第5章
夢小説設定
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目が覚めると私は病院にいて、傍にはお父様の姿があった。
「……お父様?」
私の手を握りながら仕事の電話をしていたお父様は、私の声に気づいて早々に電話を切る。
「マコ、大丈夫か?」
すぐにナースコールを押し、心配そうに顔を覗き込んでくる。
「大丈夫です。過呼吸くらい、前もなったではありませんか」
起き上がろうとすると、お父様が背中を支えてくださる。
そんなに心配しなくてもいいのに、と思いながら、笑ってお礼を言う。
「いつもは月経前や、何か大きな悩み事を長期に渡ってしていて、情緒が不安定になっている時だったから、連絡が来て驚いた。しかも、私に連絡を寄越したのがあの坊主ときた」
「坊主……?」
「マコが婚約を破棄した、リョウくんだよ」
「!ああ、そういえばそうでした。彼は今どちらに?」
「私が来るまでマコに付き添ってくれていたようだが、もう帰ってしまったらしい」
「なんということ……」
「どうかしたのか?」
「助けていただいたことには感謝しますが、彼はイッキ先輩に自分のことを、私の婚約者だと言っていたのです。意識は朦朧としていましたが、おそらく間違いありません」
「彼が?」
「はい。イッキ先輩がこの場にいらっしゃらないことも不自然です」
「ほう?」
「あの方は、病院に搬送されるような人間を置いてバイトへ行けるような方ではありませんから」
「……お前がようやくイッキくんに愛されていると自信を持て始めたのかと思えば、彼の性格の話か……」
「はい?」
「いや、なんでもない。しかし妙だな。あちらにはすでに婚約破棄の連絡はしてあるし、互いに了承済みのことだ。今更婚約者を名乗る意図がわからない」
「そうですね……」
「私の方で調べておこう。マコは一日入院することになっているから、今日は安静にしていなさい。明日迎えに来る」
「ありがとうございます、お父様」
お父様は私の頭を撫でて、病室を出て行った。
安静に、と言われたけれど、落ち着いていられなかった。
イッキ先輩と今すぐ連絡を取るべきか、だとしたら何と書くべきか。
奴についてどう記すべきか……。
ひとしきり悩んだ結果、メールに『先ほど目が覚めました。ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありません。明日には退院します。ご迷惑をおかけしました。』とだけ書いて送った。
いつまで待っても連絡は返ってこず、じっとしていられなくなって病室を出ると、ちょうど入ってこようとした人とぶつかりかけた。
「っと、すみませ…………何故あなたがここに?」
そこにいたのは、元婚約者のリョウが立っていた。
「おいおい、随分な言い草だな?お前をここまで運んでやったのに」
「頼んだ覚えはないけれど、感謝はしているわ」
「相変わらずだな、マコ」
「あなたも。婚約破棄されておきながら、のこのこと顔を出せるその面の皮の厚さは健在のようね」
「っこの女!」
「あら、病人に手をあげるの?これでは私をここへ連れてきた時と真逆の行動ね」
「くそっ……」
「大方私に恩を売って婚約を結び直そうとでも考えた?相変わらず浅はかな考えね」
「ッお前、調子に乗るのもいい加減にしろよ!」
腕を掴まれ、爪が食い込む。
「っ!はっ、調子に乗っているのはあなたの方よ」
「おい、何をしている」
「サカキ!」
私とリョウの間にサカキが割って入る。
リョウはあからさまに顔を顰め、サカキを睨みつけた。
「そこを退け」
「できかねます」
「俺が誰かわかってるのか?」
「存じております。お嬢様に婚約破棄されたリョウ様ですね」
「!お前ら……揃いも揃って……」
「当家に逆らって困るのはそちらでは?」
「は?」
「サカキ」
「は。出すぎた真似を」
「おい、どういう───」
「サカキ、お客人のお帰りよ。戻ってこられても困るから、病院の外までお送りして」
「承知致しました」
「おい!まだ話は──くそっ、話せサカキ!」
私はそのまま再び病室に戻り、ドアに鍵をかける。
警察に守られているわけでもない私は、万が一今FCに狙われるとまずい。
携帯を手に取り、メールの問い合わせをするも、イッキ先輩からの返事はない。
これはもう次会えた時に話すしかないかと思い、眠りについた。