適切な距離感
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ってわけで、未だにそのことを引きずって日焼け対策に精を出してるの」
「……中学生くらいの頃に言われたことって、意外と深く突き刺さりますよね」
「好きな相手からとかだと尚更ね」
トーマくんは私の話を決して笑ったりせず、真剣に聞いてくれた。
「色々詮索してすみませんでした」
「ううん。恋人なんだから欲張って」
「……ありがとうございます」
そろそろ帰ろうか、と言って私たちはカフェを出た。
その日は初めてトーマくんに家まで送ってもらった。
「あら、」
私たちが家に着く頃、ちょうど近所のケンちゃんも帰ってきたところだった。
「おかえり、ケンちゃん」
「ああ、リンも今帰りか?」
ケンちゃんはトーマくんを見て怪訝な顔になる。
「付き合ってるの」
「……なるほど。私の記憶違いでなければ、君は昨日までは彼と付き合っていなかったはずだが?」
「そうよ。今日お付き合いを始めたの」
「そうか、それは何よりだな。また別れないことを祈っているよ」
「ありがとう」
「……」
では、とケンちゃんは家に入っていった。
「ケンちゃんなりの祝福よ。あんまり気にしないで」
「そうですね」
ケンちゃんと会ったことで少し変な空気になってしまったけれど、そろそろトーマくんとお別れの時間だ。
「今日はありがとう。楽しかったわ」
「よかった。俺も楽しかったです」
「……それじゃあ、」
「リンさん」
別れを告げて家に入ろうとする私の腕を、トーマくんが引っぱる。
「!」
振り返った私の頬に、トーマくんの唇が触れた。
「おやすみなさい」
「……お、おやすみ……」
ポカンとする私を家の中に送り、トーマくんは爽やかに帰っていった。
「……」
家に入ってからも、しばらく我に返れず、玄関に座り込んでいた。
「あら、リンちゃん?」
「!母さん……、おかえりなさい」
「ただいまあ。どうしたの?こんなところに座り込んで」
「いや、ちょっと……衝撃を噛み締めていたというか」
「衝撃?まあ、何かあったのね?早く上がって、お話聞かせてちょうだい」
母さんは珍しくウキウキした足取りで上がっていく。
私もそれに倣ってようやく家に上がった。
「それで?新しい彼氏さん?」
「鋭いね……」
「リンちゃんが感情を左右されるのってだいたい恋人のことじゃない」
「そうだった?」
それから私は母さんに今日の出来事を話した。
「良い日になったわね」
「うん」
「今日は良い夢見られそう?」
「そうね。早く寝ることにするわ」
「先にお風呂入っちゃいなさい」
言われるままにお風呂に入って、その日は早めにベッドに入った。
トーマくんに今日のお礼メールを送ろうかと思ったけど、面倒な女になりそうな予感がしたからやめた。
思ったより、私は浮かれているのかもしれない。
「付き合って初日だし……」
自分に自分で言い訳をしながら、スキンケアをして眠った。