飛び込んできて、頭が追いついてないのかもしれない。
加賀見がスッと手を挙げる。
「!なに?加賀見」
「あの男がそんなに危ない奴なら、お嬢さんたちにも伝えて早くここを離れた方がいいんじゃないの?」
「そうだよね〜。それも考えたんだけど……」
私は史狼に襲撃を受けてからすぐに遠矢と深琴たちに連絡をした。
しかし困ったもので、遠矢は『世界』軍との手続きで立ち去るにしても数日はかかると言うし、深琴は街の人たちを見捨てて行けないと言うし、何ならノルンにも結界を張りに行くとか言い出す始末で。
あの子がそんな能力負荷に耐えられるはずがない。
「なるほどね……」
「そういうわけだから、遠矢が手続きを終えるまでの数日は私がこのノルンとみんなを守ることになったの」
どことなく私を信用しきれていないみんなの瞳。
千ちゃんもまだ戸惑っているみたいだ。
「乙丸」
「!」
「私から、悪意や敵意、何か企んでいるような感情を感じる?」
「それは……」
「正直に答えて」
「……全く感じない。でも、まだ何か隠してる感じがする」
『世界』の工作員であることを隠しているから、あながち間違いではない。
乙丸が「全く」と断言してくれたことで、みんなに対する誠意の証明にはなっただろうか。
「当たり〜。隠してることはまだある。これはいずれわかることだけど、今はまだ言えないの。でも乙丸が言う通り、悪意も敵意も、何か企みがあるわけでもないよ」
私は一人一人の目を見ながら、語りかけるように話す。
「不安にさせてごめん、信じられるような存在じゃなくてごめん。でもみんなに私を信じてもらえないと、いざって時に守れないかもしれない。だからお願い、この数日間だけでもいいから私を信じてほしい」
頭を下げる。
私の想いが、みんなに、千ちゃんに、届くように。
「……」
沈黙が流れる。
「……まあ、まりあちゃんがそういうことをしそうな子には見えないしね」
「まりあさんのこと、信じていいと思う」
加賀見と七海がそう言ってくれた。
「まりあの千里に対する態度は間違いなく本物だしな!」
「ぼ、僕ですか……?」
突然の指名にギョッとする千ちゃん。
「そうだぞ、千里。まりあは千里のこと大好きだからな!」
「!」
「うん。そうだよ〜、私千ちゃんのこと大好き。だから守りたいし、助けたい。もちろんみんなもね」
乙丸のおかげで、ずいぶんと空気が和んだ。
心の中で深く感謝しながら、私はどうにかみんなと信頼関係を築けたようだった。
「なるべく早くここから離れられるように遠矢にも言っとくから」
結局そこを離れられたのは、1週間後だった。