第1章
夢小説設定
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開店してから少しずつ注文が入っていたものの、お昼時には忙しくなった。
料理の練習をしていた甲斐あって、料理でもたつくことはなかった。
一旦客足が落ち着いた頃、早番で上がったカナさんと交代で、可愛らしい女の子が事務所から出てくる。
「あなたが新しく入った人ですかぁ?」
「はい、マコです。よろしくお願い致します」
少し、品定めするような視線。
次の瞬間、彼女は花が咲くような可愛らしい笑顔になる。
「私、ミネって言います。よろしくお願いしますね、マコ先輩」
「先輩?」
「はい。だってマコ先輩、年上ですよね?」
「ええ。それはそうだけれど、ミネさんの方がここでは先輩ではないかしら?」
「いいんです。私、先輩とかそういうキャラじゃないし」
そう、と返し、それから私はどう会話するのが正解かわからず、黙ってしまった。
「じゃあ、ホール入りまーす」
ミネさんはプツリと話を終え、仕事に戻る。
清々しい人だな、と思った。
すると今度は、背後からお呼びがかかる。
「君」
「マコとお呼びください」
「では、マコ。2週間後にこのようなイベントがあるのだが、メニューの考案を手伝ってもらえないだろうか」
「……え?」
ケントさんは、そう言って1枚のチラシを渡してくる。
そこには可愛い字体で『猫耳デー』と書かれている。
「猫耳?」
「ああ。時折、このようにいつもと趣向を変えてイベントを行っている」
「なるほど……」
「それで、その時に出す限定メニューを考えているのだが、君にも案を出してほしい」
「えっ?いえ、ですが私は今日働き始めたばかりですし……」
「経験不足だ、と?」
あの手際で何を言っている、とケントさんは心底不思議そうな顔をする。
「いえ、もちろん経験不足というのもあります。家で練習してきただけで、このように実際に仕事で厨房に立つのは初めてですから」
それに、と私は付け加える。
「私はこのお店についてまだほとんど知りません。これまでのイベントのデータや常連客の好みの傾向など、そういったことを知らない素人に案を出させるより、勤務歴の長い方に頼まれた方がよろしいかと」
ふむ、とケントさんは頷く。
「それも一理あるだろう。しかし私達は今、新しいアイデアを求めている。そこで、勤め始めの君から見た、この店のメニューに合うのはどのようなものか、考えてほしい」
それから少し話し合って、案を出すだけなら、と引き受けた。
実際、私はシェフではないし、未熟だ。
だが、新しい案を求めているのなら、私が適任だというのはわかる。
ケントさんは、難しいようなら無理はしなくていい、と念を押してくれた。
プレッシャーをかけすぎないためだろう。
自宅に帰り、部屋でまずデザイン案を考える。
次の出勤日は3日後。
これまでに出た案は一通りコピーをしてもらった。
これらとは違うものを考えなくてはならない。
デザインだけでなく、単価も考えた方がいいだろう。
材料費を考えつつ、一度作ってみた方がいいかもしれない。
「シェフに声をかけておいてくれる?」
「かしこまりました」
会社を背負っているわけではない。
しかし、社長令嬢だということが広まれば、私のイメージと会社のイメージが繋がってしまう恐れがある。
私のできる限りで、完璧なものを用意しなければ。
そう意気込み、私は気合いを入れるため、髪を結った。