第6章
夢小説設定
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翌日。
お父様の元に、リョウの親から電話が来たらしい。
菓子折りを送る前にすべきことがありますよね、と返しているのを聞いた。
「マコとも話がしたいそうだが、どうする?」
「代わります。……もしもし」
『マコさん!この度は、本当に申し訳──』
「謝罪は結構です。リョウさんにはきちんとお話いただけましたか?」
『はい!もちろんです』
「今後二度と、話していなかった、などということがないようにしてください。それから、万が一会うようなことがあっても、私の大切な人に誤解を与えるような発言をしないよう言い聞かせていただければ、それで構いませんので」
『はい!それは、もう。よく言い聞かせます。この度は、本当に──』
「もうよろしいですか?この後予定がありますので、父に代わります」
相手の話を待たずに、私は父にスマホを返した。
父も、一言二言話し、電話を切った。
「お前には、嫌な思いをさせたな」
「いえ」
リョウとのことで何が嫌だったかといえば、正直婚約者としては、ない。
理不尽に怒られたこと、自身を家柄などのステータスで見られていたこと、対等であるはずなのに常に横柄な姿勢で接されたこと。それくらい。
彼に恋人ができたところで、好きでもないのに嫉妬なんかしないし。
ただ一人の人間として、彼の態度や行動が気に食わなかっただけだ。
「今日もイッキ君とお出かけか?」
「はい。行ってまいります」
「いってらっしゃい」
玄関を出ると、もう家の前でイッキ先輩が待っていて、その周りには女の子たちが群がっていた。
「イッキぃ〜。最近全然遊んでくれないじゃん」
「今日もあの子と遊ぶのぉ〜?」
「彼女とはずっと前から約束してたんだ。ごめんね」
この頃は、バイトから帰る時も女の子が執拗に絡むようになった。
付き合い始めの頃はイッキ先輩が一言いえば、渋々ではあったが、引いていたFCの子たちの引きが悪い。
ハグしてくれたら、おでこにキスしてくれたら、と何かと条件をつけて食い下がるようになった。
まるで、イッキ先輩との関わり差を埋めるかのように。
「あ、彼女出てきたみたい」
女の子の一言で、皆の視線が私に集まる。
こういう時、イッキ先輩が諌めてくれるのが1番効果があるのだろうが、難しいだろうな。
「ご機嫌麗しゅう、皆様」
ここは目一杯の社交界向けの笑顔でいこう。
「はあ?」
「お呼びじゃないんですけど」
「邪魔だし」
「そのように言われますと悲しいですわ。皆様には申し訳ないですけれど、本日は先にイッキ様とお約束しておりましたの。ね?」
「うん。だからごめんね。行こうか」
「はい」
「そんなぁ〜」
「イッキぃ〜」
幸いイッキ先輩も乗ってきてくれて、どうにかFCから離れることができた。
彼女たちから十分に距離をとったところで、ようやく一息つける。
「ごめんね、気を遣わせちゃって」
「いえ!これくらいなんてことありませんから。私がもっと上手くやり過ごせたら良かったのですけど」
イッキ先輩に乗ってもらわなくても、私の言葉だけで彼女たちが引くようにできれば、最善だ。
でも、今後イッキ先輩がお付き合いをする相手が、必ずしも私のように我を通せる人ではないかもしれない。
そういう時、イッキ先輩が彼女との時間を望むのなら、イッキ先輩自身もFCに対して強く出れるようにあったほうが良いだろう。
「あの、」
「ん?」
「差し出がましいこととは思いますが、一つ言わせていただいてもよろしいでしょうか?」
「?どうぞ」
「イッキ先輩がもし恋人との時間を望むのであれば、イッキ先輩もFCに対してもう少し強く出てもいいのではないかと思うのです」
「……それは、」
「あ、はい。もちろん、イッキ先輩が過激派について考慮されていることは理解しています。しかし、その、失礼ですが、イッキ先輩は少々彼女たちに対して甘すぎる面があるかと」
「……」
「イッキ先輩はお優しいですから難しいかもしれませんが、その、今のように、顔色を伺う、というと少し語弊があるかもしれませんが、FCの子たちのことを気にしすぎるのは、かえって彼女たちを付け上がらせるだけです。……ひどい言い方ですが」
イッキ先輩は、私の話を聞いて考え始める。
「こちらから顔色を伺うのではなく、相手に顔色を伺わせるくらいでないと、彼女たちを御しつつ恋人と愛を育む、というのはかなり難しいと思います」
「……確かに。そういう考え方もあるのか……」
これでイッキ先輩がどう変化してくださるかはわからない。
もしかしたら何も変わらないかもしれない。
でも、色んな考え方を頭に入れておけば、いざという時に策が思いつきやすいだろうし。
この話をしたことは無駄ではなかったと思いたい。
「……すみません、せっかくデートに誘っていただいたのに、こんな話をしてしまって」
「僕も参考になったし、謝るようなことじゃないよ」
「お役に立てていただければ嬉しいです。イッキ先輩には、本当に好きな方と幸せになっていただきたいですから」
「うん。……ん?え?どういうこと?」
「えっ?……あっ」
イッキ先輩の将来を考えながら話していたせいか、余計なことを言ってしまった。
イッキ先輩と付き合い始めて、かなりの月日が経った。
目標の3ヶ月超えまで後少し。
完全に気が抜けていた。
「今の「本当に好きな方と」ってどういう意味?詳しく聞かせてくれるよね?」
「いや、その、」
「……君も、僕とは別れたいと思ってるの?やっぱり、3ヶ月経ったら別れたくなっちゃった?」
「違います!」
「ふぅん……」
信じていない、疑いの目だ。
「……きちんとお話したいので、場所を移させてください」
映画に行く予定だったが、このまま映画なんて見ていられない。
「わかった。じゃあ僕の家に行こうか」
「わかりま──」
「マコ!」
「!?」
空気も読まず、私を呼ぶ声。
振り返るとそこにはリョウがいた。