適切な距離感
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買い物が終わって、少し希望も込めて冥土の羊の前を通る。
すると、ちょうど裏口からトーマくんが出てきた。
「!」
これは、運命かもしれない。
「!こんばんは、リンさん」
私に気づいたトーマくんがにこやかに微笑んで寄ってくる。
「こんばんは、トーマくん。お昼はどうも」
「今お帰りですか?」
私の手にある買い物袋を見て言う。
「ええ。トーマくんも?」
「はい。送りますよ」
自然と私の前に手を出してくるトーマくん。
うっかり流れるように荷物を渡してしまいそうになる。
「いやいやいや。これくらい自分で持てるわよ」
「じゃあ1つ持たせてください」
うーんと悩んだ結果、軽いものばかりが入った袋を渡した。
あまり断りすぎてもな……と思った結果だ。
「ごめんね」
「いえ。俺が持ちたくて持ってるだけですから」
この間、帰り道に話した話の続きや、色んな話題を話しながら歩いた。
前と同じようにカフェのところで立ち止まる。
「じゃあ、また」
「あっ……」
荷物を手渡して立ち去ろうとするトーマくんに、ノープランのまま声をかけそうになる。
私の様子に気づいたトーマくんが歩みを止め、振り返ってくれた。
「?何か言いました?」
「あ、えっと……」
今まで、どんな風にやり取りをしていただろう。
どんな風に、告白をしていただろう。
一気に頭が真っ白になってどう切り出して良いかわからなくなる。
「……」
深呼吸をする。
「リンさん?」
「あのね、トーマくん」
「はい」
真剣に見つめると、トーマくんも真剣に話を聞いてくれる。
「私と、お付き合いしてください」
頭を下げる。トーマくんの表情はわからない。
しばらく間が空いて、少し不安になって顔を上げると、トーマくんはびっくりした顔で固まっていた。
「あの……」
「あ、すみません……。突然のことで驚いてしまって」
「そ、そうよね、ごめんねいきなり。あのね、好きかどうかわからないとか、そういう曖昧な感じでも良いの。お試し期間くらいに思って。イッキに倣って、3ヶ月くらいからどうかな?もし長いようだったら1ヶ月とかでも───」
動揺して、畳み掛けるように話してしまう。
「リンさん」
「は、はい」
「落ち着いてください」
トーマくんに諭され、もう一度深呼吸する。
「あの、返事は今度でいいから。それじゃあっ」
「リンさん!?」
トーマくんの声を振り切って、私は家に帰ってしまった。
「ただいま……」
母さんはまだ帰っていなかった。
買い物袋を整理して、お茶を淹れる。
「はぁぁぁ……」
あんな告白の仕方はなかったなあ。
しかも冷静に考えると、出会ってあんまり日も経ってないのに告白は早かったかな……。
考えれば考えるほど、まずった気がする。
「ただいま〜」
母さんが帰ってきたところで考えるのをやめ、私はご飯を作り始めた。