星のもと
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きっちり30分後、わたくしは目を覚ました。
ベッド脇の椅子では、夏彦が本を読んでいる。
「退屈ではありませんでした?」
体を起こしながら言うと、気づいた夏彦が支えてくれる。
「やはりまだ熱が、」
「これくらい何ともありませんわ。兵士達が戦っているのに、わたくしばかりこのようなところで休んでいるわけにはいきませんもの」
「……」
ありがとうございます、と礼を言って、わたくしは虎雄を呼び出す。
「何か変わったことはありませんでした?」
「特には。それから、こちらが先程のパイロットの情報になります」
「ありがとうございます。ではわたくしは玉座の間に戻りますわ。夏彦、付き合ってくださってありがとうございました。何か不便がありましたら、いつでもわたくしのところへいらしてくださいませね」
「…………ああ」
夏彦はずっと不機嫌だった。
30分、彼にとっては無駄な時間だったろう。
もうこのような迷惑はかけまいと、強く決心した。
「おかえりなさいませ、陛下」
「ええ、見張りありがとうございます。何事もありませんでしたか?」
「チーム長が新しく兵器を作るそうで、材料のことでご相談があると先程こちらに来ておりました。それから西から連絡があり……」
それからいくつかの連絡事項を受け、一通り指示を出した。
「引き続きよろしくお願い致しますね」
「はっ」
材料。
これもまた大きな問題ではある。
なるべく民を戦争に関わらせず、肉体労働を強いず、という思いでやっていると、万年人員不足なのだ。
『世界』と敵対している以上、他地域からの支援は望めない。
つまり、領地内で自給自足になる。
だがそれも、これだけ戦争を続けていれば、底を突くのは時間の問題だ。
別の材料で作れるように工夫したところで、強度を落としてしまったり、戦場での危険に繋がる可能性も否定できない。
国のためにと志願してくれた兵士達を、粗悪品などに乗せるわけにはいかない。
「女皇陛下、拝謁致します」
「何かありましたか、三条?」
「僕ですよ、小百合様」
「チーム長ですか!直接お会いするのはお久しぶりですわね」
「そうですね。小百合様……少し顔色が悪いですか?」
「気のせいではなくて?……それより、材料の件でしたよね。こちらへ」
それからチーム長と予算や材料について話を詰め始める。
「北から材料をいただけませんかね?」
「そうですわね。そこが1番有力ですけれど、今ほとんどの人員が南と北東に割かれています。北からも材料を調達しようとすると、どこから人員を捻出するか……」
「南からの材料は全て旧式に使っています。南からはもう撤収させてもよろしいのでは?」
「新しいものが量産されるまでに時間がかかりますわ。それまでは旧式で賄いませんと……」
「女皇陛下!」
「どうされまして?」
「申し上げます!北方上空に戦闘機が2機、陸からはおよそ千の歩兵が押し寄せてきています!」
「歩兵!?今更どうしてそのような古典的な……」
「それが、『世界』のものと思われる戦車等は引き上げ始めていると北方から報告を受けました!それと同時に、東方では戦車が増え始めていると……」
「一点集中で突破する気でしょう。各方面には迎撃の指示を。南東を移動中の軍があったはずですから、東の援護に回るように通達してください。ただし、これまで通り命乞いをするものは捕らえてこちらへ輸送するようにお願い致します」
「はっ!」
このままこちらの戦車で迎撃すれば、陸地では確実に虐殺のような光景になる。
上空の戦闘機は、おそらく歩兵を安心させるための役割を担っているだけ。
映像を見るに、攻撃に特化したものではない。
民を捨て駒のように扱うなど、信じられない戦法だ。
「わたくしは北方へ向かいます。志願兵達は虐殺をしたくて志願してくださったわけではありませんから」
「小百合様、あまりにも危険ではありませんか?」
「大丈夫ですわ。虎雄、留守を頼みます」
「はい」
「小百合様!」
「申し訳ありません、チーム長。新兵器の材料の件は会計の方に話を通しておきますから、そちらで十分に詰めてください。……わたくしは、必ずここへ戻ってきますわ」
「……お気をつけて」
わたくしはチーム長に微笑み、屋敷を後にした。