第2章
夢小説設定
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それから数日、私はイッキ先輩とシフトが被った時は、なるべくバレないように彼を観察するようにした。
たぶんバレているけれど、何も言ってこない。
慣れているからなのか、面倒がられているからなのか、どちらかだと思う。
それでも、観察している中で、やはりイッキ先輩が悩んでいる様子はわかった。
もうストーカーの域だけれど、ため息の回数とか、目を伏せる秒数とか、そういうデータを集めれば、何かに悩んでいるであろうことはわかる。
私が、何かイッキ先輩の力になれたら。
イッキ先輩の悩みが具体的にどのようなものなのか、それによって私の行動が変化する。
……トーマ君に聞いてきてもらうわけにもいかないし、これは連日の観察の言い訳も兼ねて、私から声をかけるしかないだろうか。
そう思ってから1週間悩み、私は覚悟を決めた。
「……イッキ先輩」
「あれ、マコちゃん?どうしたの?」
「その、突然なのですが、何か悩んでいることとか、あるのでしょうか……」
「え?」
イッキ先輩はキョトンとした顔をする。
まあ、この反応は頷ける。
今まで避けたり逃げたりしてきた人間が、急に見つめてくるようになったかと思えば、突然悩みを尋ねてきたら、私でも驚く。
「えっと……、そう見える?」
「はい。ここ数日、どこか元気がないご様子でしたので、心配になってしまって、つい、その、お気づきだったかもしれませんが、不躾な視線を……。すみません」
「ああ、なんか妙に見られてるなと思ったら、そういうことだったの。ううん、僕こそ心配かけちゃってごめんね。……おかしいな、そんなに気持ちとか漏れる方じゃないんだけど」
イッキ先輩は、私に観察されていたことを、そこまで気にしていない様子だった。
それよりも、悩みが大きいように感じる。
「あの、私では頼りないかもしれませんが、よろしければお話を聞かせていただけませんか?私にできることは何もないかもしれませんが、その、誰かに話すことで気持ちの整理がつくこともありますし、ええと、」
話しながら、自信がなくなっていく。
具体的な悩みを聞き出したところで、何の力にもなれないのであれば、イッキ先輩は悩みを他人に打ち明けるリスクを負うだけになってしまう。
しかも、話して気持ちの整理をするだけなら、私よりもトーマ君のような聞き上手な人の方が適任だ。
「ふふ、ありがとう。マコちゃんは優しいね」
「えっ?!い、いえ、そのようなことはありません。誰にでもこんな風に接しているわけでは───」
言いかけて、ハッとする。
今のはまずかったかもしれない。
イッキ先輩はちょうどお付き合いのことで悩んでいるのに、こんな思わせぶりな……。
「すみません、他意はないのです……」
「そうなの?てっきり僕のこと好きなのかと思った」
「えっ、いや、ええと、その、」
「好きじゃない?」
「……好きじゃないことは、ないです……」
私の曖昧な返事にイッキ先輩はクスクスと笑って、じゃあ相談に乗ってもらおうかな、と話を切り出した。