最終章
夢小説設定
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「……は?」
何もこのタイミングで来なくても。
今から大事な話があるのに……!!!
「マコ、昨日親から全部聞いた」
「……はあ」
「……俺が悪かった」
「は?」
「お前に対してキツイ態度ばっかりとって──」
「リョウ君、悪いんだけど、彼女はこれから僕と大事な話をしなくちゃいけないんだよね。今日のところは帰ってもらってもいいかな?」
珍しく、少し怒りを含んだ声でイッキ先輩が言う。
「いや俺も大事な話なんだよ!」
「君は「元」婚約者だよね?僕は今、彼女の彼氏なんだ。君が譲るべきじゃない?」
「……くっ。時間は取らせない。5分だけ俺に時間をくれ」
二人して私を見る。
今すぐにでもイッキ先輩と話し合いがしたいけれど、リョウにまた声をかけられるのもストレスだ。
「……すみません、5分だけ」
「……君が言うなら仕方ないね」
イッキ先輩は少し不満げに引き、リョウは顔を輝かせた。
「ありがとう!」
こいつは、こんなに素直なやつだったか?
「で、用件は?」
「あ、ああ!その、だから、婚約してるのに恋人の話したりしてお前に嫌な思いをさせて、」
「別にあなたに恋人ができたところで何とも思わない。好きだったわけじゃないのだから、嫉妬するはずもないだろう」
「……えっ」
「私はあなたに恋人ができることも、その恋人と愛し合うことも、別に嫌ではなかったと言っている。私が嫌だったのは、あなたの横柄な姿勢と人をステータスで評価する性格とイッキ先輩の話をした時に理不尽に怒鳴られたことだ」
「て、訂正させてくれ!」
「は?」
「俺は当時の恋人と愛し合ってなんかいない!」
「?あんなに自慢げに私に話していただろう」
「違う、俺はただ、その、」
言いづらそうに口ごもるリョウを見かねて、それまで黙っていたイッキ先輩が口を開く。
「彼、マコちゃんにヤキモチを妬いてほしかっただけなんじゃないの?」
「!」
「えっ」
「君さ、すっごく不器用でしょ」
「……」
図星か。
リョウは顔を赤くして俯いてしまう。
「本当はマコちゃんのことが大好きなのに、素直に言えなくて、つい恋人がいるとか言っちゃったってところかな。その恋人もいるかどうか怪しいね」
「え、そんな……。そうなのか、リョウ?デートが楽しかっただの、彼女と抱きしめ合うのは癒されるだの、全部嘘だったと?」
「〜〜〜っ!!」
「……本気かよ……」
「ああそうだよ!俺は!初めて会った時からお前に惚れてたんだ!!」
開き直ったリョウは真っ赤な顔でまくし立てるように早口で喋る。
「俺に気があるんだと思って浮かれてたらお前は全く興味なさそうな顔してるし!食事してても全然話さないし!本当に俺に好意持ってんなら嫉妬してくれるだろうと思ったら「そうですか」って流すし!!」
「そんなに言われても……」
「かと思ったら、俺の話には微塵も興味示さなかったしずっと無表情だったくせに、イッキとか言う奴の話し出した途端に見たことないような笑顔になりやがって!ついカッとなって怒鳴っちまったんだよ!!」
リョウはどんどん感情が高ぶっていっているようだ。
「……あなたは今日、謝罪に来たのでは?」
「!……ああ。だから、悪かった。本気で誰かに惚れるなんてマコが初めてだったから、どうしたらいいのかわからなかったんだ。……って、これは言い訳だな」
「……」
「婚約解消を突きつけられた時、謝れなくてすまなかった。もう婚約者だなんて名乗らない」
「そうか。……あなたのその、素直というか純粋というか、子供じみたところは少し羨ましく思っていた」
「……それ褒めてるか?」
「私なりにな。私はあなたを好きにならないし、今後あなたとどうこうなることはありえないが、新しく良い人を見つけてくれ」
「!」
「好きな相手には、素直に、優しく接しろよ」
「……ああ。俺に謝る時間をくれてありがとう。マコ、幸せになれよ」
「リョウに言われるまでもない」
「イッキ、だったよな。大事な時間をもらって悪かった」
「ああ、うん。いいよ」
「ありがとう。じゃあな」
そういうと、リョウは小走りで去っていった。
人気の少ない通りでよかった。
大通りなんかであれをやられたら注目の的になるところだった。
「イッキ先輩、私事にお付き合いくださってありがとうございました」
「ん、別に構わないよ。これで君も彼もスッキリしたんだろうし。……それじゃあ、次は僕の番だね」
「……はい」
それから私たちはイッキ先輩の家に移動した。