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星のもと

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到着した場所は、極寒の地だった。

「防寒具はありますけれど、寒かったら言ってくださいましね。対策を考えますわ」

「俺は問題ない。お前が寒いんじゃないのか」

「ありがとうございます、わたくしも大丈夫ですわ。研究室に検証結果を伝えなくてはいけませんし」

「検証結果?」

「ええ。今後大寒波が来ても、気候が突如変化しても耐えられるように、民に配るための防寒具や避暑具を開発していますの。これもその一環ですのよ」

わたくしがくるりと回転してみせると、夏彦は不機嫌そうに「そうか」と言った。
最近、夏彦の不機嫌ポイントがよくわからない。
科学者として、仕組みとか気にならないのかしら。

「それで、ここへは何をしにきたんだ」

「目的はアレの確認ですわ」

わたくしが指差す方向には、大きな施設がある。
間違いない、『世界』のデータのバックアップを管理している施設のうちの一つだ。

「あれは……?」

夏彦は知らないのか、と思いながら、説明する。

「あれは、『世界』が情報のバックアップを保存している施設ですわ。表向きは『世界』が各国に構える拠点ということになっていますが、スタッフ数名と機械兵器で管理している施設ですの」

「なぜお前がそんなことを知っている?」

「一条家の先祖は、『世界』の研究者ですもの。勇気ある方が情報を持ち帰り、それが受け継がれているのですわ」

「……」

夏彦はしばらく施設を見つめていた。

「さあ、確認できましたし、機内へ戻りましょうか」

「帰るのか?」

「いいえ、今日はもう遅いですから、今日は一泊いたします。幸い、隠れられそうな森もありますし」

「そうか」

夏彦はもう一度施設に視線を向け、ジェット機の中に戻っていった。
夏彦が戻ったのを確認し、わたくしは内密に連れてきていた兵士達を呼ぶ。

「皆さん、もう出てきていただいて構いませんよ」

「はっ」

わたくしの声を聞いて、十数名の兵士達が茂みから出てくる。

「作戦は出発前にお伝えした通り実行いたします。今回の目的は襲撃ではなく調査です。残虐な行為を目撃したり信じがたい情報を得ても、絶対に『世界』に歯向かうような行動はしないように心がけてください」

「はい」

「おおよその内部構造がわかればいいので、決して無茶はしないでくださいませ。危険を感じたらすぐに引き返すこと。よろしくて?」

「心得ております」

「では今夜、決行いたします。わたくしの指示があるまでは、ゆっくりしていてください」

「はっ」

兵士達が茂みに戻っていったのを確認し、わたくしもジェット機に戻ると、ちょうどドアのところで夏彦と鉢合わせた。

「あら、夏彦。どうされましたの?」

「いや、お前の戻りが遅いから様子を見に出ようとしただけだ」

聞かれただろうか。

「まあ、それは申し訳ありませんでした。少し考え事をしていただけですわ」

「そうか」

今回の作戦に夏彦を巻き込むつもりはない。
戦をするわけではないし、力を借りるまでもない。

「夕食にいたしましょう」

「ああ」

今回の作戦は、一条家の悲願達成のため、バックアップ施設の内部調査をすること。
中に攻め入るためには、中の構造をわかっておかなければならない。
施設にハッキングして地図を抜き取ることも可能ではあるが、それが本物であるという証拠はない。
こういう時、機械に頼りきれないと、まだ自分の中の意識が時代についていけていないのだということを実感する。

「#名前#」

「?はい」

「あまり危ないことはするな」

「……」

やはり、先ほどのやりとりを聞かれていたのだろうか。
脈絡なくこういうことを言われるということは……。

「ええ、大丈夫ですわ。……といいましても、戦場に出ていくことがある時点で、危ないことをしないという保証はできませんわね」

わたくしが苦笑すると、夏彦は何とも言えない複雑そうな顔をした。
たぶん夏彦も、口では危ないことをするなと言いつつ、わたくしがそれを守ることが難しい立場にいることを理解している。
それでも口に出さずにはいられなかった、ということだろう。

「けれど、夏彦がそのように思っていることは、胸に留めておきますわ」

わたくしが微笑むと、夏彦は「それで十分だ」というように目を伏せた。

「ああ、そうですわ、今夜の寝るところですけれど、」

話しながら棚から毛布を出してくる。

「この機体には、ベッドは積まれていませんの。ですから、来る際に座っていた椅子を倒して眠る形になりますわ」

「わかった」

「ゆっくり休めないかもしれませんけれど……」

「問題ない」

わたくしが毛布を渡すと、夏彦は何かに気づいたような顔をする。

「……これも開発したものか?」

「!ええ、そうですわ!さすがですわね、夏彦!おわかりいただけます?!」

気づいてくれたことが嬉しくて、ついテンションが上がってしまう。
勢い余って夏彦の手を握ってしまったことにハッとし、慌てて離れた。

「も、申し訳ありません……!このような、はしたない……」

「っふ……」

堪えきれなくなったように、ククッと夏彦が笑う。

「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

恥ずかしくなって顔を覆う。

「……顔を見せろ」

夏彦がからかいを含む声色で言う。

「い、嫌ですわ」

「……」

夏彦の手が、わたくしの手に触れる。
恐る恐る顔を出すも、恥ずかしくて目を合わせられない。
顔が熱を帯びて、首まで赤いだろうことが自分でもわかる。

「可愛いな、#名前#」

夏彦の手が頬に触れる。
驚いて目線を上げると、夏彦が見たこともないくらい優しい目でわたくしを見つめていた。

「夏、彦……」

「#名前#、」

夏彦が近づいてくる。
目をギュッと瞑ると、唇に柔らかいものが触れた。

「ん……」

離れたと思って目を開くと、まだ夏彦の顔が近い。

「!んっ……」

驚いていると、もう一度夏彦にキスされる。
夏彦、睫毛長いなあなんて思いながら、また目を閉じる。

「……」

ゆっくりと離れていった夏彦が、わたくしを見て微笑む。
わたくしを微笑み返すと、今度は抱きしめられた。

「ふふ……」

少し笑ってしまいながら、抱きしめ返す。

「?」

「いいえ、何でもありませんわ」

夏彦の前で、どんどん気を抜いてしまっている自分がいる。
前のわたくしなら、どんなに興奮しても勢いで手を握ってしまったり、声が大きくなったりすることはなかったはず。
けれど今、キスされて、抱きしめられて、温もりを感じている。

「そろそろ眠りましょうか」

ああ、なんて愚かなわたくし。

「そうだな」

別々の椅子に座り、背もたれを倒す。

「おやすみなさいませ、夏彦」

「ああ、おやすみ」

こんな時になって、人の温もりなど知ってしまって。
わたくしにはもう、あまり時間が残されていないのに。
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