適切な距離感
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翌日、私は冥土の羊に行くかどうか悩んでいた。
トーマくんがいついるのかわからないから、今顔を合わせるのは気まずいような。
イッキに聞いたら確実にからかわれるし、ケンちゃんはプライバシー云々で教えてくれないだろう。
でも逆に、トーマくんのシフトがわからないということは、私が冥土の羊に通わないと、返事を聞けないということだ。
「……」
返事は早めに聞いてしまった方がいいかも。
……怖いけど。
「……………よし」
重い腰を上げて、私は家を出た。
昨日トーマくんに送ってもらったカフェの前を通ると、私を呼ぶ声がする。
「リンさん!」
「?───トーマくん!?」
冥土の羊の前で深呼吸して、心の準備をする予定だった。
「よかった、すれ違いにならなくて。ここにいたら、リンさんが通りかかるかと思って」
こんなに早く出会ってしまうだなんて思ってなかった!
「あ、え、こ、こんにちは。良い天気ね」
「そうですね……って、リンさん大丈夫ですか?顔真っ赤ですけど……」
「えっ、ええ。ごめんなさい、昨日の今日で動揺してて……」
「あ……そうですよね」
トーマくんの頬も、少し赤く染まる。
目を逸らしながら、バツが悪そうに頭を掻く。
「昨日のお返事がしたくて待ってたんです」
「!」
「俺、」
「ごめんちょっと待って。ちょっと、深呼吸するから」
トーマくんは呆れながらも少し時間をくれた。
恥ずかしいので、後ろを向いて深呼吸をする。
「……どうぞ」
「俺も、リンさんのことが好きです」
「………えっ」
「だから、その、よろしくお願いします」
状況が飲み込めなくて、手を口に当てたまま固まってしまう。
「リンさん?」
「……………………………あっ、ごめんなさい、驚いてしまって」
「昨日帰られたから、もう返事を聞いてもらえないかと思ってました」
「え!?そんなことしな───いえ、私の態度のせいね。ごめんね、誤解させてしまって……。その、あまり自信がなかったものだから、いたたまれなくなってしまって……」
「大丈夫です。何となく、今の反応見てわかったので」
「お恥ずかしい限りです……」
顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
「あの、こんなこと言うのはあれなんだけど……」
「はい?」
「私のこと、呼び捨てにしてほしい……」
「!」
恋人だし。
さん付けはちょっと、他人行儀な気が……するし。
「……リン」
ひゅっと喉が鳴る。
「っげほ、げほっ」
「大丈夫ですか!?」
「ごめっげほ、ごめんなさい、んんっ、自分で言っておいて……」
思ったよりインパクトがあって、まさかのむせてしまった。
「呼び捨てにするの、時々にしましょうか」
「……そうね。私から言ったのにごめんなさい。小出しにしてもらえると助かるわ」
「はい」
ふふ、と笑い合う。
「今日はこれから何かご予定が?」
「ううん、冥土の羊に、トーマくんに会いに行こうと思ってたの」
「それなら、リンさんさえ良ければデートに行きませんか?」
「デ……ええ!ぜひ」
トーマくんの誘いで、私たちは早速デートに行くことになった。